田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

青山美智子、朱野帰子、一穗ミチ、奥田亜希子、西條奈加 著『ほろよい読書 おかわり』より。読書は日常。

「月並みだけど、生牡蠣食べるならこれだよね」と行人が選んだのはシャブリだった。レモンのように酸味が強く、生牡蠣のミネラル感と同調してくれる。一杯目はいつもこれだ。
「ワインもいいけど……」と莉愛は迷っていたが、「やっぱ日本酒かな」と純米吟醸を選んでいた。アルコール度数高め、うすにごりの生原酒だ。
 生牡蠣よりも先に酒が運ばれてきた。まずは、お疲れ様でした、と軽く乾杯だけすする。
「さあ、牡蠣をたくさん食べるぞ」
 莉愛が純米酒を口に含んだ。
「負ける気がしない」
 行人もシャブリを飲んだ。

(青山美智子、朱野帰子、一穗ミチ、奥田亜希子、西條奈加『ほろよい読書  おかわり』双葉文庫、2023)

 

 こんにちは。どうでしょうか。月並みだけど、牡蠣、食べたくなりますよね。シャブリ、飲みたくなりますよね。食べたくなったし、飲みたくなったので、定時に学校を出て、オイスター・バーへ。 

 

 

 シャブリはグラスではなくボトルでの注文を求められたので諦めたものの、シャルドネで一杯目を始めてから約2時間、相当数の牡蠣を平らげました。城戸行人の言葉である《俺、今日は二十ピース食べると思う》や、上原莉愛の返答である《にじゅっ?》から想像するに、私の圧勝でしょう。

 

 ほろよい帰路。

 

 酔り道しながら写真入りのツイートをしたところ、朱野帰子さんがリツイートしてくれて、大満足。

 

 定時で帰って、よかった。

 

www.countryteacher.tokyo

 

 ちなみに行人は《俺は生牡蠣に当たって救急車で運ばれたことがある》&《二回、入院した。そこから戻ってくるやつだけが真の牡蠣好きなんだ》と莉愛に話していますが、私は当たったことがありません。初任校で鍛えられたからです。牡蠣剥き体験があったんですよね、総合的な学習の時間に。

 

 さすがは漁師町。

 

牡蠣剥き体験(2005.1.13)

剥き放題、食べ放題

至れり尽くせり

 

 どうでしょうか。月並みだけど、教員、なりたくなりますよね。なりたくなったら、ぜひ、お近くの、あるいは住んでみたい市区町村の教育委員会に連絡を。私の勤務校を含め、今はどこもかしこも欠員だらけです。ほろよい面接でも採用されるかもしれません。それくらい現場は危機に瀕しています。

 

 おわかり?

 

 

 青山美智子さん、朱野帰子さん、一穗ミチさん、奥田亜希子さん、そして西條奈加さんの『ほろよい読書  おかわり』を読みました。5人の女性作家たちが描く「お酒」と「人」の物語集です。シリーズの第一弾に当たる『ほろよい読書』よりも先に『ほろよい読書  おかわり』を読んだのは、朱野帰子さんの名前が目にとまったから。テレビドラマにもなった『わたし、定時で帰ります』の朱野さんです。あの朱野さんが私の大好きな牡蠣のことを書いている。読むしかありません。

 

 目次は以下。

 

 きのこルクテル 青山美智子
 オイスター・ウォーズ 朱野帰子
 ホンサイホンベー 一穗ミチ
 きみはアガベ 奥田亜希子
 タイムスリップ 西條奈加

 

 どの作品を読んでも酔えますが、私の場合は朱野さんの『オイスター・ウォーズ』と青山さんの『きのこルクテル』が特に酔えました。泥酔です。

 

 真牡蠣を一度も食えないまま今期が終わりそう! 一緒に食いにいく人いない?

 

 スタートアップ企業の代表を務める行人のツイートです。フォロワー数は約6万。このツイートに反応した相互フォロワーの莉愛がDMで返事をしたことがきっかけで、後日、オイスター・ウォーズの火ぶたが切って落とされます。ポイントは「相互」フォローというところ。戦争中の展開は、まるで映画『スティング』(ジョージ・ロイ・ヒル監督作品、1973)のよう。二人とも、大がかりな芝居を打っているんですよね。ちょっとネタバレになりますが、だまし合いからのだまし愛です。

 

 この味がいいね。

 

 と君が言ったから3月31日は真牡蠣記念日。俵万智さん風にいえば、そんな感じでしょうか。先日、その俵さんが「言の葉を ついと咥えて 飛んでゆく 小さき青き鳥を忘れず」とツイートしたことが話題になりました。『オイスター・ウォーズ』に出てくる「ツイート」という言葉や「Twitter」という言葉も、「X」の登場によって、10年後には死語になっているかもしれません。寂しくなりますね。酔わずにいられません。お酒が飲めない人は、どうやってこの寂しさを紛らわせているのでしょうか。

 

 こんなとき、お酒が飲めればなと思うことがこれまで何度もあった。
 どうにもできない悔しさや苛立ちをお酒で晴らすことができたら、どんなにいいだろう。

 

 青山さんの『きのこルクテル』に登場する主人公、永瀬旬のぼやきです。下戸なんですよね。お酒の飲めないライターの永瀬が、都内にあるバーの取材にでかけたところ、オイスター・ウォーズではなくボーイ・ミーツ・ガールが始まった、というのがこの物語のプロットです。本好きの私には、ボーイ・ミーツ・ガールとは関係なく、バーテンダーの東郷清徳の次の台詞が刺さりました。

 

「やめろ、俺、そう言われるの嫌い。趣味じゃねえよ、読書は日常だ」

 

 1学期が終わり、日常が戻ってきました。

 

 引き続き、ほろよい読書を楽しみます。