田舎教師ときどき都会教師

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岩崎夏海 著『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』より。下手な研修よりも『もしドラ』を。

「そもそも、ぼくはなぜ『もしドラ』を書いたのだろう?」
 その理由は、もちろん一つではなかった。あまりにも多すぎて、それを一冊の本(『「もしドラ」はなぜ売れたのか?』(東洋経済新報社)にまとめたくらいだ。
 ただ、一番の理由は、「ドラッカーの『面白さ』を小説に落とし込み、それを多くの人に伝えたかった」ということだ。
(岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』新潮文庫、2015)

 

 こんにちは。自宅療養8日目です。昨日、恐れていたことが判明してしまいました。家庭内感染です。中学生の次女に陽性反応が出てしまったのです。

 

 

 かわいそうに。プリッツに喜んでいる場合ではありませんでした。長女とパートナーも「明日は我が身」と震えています。もし我が家の全員が新型コロナのオミクロン株に感染したら。略して「もしコロ」。考えたくもないし、読みたくもありません。

 

 

 岩崎夏海さんの『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』を再読しました。略して『もしドラ』。かれこれ3回は読んでいるような気がします。単行本と文庫本の累計で300万部くらい売れているのでしょうか。売れる要素がこれだけわかりやすく詰まっている作品って、なかなかないと思うんですよね。

 ドラッカーの『マネジメント』というわかりやすい「権威」を柱に、弱小の野球部が「甲子園出場」というわかりやすい夢に向かって「あだち充」路線を突っ走っていく。それが『もしドラ』のプロットです。主人公の女子マネジャーの名前は「みなみ」。平仮名とはいえ、これはもう確信犯でしょう。

 

 古典『マネジメント』+ 漫画『タッチ』= 小説『もしドラ』

 

 さらには友情、恋愛、そして生死と、小学校の道徳の授業でいうところの「価値」が至るところに散りばめられていて、うますぎるなぁ。しかも小学校の担任の学級マネジメントにも役立つというのだから、

 

 私が書きたかった。

 

 そう思った人も多かったのではないでしょうか。例えば『もしドラ』と同じ桁数でバカ売れしている水野敬也さんの『夢をかなえるゾウ』シリーズも、岩崎さんの方法論をヒントにしているとしか思えません。甲子園に出場すべく、女子マネージャーのみなみがドラッカーの『マネジメント』を権威としてたびたび引用するように、夢をかたちにすべく、ガネーシャ(夢をかなえるゾウのことです)も偉人の言葉を権威としてたびたび引用します。ガネーシャ曰く《「ピーター・ドラッカーくんがこんなこと言うてたな。『強みの上に築け』て。自分の得意なことを徹底的に伸ばしていくんが成功につながるっちゅう意味や。知っとるやろ?」》云々。シリーズの最初(『夢をかなえるゾウ1』)に出てくるこの台詞は、おそらく水野さんから岩崎さんへのオマージュでしょう。

 

 強みの上に築け。

 

www.countryteacher.tokyo

 

 ちなみに「強みの上に築け」というドラッカーの教えは、岩崎さんの『もしドラ』では次のように使われています。

 

『マネジメント』には、こうあった。

 自ら作業者集団の職務の設計に責任を持たせることが成功するのは、彼らが唯一の専門家である分野において、彼らの知識と経験が生かされるからである。(七五頁)

 この言葉に従って、みなみは、部員一人ひとりの知識と経験を、それぞれの専門分野で生かそうとしたのである。

 

 第五章「みなみは人の強みを生かそうとした」より。この部分を読むだけで、学校の管理職であれば「学校マネジメント」に活かせそうだな、担任であれば「学級マネジメント」に活かせそうだなって、ピンとくるのではないでしょうか。そうなんです。下手な研修を受けるよりも『もしドラ』を読んで2学期からの学校 or 学級経営に落とし込んだ方がよほどいい。教員がやっていることは、みなみがやっていることと同じですから。

 

 子どもたちの強みを生かす。

 

 プロローグに続く目次は以下。

 

 第一章 みなみは『マネジメント』と出会った
 第二章 みなみは野球部のマネジメントに取り組んだ
 第三章 みなみはマーケティングに取り組んだ
 第四章 みなみは専門家の通訳になろうとした
 第五章 みなみは人の強みを生かそうとした
 第六章 みなみはイノベーションに取り組んだ
 第七章 みなみは人事の問題に取り組んだ
 第八章 みなみは真摯さとは何かを考えた

 

 そしてエピローグへと続きます。この目次の流れを換骨奪胎して、第一章「新任教員は『学校と社会』と出会った」から始まる小説があったらどうでしょうか。もちろんジョン・デューイの『学校と社会』です。誰かに書いてほしい。いや、私が書こうかな。

 

 もしデュー。

 

 いや、微妙。