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今木智隆 著『算数日本一の子ども30人を生み出した究極の勉強法』より。根拠は、小学生30億件の学習データ!

 宿題がなくても、子どもたちは毎日学校に通い、5時間、場合によっては6時間も授業漬けなのです。学校が終わってようやく帰宅するころには、脳も肉体も消耗しきっています。そんなフラフラの状態の子どもに宿題を課し、家でもさらに何時間も勉強させようとするなんて、本当にひどい話なのです。子どもたちはさらに疲弊し、勉強がいっそう嫌になってしまいます。
(今木智隆『算数日本一の子ども30人を生み出した究極の勉強法』文響社、2023)

 

 おはようございます。ツイッター(Twitter)にも投稿しましたが、あっ、間違いました、エックス(X)にも投稿しましたが、昨日、ちょっと遠出&奮発して、2年前からずっと気になっていたことを確かめてきました。

 

 鰻屋のことです。

 

 

 答えは風に吹かれているようで、結局、沢木耕太郎さんがどちらの鰻屋に行ったのかは、店主を含め、誰も知らないようでした。沢木さんは《答えを教えない勇気》をもっていたのでしょう。もしも沢木さんが答えを教えてしまっていたとしたら、私がわざわざ小諸市まで行って「鰻を食べる」なんてことはなかったはずですから。読者の行動変容を促すには《答えを教えない勇気》が必要というわけです。答えを教えてもらえないから自分で考え、行動する。教えられたら考えない。学校でいえば、わかりやすい授業の落とし穴と似ているでしょうか。わかりやすければ自分で考えない。わかりにくいから自分で考え、行動する。つまりそういうことです。ちなみに模試や中学受験で全国トップレベルの成績をあげている子どものパパやママも《答えを教えない勇気》をもっているそうです。根拠は、

 

 小学生30億件の学習データ!

 

 

 今木智隆さんの『算数日本一の子ども30人を生み出した究極の勉強法』を読みました。沢木耕太郎さんの『深夜特急』が多くの読者を異国の地へと駆り立てたように、この『算数日本一の子ども30人を生み出した究極の勉強法』も、教員や家族を通じて、多くの子どもを究極の勉強法へと駆り立てるかもしれません。著者の今木さんは、小学生向けのタブレット型通信教育サービスなどを提供する「RISU Japan(リスジャパン) 株式会社」の代表取締役です。曰く《私たちRISUは、タブレット教材による無学年制のオンライン学習というこれまでになかった教育事業を通じて、日本やアメリカをはじめとする全世界の小学生から30億件を超える膨大な情報を収集してきました》云々。

 

 30億件!

 

 桁外れですよね。先月刊行された村上靖彦さんの『客観性の落とし穴』が話題になっているとはいえ、やはりデータを、しかもビッグデータを、侮ったり軽んじたりするわけにはいきません。猪瀬直樹さんの『空気と戦争』に書かれているように、数字を誤魔化すと国が滅びますから。

 

www.countryteacher.tokyo

 

 目次は以下。

 

 第1章 勉強が得意になる子はどっち?
 第2章 算数が得意になる子はどっち?
 第3章 トップ30人の家庭が実践する教育法

 どっち(?)という表現からわかるように、第1章と第2章は、どちらもクイズ形式になっています。だから子どもでも読めます。夜遅くまで勉強を頑張る子どもを褒める or しかる(?)という問いから始まる第1章の問題数は8。国語の成績がいい子は算数も優秀って本当(?)という問いが印象的な第2章の問題数は14です。それぞれの問いに対して、今木さんはRISUのビッグデータをもとに、次のように答えます。

 

 しかし、夜遅くの学習は、お子さんの成績をアップさせないどころか、その後の人生にも長期にわたって負の影響を与えかねない危険なものです。習慣にしているお子さんがいたら、できるだけ早いうちにしかってでもやめさせた方がいいでしょう。

 

 しかってでも、というところがポイントですね。我が子が夜遅くまで勉強していたら、がんばってるなぁと思って夜食でも出してしまいそうですから。ちなみに冒頭の引用も第1章からとったもので、「学校教育で最も誤用されているツール」と揶揄されることの多い「宿題」について、目から鱗の情報が書かれています。教員のみなさんには、ぜひ読んでほしい。ちなみにここ数年、私(主に4~6年生の担任)は全員一律の宿題らしい宿題を出していません。そのことで保護者に何か言われたら、この本を紹介しようと思います。

 

「国語ができる子どもは、算数などそのほかの教科の成績もいい。国語はすべての教科の基礎である。だから国語だけをひたすら勉強すれば全教科伸びていく」
 世の中にはそんなことを言う人がいますが、この主張には何の根拠もありません。学習ビッグデータによれば、ほぼ100%誤りです。

 

 第2章より。まぁ、この問題に関しては、実感としても「ほぼ100%誤り」なのですが、この《学習ビッグデータによれば》という言葉の説得力といったらそれはもう、無敵な感じです。続く第3章の「トップ30人の家庭が実践する教育法」に書かれている《全国トップレベルの子どもの算数の平均学習時間は1日たった15分》や《答えを教えない勇気》なども、背景にこのビッグデータがあることを考えると、クリティカルシンキングの対象にはなり得ず、それこそ教員が学習指導要領を鵜呑みにするように「ほぼ100%なるほど」と納得させられてしまいます。

 

 納得させられてしまう。

 

 そう書いたのは、もしかしたらそれが村上靖彦さんいうところの「落とし穴」なのかもしれないな、と思ったからです。

 

 客観性の落とし穴。

 

 夏の課題図書です。