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池田信夫 著『日本人のためのピケティ入門』より。資本主義では格差も不平等も拡大する。

 今までの経済学では「資本主義の発展とともに富が多くの人に行き渡って所得分配は平等化する」とされてきました。これは資本の生産性が労働を上回れば投資が増えて資本収益率が下がり、労働生産性に近づくと考えられていたからです。現実にも、クズネッツなどの実証データでは、戦後の所得格差は縮小していました。
 しかしピケティの1870年以降の歴史的データによれば、それは例外で、資本主義では格差が拡大するのが普通だというのです。
 こういう指摘は以前からありましたが、ピケティは世界各国の一次資料を使って定説をくつがえし、「資本主義では過去200年間、格差が拡大し、今後も不平等が拡大する」と予想したオリジナルな研究だったので、大きな反響を呼んだのです。
(池田信夫『日本人のためのピケティ入門』東洋経済新報社、2014)

 

 こんばんは。自宅と最寄り駅の間にあって、毎日のようにその前を通っているのに一度も入ったことのない店とか、読もうと思って買ってはみたものの、書斎のどこかに埋もれてしまってそのままになっている本とかって、ありますよね?

 

 要は、きっかけです。

 

 今回、たまたまそのきっかけがあって、9年前に購入した池田信夫さんの『日本人のためのピケティ入門』を読むことになりました。どんなきっかけがあったのかといえば、それはもちろん秘密です。だって「人生で一番楽しい瞬間は、誰にも分からない二人だけの言葉で、誰にも分からない二人だけの秘密や楽しみを、ともに語り合っている時」だから。さて、誰の言葉でしょうか。

 

 秘密です。

 

 

 池田信夫さんの『日本人のためのピケティ入門』を読みました。トマ・ピケティの大部の傑作を「60分でわかる」くらいコンパクトにまとめたサブテキストです。大部の傑作というのは、ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンをして「不平等についての考え方を一新するもの。本年で、いや、この10年で、最も重要な経済学書になると言っても過言ではない」と言わしめた、あるいはビル・ゲイツをして「かれの研究が、スマートな人たちを富と所得格差の研究に惹きつけることを望む」と言わしめた、

 

『21世紀の資本』のこと。

 

 ポール・クルーグマンの言葉に出てくる「不平等」も、ビル・ゲイツの言葉に出てくる「格差」も、教員だったら関心を向けざるを得ない「教室のリアル」ですよね。効果のある学校論じゃないですが、教育に、私たち教員に、不平等や格差を是正する力はあるのか?

 

 どこの国でも、教育機関はすべての人々に機会均等を保障し、貧しい人でも能力があれば豊かになれる社会的流動性を高めるものとされています。身分社会のように、貴族の子供は豊かになり、貧民の子供は貧しいままという状況を変え、人々に平等な権利を保障することが教育の目的です。しかし本当に流動性は高まっているのでしょうか?

 

 答えは例によって秘密です。60分でわかるので、ぜひ手にとって読んでみてください。ちなみに目次は以下。

 

 第1章 ピケティQ&A
 第2章 ピケティをどう読むか
 第3章 『21世紀の資本』の3つのポイント

 

 第3章の3つのポイントというのは「格差は拡大してきたのか」「何が格差の原因か」「格差をいかに防ぐか」です。教育の話は「格差をいかに防ぐか」ではなく、「何が格差の原因か」のところに出てきます。「格差は拡大してきたのか」については、その答えとなる次の不等式が有名です。ピケティの『21世紀の資本』の目玉といっていいでしょう。

 

 r>g

 

 資本主義の根本的矛盾と呼ばれる不等式です。rは資本収益率、gは国民所得の成長率を表わします。このシンプルな不等式が意味していることを伝えたいがために、ピケティは10年以上かけて欧米諸国のマクロ経済データを集めたといっても過言ではありません。

 

 何を意味しているのか?

 

「資本家のもうけが一般国民の所得の伸びより大きく増えるので格差が拡大する」という意味です。おまけに資本ストックは蓄積されて相続されるので、資産格差はますます広がります。

 

 過労死レベルで働くよりも、土地や株などに投資して不労所得を得るほうが儲かるという、身も蓋もない話です。統計で見れば、もともと資本をもっている人の勝ち、ということ。教室でいえば、資本をもっている家庭にもともと生まれた子どもの勝ち、ということ。マイケル・サンデルが「実力も運のうち。能力主義は正義か?」と問いかけたくなるのも頷けます。では、どうすればいいのか。3つ目のポイントである「格差をいかに防ぐか」に詳しく、そしてわかりやすく書いてあります。でも当然、

 

 秘密です。

 

運のよかった日(2023.12.2)

 

 先週、運悪く風邪を引いてしまいました。1週間経ちましたが、まだ抜けきっていません。そして、さらに運の悪いことに、このブログを書いている途中に風邪が悪化するような知らせが入ってきました。どんな知らせかといえば、

 

 やはり、秘密です。

 

 おやすみなさい。