田舎教師ときどき都会教師

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中島聡 著『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』より。ロケットスタート時間術で、2020年も思い切り楽しみましょう。

 しかし一歩立ち止まって、本質的な意味を考えることは重要です。アメリカではそのように、形式より意味を考えて判断することがとても多いのです。
 たとえば車を運転してスピード違反で捕まったときに「息子が熱を出していて」という言い訳が通用することは結構あります。法律は法律ですから守るのは基本ですが、なぜ法律ができたのかというところまでさかのぼったら、そういう判断を下すことになるのです。警官も意味を考えているのです。
(中島聡『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』文響社、2016)

 

 明けましておめでとうございます。昨夜、家族で紅白を観た後に、年をまたぎつつ、自宅から歩いて30分くらいのところにある神社に行ってきました。真夜中に連れだって出かけるのはわくわくしていいものです。パパとママと長女と次女の4人パーティー。ちょっと冒険の匂いがしました。小学生の頃、ドラゴンクエスト3を買うために友人たちと夜の町へと繰り出したときと同じ匂いです。ドラクエ3、はまったなぁ。ちなみにドラクエ3に出てくる「遊び人」は、レベル20になると「賢者」になれます。意外とよく考えられた設定だったんだなぁと、いま振り返ると感心してしまいます。できるヤツは遊んでいる。不惑を迎えたいまも、わたしが依然として賢者になれないのは、少年時代の、或いは青年時代の遊びが足りなかったせいなのかもしれません。

 

 宿題なんてとっとと終わらせて、遊ぼうよ。

 

 今回はそんな話です。

  

 

 

 一年の計は元旦にあり。というわけで、昨日、中島聡さんの時間術に関する本を読み返しました。中島さんは89年から00年まで米マイクロソフト社でプログラマーとして活躍していた人です。大学時代に世界初のパソコン用 CAD ソフト「CANDY」を開発し、学生ながらにして1億円のロイヤリティーを稼いだ人としても知られています。そんな中島さんが、生涯をかけて練り上げてきたという、ロケットスタート時間術について公開した本が『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』です。

 

 ロケットスタート時間術。

 

 ネーミングからしてわかることだと思いますが、ロケットスタート時間術というのは、要するに、時間とうまく付き合うためには、宿題でも仕事でも、四の五の言わずに「とっととやれ」というシンプルな方法論を説いたものです。本田直之さんの『レバレッジ時間術』など、星の数ほどある他の時間術の書籍と同様に、細かなテクニックも載っていますが、あなたの仕事が終わらないのは、結局のところとっととやらないからだ、と大きな枠組みとして結論づけているところに他の類書にはない特徴があります。スピードは最強の武器である。上司であるビル・ゲイツの仕事(意思決定)も光速だったとのこと。

 

大げさではなく、私の人生が変わった瞬間でした。

 

 中島さんは小学校3年生の夏休みのときに、宿題が終わっていなかったことが原因で、楽しみにしていた海に行くことができず、子どもながらに「果てしない後悔を覚えた」という経験をします。いい親だなぁ。しかしその後悔をバネに、翌年、4年生の夏休みには、人生で初めて課題を「とっとと」終わらせることができたようで、そこでその後の人生を変えるヒントをつかむことに成功します。そのヒントというのがロケットスタート時間術、すなわち宿題や仕事を「とっとと」前倒しでやってしまう習慣です。とっととやって、思い切り遊ぶ。

 

 仕事なんてとっとと終わらせて、遊ぼうよ。

 

 問題は、そんなことはわかっているのに、なぜ「とっとと」前倒しで仕事をすることが教育現場ではこんなにも難しいのかということです。冒頭に引用した、意味と形式の話が参考になります。学校には、本質的には意味のない、形式的な仕事が多くあり過ぎます。形式的な仕事を減らさない限り、意味のある本質的な仕事に集中することはできないし、仕事を前倒しするロケットスタート時間術もうまく活用できません。

 例えば3学期。指導要録をつくるに当たって、多くの学校で、通知表の「ですます調」を「である調」に改め、それを指導要録に書き写すという、子どもの成長には1ミリも寄与しない不毛な仕事が行われています。少なくとも、わたしが経験した3つの自治体(県)では、勤務した小学校の全てで行われていました。なぜ「ですます調」のままではいけないのでしょうか。なぜ「誰も読まない」指導要録のために文末表現まで修正しなければいけないのでしょうか。

 

 やめればいい。

 

 宿題や定期テストを廃止したことで有名になった「目的思考」の工藤勇一さん(世田谷区立麹町中学校長)や、グレッグ・マキューンが提唱している、いま流行の「エッセンシャル思考」の持ち主は、中島さんいうところの《一歩立ち止まって、本質的な意味を考えること》の重要性がよくわかっています。何のために宿題はあるのか。何のために指導要録をつくっているのか。「何のために」がわからないのであれば、やめた方がいい。

 

 一度しかない人生、思い切り楽しもうぜ。

 

 中島さんの『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』の表紙カバーのそでに「一度しかない人生、思い切り楽しもうぜ」と書かれています。2020年を思い切り楽しむためにも、本質的な意味を考えつつ、ロケットスタート時間術を駆使できるような労働環境をつくっていきたいものです。

 

 今年もよろしくお願いいたします。

 

 

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