田舎教師ときどき都会教師

テーマは「小学校教員の働き方と生き方」&「本、旅、人」

教員になりたい人へ、田舎教師のすすめ

  暑中休暇は徒に過ぎた。自己の才能に対する新しい試みも見事に失敗した。思いは燃えても筆はこれに伴わなかった。五日の後にはかれは断念して筆を捨てた。

(田山花袋『田舎教師』新潮文庫、1952)

 

 田山花袋の小説『田舎教師』は、心ならずも寒村の小学校で働くことになった文学青年が、いわゆる青雲の志を抱きながらも、結局は教員生活に埋もれてゆく様を描いた作品です。吉本隆明さんが『近代日本文学の名作』で高く評価している、田山花袋の代表作。

 

 この小説に感化されて・・・・・・。 

 

 私もいっとき都会を離れ、田舎教師になりました。教員採用試験を受け、狭き門をくぐり抜けて田舎教師に。赴任先は太平洋に面した、漁村の小さな小さな公立小学校です。瀬戸内海べりにある一寒村の小学校を舞台にした、壺井栄の『二十四の瞳』に負けずとも劣らない、たくさんの物語を与えてくれた初任校。今でも毎年欠かさずに訪れている、私にとっての第二の故郷です。

 

  • プライベートビーチ付きのアパート
  • 月明かりと共に水平線を照らす漁火
  • ときおり校庭に姿を見せるカモシカ
  • 心でっかちな子どもたちと大人たち
  • 牡蠣やホタテが食べ放題の校外学習

 

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定置網起こし(総合的な学習の時間)

 

 都会で生まれ育った私には、どれも新鮮で、ワクワクするようなことばかりでした。昨今よく耳にするブラックな毎日ではなく、村上春樹さんいうところの「常駐的旅行者」にでもなったかのようなカラフルな毎日。田山花袋は旅の概念を近代的なものにした作家としても知られていますが、なるほど確かに、と頷けます。

 

 定住漂白。

 

 さて、ここ数年、地方も都市も、教員採用試験の倍率が下がり続けています。3倍を切る自治体が増え、中には2倍を切るところもちらほらと。ブロガーのちきりんさんは「客を選べない仕事の不人気化」(2019.8.7)という記事の中で、公立小学校の先生をはじめとする「客を選別できない職場」を敬遠する動きは、これからさらに広がっていくだろうと予想しています。

 

 私もそう思います。

 

 でも、「田舎教師」と「都会教師」は選べます。田舎教師になって、落ち着いた環境の中で腕をみがいてから都会教師になることも、武者修行よろしく都会教師になった後に田舎教師になることも、或いは行ったり来たりすることもできます。欧米その他では一般的な「ジョブ型」のヨコの移動。その都度試験を受け直さなければいけませんが、不人気化による教員採用試験の低倍率化を背景に、そんな遊動民のような働き方(生き方)もできるようになっています。北は北海道から南は沖縄まで、よりどりみどり。たった一度の人生、定住するにはまだ早い。

 

 田舎教師ときどき都会教師。

 

 教員になろうかどうか真剣に迷っているみなさん。田山花袋に倣って、まずは「田舎教師」という選択、どうでしょうか。

 

 

田舎教師 (新潮文庫)

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日本近代文学の名作 (新潮文庫)

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二十四の瞳 (岩波文庫)

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