田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

サマセット・モーム 著『雨・赤毛』より。国家が、あとからやってきた。宣教師も、あとからやってきた。

「いいですか、彼らは生まれながらに堕落しているのです。だから何と言ってやっても、自分の罪悪がわからないのです。彼らでは自然な行為のつもりでいるものを、罪悪だと意識させてやる必要があったのです。姦淫を犯したり、嘘をついて物を盗むばかりではない。彼らの肉体を露出することも、ダンスをして教会へ出ないことも、みんな罪だということを教えてやらなければならなかったのです。娘が胸を露わに見せたり、男がズボンを穿かないのも、みんな罪だと私は教えてやりました」
(モーム『雨・赤毛 ーモーム短編集Ⅰー』新潮文庫、1959)

 

 こんにちは。2日前の金曜日の夜に発熱し、そこからベッドの上で過ごすこと約48時間。ようやくパソコンの前に座ってブログでも書こうかなという気持ちになってきました。映画『カリオストロの城』(宮崎駿 監督作品)に出てくるルパン三世の「12時間もありゃ、ジェット機だって直らあ!」という名言を思い出しつつ、その4倍も横になっているのだから、

 

 そろそろ治ったかな、と。

 

 

 土曜授業(しかも公開!)の疲れが残っていて、週はじめから体調がよくなかったんですよね。学年の先生たちがインフルエンザで軒並みダウンしていて、学年主任という立場上、休むわけにはいかず、おそらくは過労がたたっての発熱です。インフルエンザではなかったことが、せめてもの救いでしょうか。振休なしの土曜授業も、欠員2の状況で学校を回すことも、

 

 みんな罪だと教えたい。

 

 

 サマセット・モームの『雨・赤毛』を読みました。「雨」と「赤毛」、それから「ホノルル」の3篇が収録されている短篇集です。訳者の中野好夫さんが《「雨」はもうあらためて紹介するまでもなく、モームの短篇を代表する作品であるばかりでなく、おそらく世界短篇小説史上にも永久にのこる傑作であろう》と解説に書いているように、表題作の「雨」は、

 

 記念碑的に、巧い。

 

 その『雨』を、読書仲間から勧められました。合わせて、松村圭一郎さんの『くらしのアナキズム』も勧められました。なぜその二冊がセットなのか(?)という疑問は読んでいる最中に解けました。国家が、あとからやってきた(!)というのが『くらしのアナキズム』だとすると、宣教師が、あとからやってきた(!)というのが『雨』だからです。以下、『雨』について、

 

 ネタバレあり。

 

www.countryteacher.tokyo

 

 教員が子どもを放っておけないように、宣教師も、冒頭の引用でいうところの《彼ら》を放っておけないんですよね。その宣教師であるデイヴィットソン(♂)と、放っておいてほしいのに放っておいてもらえなかった娼婦のミス・トムソン(♀)が、雨の降る南海の小島で泥沼のバトルを繰り広げるというのが『雨』のプロットです。

 ときは第一次世界大戦後、帝国主義の時代。主な登場人物はデイヴィットソン(宣教師)夫妻とマクフェイル博士(医者)夫妻、そしてミス・トムソン(娼婦)。ミス・トムソンの悲痛な叫びが、勉強を強いられる子どもの叫びのようで、

 

 ちょっと痛々しい。

 

「お前さんは何故私を放っとけないんだい? なにもお前さんに迷惑一つかけた訳じゃあるまいし」

 

 職業病でしょう。放っておけないんです、デイヴィットソンは。娼婦なんてNGだと。心を改めよ、と。島から出ていけ、と。自分の正義を振りかざすデイヴィットソンに対して、マクフェイル博士(♂)は、次のように牽制します。

 

「しかし何が正しいかということになると、そこはやはり人さまざまというもんでしょうからね」

 

 まともです。しかし、まともは狂気に勝てません。自分が正しいと信じ切っているデイヴィットソンは、マクフェイル博士の言葉に耳を傾けることなく、原住民にそうするように、徹底的に、完膚なきまでにミス・トムソンを追い詰めていきます。雨が降り続く中、追い詰められたミス・トムソンは《ちょっとでもデイヴィットソンの姿が見えないともう我慢ができない。ただ彼が傍にいる時だけ漸く気力を取戻していた。完全に奴隷のように彼にすがりきっているのだ》という有り様に。宣教にせよ教育にせよ、それは明らかに、

 

 失敗です。

 

 宣教というより、単なる支配欲求にすぎません。やはり教員には、放っておく力、言い換えると「子どもたちに任せる力」が必要です。まぁ、これがまた難しいのですが。

 

 

 で、どうなったか。

 

 ネタバレにもほどがあるので書きませんが、男って本当にバカだなぁ、とだけ記しておきます。ミス・トムソンに言わせれば、男はみんな、

 

 豚。

 

 さて、どんな豚なのでしょうか。それはご想像にお任せします。続く「赤毛」も「ホノルル」も、もしかしたら「男って本当にバカだなぁ」という話としてまとめることができるかもしれません。ぜひ、読んでみてください。

 

 体調がまだ優れず、明日、出勤できるか心配です。

 

 おやすみなさい。