田舎教師ときどき都会教師

テーマは「小学校教員の働き方と生き方」&「本、旅、人」

スガンさんのヤギに学ぶ。子供も大人も、表出から表現へ、内から外へ。

「表出」とは、言いたいことを言い、叫びたいことを叫んで、スッキリすることです。~中略~。これに対して「表現」とは、相手に情報をインプットし、相手を特定方向に動機づけるためになされるコミュニケーションです。だから「表現」の成功は、相手がしかるべき理解に到達し、かつ動機づけを獲得したかどうかによって測られるわけです。
宮台真司絶望から出発しよう』株式会社ウェイツ、2003)

 

 一昨日の日曜日にピアノの調律をしてもらいました。半年前に購入したばかりのピアノです。調律師さんによると、それはそれはもうしっちゃかめっちゃかになっていたようで、半音ずれている鍵盤もあったとのこと。私は全く気がついていませんでしたが、普段よく弾いている長女と次女は「何か変」としばしば言っていたので、我が子ながらよい耳をしているなぁと感心しました。

 

 パパは、教室の「何か変」にはよく目がいくんだけどなぁ。その後に調律できるかどうかは別にして。

 

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ピアノの調律&クラスの調律、どちらも大事🎵

 

 聞こえる人には聞こえる。
 見える人には見える。

 

 聞いてもらえるように、見てもらえるように、子どもたちの教室での発言を表出から表現に変えていかなければならない。

 初任校の次に務めた小学校の教頭があるときそんな話をしていました。卒業式のシーズンになると自分でピアノを調律し始める、もと作曲家。変わった経歴をもつ教頭だったので、芸術系の人はうまいこというな~、と思ったことを覚えています。

 

 表出はNG。
 表現はOK。

 

 小学校に入学したばかりの1年生が、教室で「はいはいはい!」と手を挙げて発言し、誰も聞いていなかったとしても、誰も見ていなかったとしても、本人はスッキリ、というのが表出です。

 大人でいえば、萩生田文部科学大臣の「身の丈」発言や「暇がない」答弁も、表現というよりはむしろ表出に分類されるでしょうか。国民を特定方向に動機づけるためになされたコミュニケーションとは思えないからです。むしろ本人の意図とは異なる動機づけを与えてしまっている。国民のみなさん、絶望から出発しよう、みたいな。

 

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絶望感漂う、カンボジアシェムリアップにあるワニ園(01)

 

 絶望ではなく、表現することの楽しさを、朗読を通して感じよう。以前、といってもかなり前ですが、朗読による素晴らしい「表現」をクラスの子どもたち(6年生)と一緒に体験したことがあります。

「寝っ転がってもいいですよ。自分の聞きたい姿勢で聞いてください」と前置きした後に、これぞ表現という、素晴らしい朗読を披露してくれたのは、朗読劇グループD.I.L(Drama In Life)の小杉晃一さんです(いま調べたところ、活動を継続中🎵)。

 読んでもらったのは小杉晃一さんのお気に入りの『スガンさんのヤギ』です。BGMとともに始まった『スガンさんのヤギ』。Drama In Life というグループ名に相応しい Dramatic な朗読に、子どもたちは寝っ転がってなんかいられず、食い入るようにヤギの運命を見届けて(聞き届けて)いました。

 

 ドーテの『スガンさんのヤギ』
 テーマは「自由とは、何か?」

 

 飼い主のスガンさんのもとを離れ、外の世界に飛び出したヤギ。自由と、そしてその代償と。自由は手にしたものの、数々の困難に遭い、最後には死んでしまうヤギ。でもきっと、ヤギは幸せだった。死んでしまうときも、絶望なんて感じていなかった。だって挑戦したのだから。外の世界を感じることができたのだから。

 

 たしかそんな話でした。

 

 つまり、感情をフックにして「(ヤギのように、そして俺のように)自由に生きろ!」というメッセージを伝える表現行為です。小杉晃一さん、途中から泣きながら読むんですよね。もう完全に物語に入り込んでいて、ヤギそのものといった様子。そんな小杉晃一さんの姿に感染して、子どもたちもすっかり「ヤギ」の気分に。表現することの楽しさとともに、子どもたちも私も「ヒツジ」から「ヤギ」へと変わるためのよい動機づけをもらったなぁと思いました。ヒツジは群れをなし、ヤギはそのヒツジたちを率いるリーダーになります。

 

 スガンさんのヤギに留まるのではなく、
 〇〇小学校のヤギに留まるのではなく、

 

 もっと、自由に。

 

 

絶望から出発しよう (That’s Japan)

絶望から出発しよう (That’s Japan)

 
スガンさんのヤギ

スガンさんのヤギ