田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、旅行、映画」

劇団四季『はじまりの樹の神話』(岡田淳 原作)より。人生は生きるに値する。教育を考える上で、感染動機って、大事。

  ――スキッパー。人間は昔、けものと同じように生きてたんだ。それがあるとき後足で立ちあがり、歩けるようになった。すると前足は手になったんだね。なにかをつかめるようになったのさ、人間はその手でなにを最初につかんだと思う? 食べものかい? 火かい? 棒や石かい? ちがうね。わたしにはわかる。人間が自分の手で最初ににぎったのは、きっと、別のだれかの手だったんだよ。
(岡田淳『はじまりの樹の神話』理論社、2017)

 

 こんにちは。昨夜、新型コロナワクチンの2回目の接種をしてきました。今のところ副反応はありませんが、パートナーと長女と次女から「パパ、大丈夫?」的な言葉がひとつもないのでちょっとした倦怠感には襲われています。ハシバミのふるえる手をスキッパーがにぎりしめたように、副反応に脅えるパパに救いの手を差し伸べることはできないのかい?

 

 ファミリー、無反応。

 

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プログラム「はじまりの樹の神話」より

 

 先日、劇団四季のファミリーミュージカル『はじまりの樹の神話  ~こそあどの森の物語~』を観に行きました。原作は児童文学作家の岡田淳さん。チケットを持っていた義兄が仕事で行けなくなったそうで、単身、急遽の上京です。不織布のマスクを3枚重ねて、いざ、自由劇場のある浜松町へ。

 

 で、早速迷いました。

 

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ウォーターズ竹芝

 

 さすが東京です。迷い込んだらこの絶景。しかも人流抑制の効果か、誰もいなくて独り占め。後で調べたら「ウォーターズ竹芝」というところでした。海とともにあるまち。岡田さんがこのまちに住んでいたら、こそあどの海の物語をつくろうって、そう思ったかもしれません。  

 

 この海でもなければ
 その海でもない
 あの海でもなければ
 どの海でもない
  こそあどの海 こそあどの海

 もと教員、それも図工の先生だった岡田さんが描いたのは、海ではなく森のファンタジーです。岡田さん曰く《ふしぎな森の物語をつくろうと思いました。森にすんでいるひとたちと、それぞれのふうがわりな家をスケッチブックに描きはじめたのが最初です。それから25年のあいだに、12巻の物語ができました》云々。スケッチブックから生まれた物語のひとつを舞台化したのが劇団四季のファミリーミュージカル『はじまりの樹の神話』というわけです。ちなみに初回の公演のときに岡田さんが観劇に来たそうで、えらく感動していたとのこと。大絶賛だったとのこと。関係者にそう聞きました。私も絶賛です。隣に座っていた女性なんて、

 

 号泣。

 

 クラスの子どもたちを連れていきたいな。日本全国の子どもたちに演劇の感動を届ける劇団四季のプロジェクト「こころの劇場」は、昨年に続いて今年も実施見合わせが決まっています。また、劇団四季の俳優さんが直に教室に来てくれる「美しい日本語の話し方教室」も、当然NG。2学期以降、苦肉の策として『はじまりの樹の神話』を「配信」というかたちで実施するそうですが、やはり対面での教育効果にはかなわないでしょう。オリンピックやパラリンピック以上にそう思います。

 俳優さんたちが全身で表現する「人生は素晴らしい」というメッセージと、俳優さんたちがフィナーレのときに魅せる「人生は生きるに値する」という笑顔を、子どもたちに生で感じとってもらいたかった。人生を全力で楽しんでいる大人を直に目にすること以上に、子どもたちを勇気づける「教育」はありませんから。感染動機って、大事。ファミリーミュージカル『はじまりの樹の神話』が「人とのつながりの大切さ」をテーマにしているのも、そういった意味を込めてのことでしょう。

 

www.countryteacher.tokyo

 

 子どもの成長をうながすのは、競争動機よりも理解動機よりも、感染動機。劇団四季の俳優さんたちみたいに生きたい。サウイフモノニ、

 

 ワタシハナリタイ。

 

 

 こそあどの森で暮らす本好きの少年スキッパーのもとに、ある夜、人間と同じように話したり聞いたりすることのできるホタルギツネがやって来ます。光るしっぽをもつその不思議なキツネ曰く、

 

「死にそうな子を助けてほしい」

 

 スキッパーとホタルギツネが向かった先には見たこともない巨大な樹が立っていて、そこにひとりの少女が縛りつけられています。彼女の名前はハシバミ。なんと大昔からやって来たといいます。

 

「私は村に戻らなければならない」

 

 こそあどの森の住人として平和に暮らしていたハシバミでしたが、あるとき、ふるさとの村に弟や妹を残して私だけが幸せになるわけにはいかないとスキッパーに訴えます。さて、どうなるのか。

 

 ハシバミって、実は神話に登場する女の子なんだよね。

 

 子どもたちに配信というかたちで「はじまりの樹の神話」を見せるのであれば、最初にそういった話をした方がいいと思いました。リアルの求心力に近づけるための手立てのひとつです。物語の力を借りて、子どもたちを「配信」に引き込む。もちろん、書籍の『はじまりの樹の神話』を読んでから観るというのもお勧めです。小学生のときに『2分間の冒険』にはまって以来、岡田さんの作品を子どもたちに勧めなかった年はありません。

 

 

 ホタルギツネではなくワクチンの副反応が来たようです。発熱。けっこう、つらいかも。2回目の冒険。とりあえず横になります。

 

 死にそうな私を助けてほしい。

 

 おやすみなさい。