田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

谷川俊太郎、斎藤次郎、佐藤学 著『こんな教科書あり?』より。教材をめぐる冒険、雪だるまをめぐる冒険、羊をめぐる冒険。

 言葉の教科書(注:日本の国語の教科書)のはずなのに自然保護を教えている。やたら動物とか自然が出てくるでしょ。言葉というのは、基本的に人間関係のものなのに、なんで動物にしなきゃいけないの、なんで自然観察しなきゃいけないのっていうことを感じました。
(谷川俊太郎、斎藤次郎、佐藤学『こんな教科書あり?』岩波書店、1997)

 

 こんばんは。詩人が教壇に立ったら、句読点でも整理するように、優雅に授業を展開するのでしょうか。昨日は3、4時間目の国語の授業で「つみあげうた」をつくりました。上記の引用で《なんで自然観察しなきゃいけないの》と語っている、詩人の谷川俊太郎さんが勧めている教材です。

 

 1行目。
 1行目2行目。
 1行目2行目3行目。

 

「つみあげうた」の特徴は、そんなふうに1行ずつ増やして読んでいくところにあります。前の行と次の行がつながっているのも特徴の一つ。例えば1行目を「あいちゃんのたまご」、2行目を「を学校の校庭で見つけたさなちゃん」としたら、読むときは一人目が「あいちゃんのたまご」、二人目が「あいちゃんのたまごを学校の校庭で見つけたさなちゃん」となります。

 5年生の子どもたちがつくった「つみあげうた」。例えばこんな感じです。

 

「雪だるまをめぐる冒険」 二班  作

 ぼくは沖縄の雪だるま
 が春の陽射しを浴びて溶けた水
 を午前七時に飲もうとしていたハンサムなマイケル
 が三年前のクリスマスまで履いていた靴
 をつくっている地元のメーカー
 のそろそろ年頃の社員
 が食べている雪見だいふく
 の味がするカレーライス
 の中の人参を栽培しているハンサムなロドリゲス
 がつくった可愛い雪だるまです
 

 

「夢」 三班  作

 梅干を食べているスッパマン
 の真似をしている英次郎くん
 を笑っているさきちゃん
 につられて笑いそうな達也くん
 の姿を見て笑っちゃったむっちゃん
 という夢を見ていた三班のみんな

 

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こちらは言葉ではなく物をつみあげるスカイツリーゲーム

 

 言葉遊びを通して、言語感覚を磨こう。
 言葉遊びを通して、人間関係を築こう。

 

 スカイツリーゲームなど、たくさんのグループワークを通して人間関係を築いてきた同じ班の仲間との創作活動。そして早口言葉(各グループ1分間)での発表。詩人の魔法にかかったかのように、子どもたちは「つみあげうた」の世界に夢中になっていました。

 

 というのは、数年前の「昨日」の話。

 

 本当の昨日はといえば、6時間授業でいつも通りハードな一日。でも、子どもたちの素晴らしい気付きや振る舞いがたくさんあったし、「授業を見せてください」っていう若手の要望にそこそこ応えられる授業を見せることができたし、いつも通り定時に出たし、出る直前にはその若手からシュークリームと缶珈琲と「勉強になりました」っていう言葉をもらうことができたし、何ていうか、小確幸&心地よい疲れを帰路に感じることのできたよい一日でした。 

 

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定時退勤間際に、勉強熱心な若手の先生から嬉しい心遣い

 

 やっぱり授業だ。

 

 昨日は「つみあげうた」のような、かつて教材として使用したことのある「持ちネタ」的な授業を算数と道徳で行いました。若手の先生に見せたのもそのうちのひとつ。

 

 まず算数。

 

 算数は、教育学者の佐藤学さんいうところの「背伸びとジャンプ」を要する問題にチャレンジしました。前半は苦戦、そして後半になると「できた!」「あっ、わかった!」「そういうことか!」という声が聞こえ、授業が終わると「ちょっと家で続きをやってきてもいいですか?」という嬉しい声を耳にするという、序破急の変化のついた展開。見ていた若手の先生も「教材が~」と背伸びとジャンプを要する教材(問題)のよさを感じとっていました。佐藤学さんのことは「誰ですか?」と言っていましたが😢

 

 次に道徳。

 

 道徳は、ピューリッツァー賞を撮った有名な写真を教材として「わたしだったらAする」「わたしだったらBする」というディベート的な話合いをしました。最初はAという意見が多数。でも話合いを続けていくうちに、Bが多くなるという展開。道徳なのでBが答えというわけではないものの、昨日のブログに書いた「表出と表現」でいうところの「表現」、すなわち相手に自分の考えと根拠を伝え、その相手を自分の意見と同じ方向に動機づけるというコミュニケーションが多く見られた45分でした。 

 

  

 優れた教材と、その優れた教材を授業の中でうまく活用できたぞ(!)という経験があれば、それこそ詩人が句読点でも整理するように、優雅に授業を展開することができます。子どもたちは、担任の優雅さ(教材+経験)に包まれながら、集中して学ぶこと間違いなし。

 

 やっぱり授業だ。

 

 過去に何度そう思ったかわかりません。勝手な推測ですが、小説家の村上春樹さんが『羊をめぐる冒険』を書いて「やっぱりこの路線だ!」と思ったのと同じです。教師の醍醐味は、やっぱり授業。子どもたちの成長を促すのも、やっぱり授業です。結局、教材。やっぱり、授業。だからこそ、授業を支える「教材研究」の時間を勤務時間内に確保したい。1行ずつ増やしていくつみあげうたのように、教材を1つずつ増やしてつみあげていきたい。小確幸&心地よい疲れを感じながらの「昨日」の帰路、そのようなことを「また」考えました。

 

 数年後の「昨日」も、同じことを考えていそうだなぁ。

 

 そんな未来あり?

 

 

羊をめぐる冒険(上) (講談社文庫)

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羊をめぐる冒険(下) (講談社文庫)

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