田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

沢木耕太郎 著『達人、かく語りき』より。旅が教えてくれたことと、おもしろい大人に「あう」ということ。

高峰 あんまり夢中になって、ずっと下向いて読んでたもんだから、顔がカボチャみたいに浮腫んでね。松山も読ませていただいて言ってましたよ、「よくないなぁ、こんな面白いもの書いて。これで日本の若者は我も我もってみんなリュック背負って外国に行っちゃうんだろうなぁ。沢木さんみたいに利口ならいいけど、アホの若者がリュック背負っておんなじような旅ができると思うんだろうなぁ」って(笑)。
(沢木耕太郎『達人、かく語りき』岩波書店、2020)

 

 おはようございます。もしも我が子が男の子だったら、高校に入学するくらいのタイミングで、沢木耕太郎さんの『深夜特急』を勧めていただろうなぁと思います。三浦しをんさんの『風が強く吹いている』も捨てがたいですが、お勧めはやはり『深夜特急』です。バックパッカーのバイブルであり、私のバイブルでもあります。

 

www.countryteacher.tokyo

 

 えっ、女の子でもいいじゃないかって(?)。いやいやいや。何をおっしゃる。長女や次女が外国に行ってしまったら、パパは寂しくて死んでしまいます。

 そもそも『セブンティーン』なる雑誌にはまりつつある長女が『深夜特急』に興味を示すとは思えないし、大好きな「ねえね」が読まないものに次女が興味を示すとも思えません。それに、あの名女優、故・高峰秀子さんだってこう語っています。曰く《でも女だったら、ああはいかない。男だからできた。それも賢明なる沢木耕太郎だからできた旅なんですけど》云々。

 

 達人、かく語りき。

 

 

 よくないなぁ、臨時休校のこのタイミングで、こんな面白い新刊を出して。しかも全4冊とのこと。これで私の残り少ない年休はなくなっちゃうんだろうなぁ。

 

 セッションズ 第1巻「達人、かく語りき」
 セッションズ 第2巻「青春の言葉たち」
 セッションズ 第3巻「陶酔と覚醒」
 セッションズ 第4巻「星をつなぐために」

 

『深夜特急』にせよ、セッションズと名付けられたこの4冊にせよ、沢木耕太郎さんの本には、大なり小なり、読み手に「行動変容」をうながす力があります。松山さん(高峰さんの旦那さん)が「よくないなぁ」というのも、沢木耕太郎さんが若い女性の編集者に《私のカレもあの本読んで、行っちゃいました》と咎められるのも、その力ゆえです。

 

 行動変容をうながす授業。
 行動変容をうながす指導。

 

 憧れます。

 

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インドのカジュラホにて(1998)

 

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官能的なレリーフ群(1998)

 

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TVドラマ『劇的紀行 深夜特急』出演者(1998)

 

 写真は、インドのカジュラホで撮ったものです。沢木さんの『深夜特急』に出会っていなかったら、世界遺産のあるこの小さな町に足を運ぶこともなかったし、TVドラマ「劇的紀行 深夜特急」(主演  大沢たかお)に出た(!)というこの二人に「あう」こともなかったでしょう。

 

会う。
逢う。
遇う。
遭う。


 それがどのような「あう」でも、人と人との関わりはその「あう」ことからしか始まらない。大事なことは「あう」ということだったのだ。

 

 セッションズ 第1巻の『達人、かく語りき』には、高峰秀子さんをはじめ、その「あう」ことによって生まれたセッション(対談)が10本、ボリューミーな感じで収録されています。

 以下は対談相手とタイトルです。おもしろい(であろう)大人がズラッと並んでいます。

  

 吉本隆明「肉体・異国・青春」

 吉行淳之介「逆襲ムカシばなし篇」

 淀川長治「私の・愛した・映画」

 磯崎新「時の廃墟へ」

 高峰秀子「旅が教えてくれたこと」

 西部邁「1960年を中心に」

 田辺聖子「男から学んだこと、女から学んだこと」

 瀬戸内寂聴「比叡山での日々」

 井上陽水「いつかの続き」

 羽生善治「ジグソーパズルにピースをひとつ」

  

 田辺聖子さんとの対談に《沢木さんは、男と女、どちらから多くのものを学んだのか?》という問いが出てきます。どちらだと思いますか。えっ?  気になる?  いいでしょう。教えちゃいます。いや、やっぱりやめます。正解は読んでみてからのお楽しみです。

 

 男にせよ、女にせよ。

 

 この問いは「年上」であることが前提になっていますよね。羽生さんのように「年下」のケースもあるとはいえ、ほとんどの場合は「年上」です。『深夜特急』を評して、高峰さんが《賢明なる沢木耕太郎だからできた旅》と語っていたことはすでに紹介しましたが、その賢明さというのは、生まれつきの才能もさることながら、年上の、すなわちおもしろい大人との「あう」を重ねた結果として磨かれていったのだろうなと、この本を読みながらそう思いました。

 

taishiowawa.hatenablog.com

 

 ブロガーのインクさん(小学校の先生)の記事です。同じ教員ゆえ、インクさんがそう願う気持ちはよくわかります。

 

 おもしろい大人と子どもを繋げたい。

 

 昔々、『深夜特急』を読んで行っちゃった先で、おもしろい年上と「あう」経験をたくさんしました。そしてその「あう」の集積は、間違いなくその後の私の行動変容に繋がっています。だから学校はもちろんのこと、子どもたちが家庭や地域でおもしろい大人と「あう」チャンスがもっともっと増えればいいのになぁと、強くそう思います。おもしろい大人とのセッションは、教育効果抜群の生きた教材だからです。一冊のドリルよりも一人の大人。今回の臨時休校が、そういった「あう」チャンスの拡大につながっていますように。

 

 明日は青春の言葉たち。

 

 セブンティーンだ。

 

 

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  • 発売日: 2002/03/20
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