田舎教師ときどき都会教師

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リヒテルズ直子 著『オランダの教育』より。個性の重視と社会性の尊重=みんな違ってみんないい + 社会は教育よりもでっかい!

「オールタナティブ」という言葉には、「何かに取って代わる」とか「もう一つの別のやり方」というような意味合いがあります。ですから、オールタナティブ教育というのは、既存の教育に取って代わる別の教育、という意味です。ここで既存の教育といわれるのは、長い間習慣とされてきた、同じ年齢の子供を一つの教室に集め、先生が教壇に立って、主に一方通行で知識を伝達し、子供はそれを受身に習う、という形式の教育、と考えて良いと思います。オールタナティブ教育は、幾人もの教育哲学者、教育実践者が、そのような既存の学校教育に疑問を投げかけて新たに生み出してきた何種類もの教育方法の総称なのです。
(リヒテルズ直子『オランダの教育』平凡社、2004)

 

 こんばんは。 オールタナティブ(オルタナ)と聞くと、世代的には、ニルヴァーナやパール・ジャムといった90年代のアメリカのロック・バンドが頭に浮かびます。ボン・ジョビィやメタリカといった既存のHR/HMとは違うサウンドを志向したニュー・フェイスたち(当時)です。

 

 とりあえず聴いてみよう。

 

 読書とヘヴィメタをこよなく愛していた10代の私は、「とりあえず聴いてみよう」とすぐにCDを買いに走りました。とりあえず会ってみよう、とりあえず観てみよう、とりあえず食べてみよう。年齢に関わらず「とりあえず~してみよう」って、大事。とりあえず続きも読んでみよう。

 

ネヴァーマインド

ネヴァーマインド

 
Peal Jam Second Album

Peal Jam Second Album

 

 

 どちらのアルバムもダメでした。何だこれ。イエナプランに代表される教育のオールタナティブは理解できましたが、ニルヴァーナに代表される音楽のオールタナティブは理解できませんでした。そう考えると、イエナプランよろしく事あるごとに輪を作って話を聞いたりお互いに話し合ったりしている私の教室は、既存の学校教育を好む先生には「何だこれ」「ダメだな」と映っているのかもしれません。もちろん《他人が僕をどのように見なそうと、それは僕には関係のない問題だった。それは僕の問題というよりはむしろ彼らの問題なのだ》という村上春樹さんに160%賛成なので、それこそ「ネヴァーマインド」ですが。

 

オランダの教育

オランダの教育

 

 

 リヒテルズ直子さんの『オランダの教育』を再読しました。副題は「多様性が一人ひとりの子供を育てる」です。第1章から終章までのタイトルは以下の通り。

 

 第1章  百の学校に百の教育
 第2章  オールタナティブスクールとその影響
 第3章  競争のない中等教育
 第4章  オランダのゆとり教育・総合教育
 第5章  学校教育の質は誰が守る?
 第6章  オランダの学校は今・・・移民教育と〈教育の自由〉
 終 章  何のための多様性

 

 冒頭の引用は第2章からとったものです。著者は、オランダにある主なオールタナティブ教育として、モンテッソーリ教育、ダルトン教育、イエナプラン教育、シュタイナー教育、そしてフレネ教育の5つを挙げ、それぞれの特徴を整理しています。

 
モンテッソーリ教育

 著者が挙げている特徴は2つ。ひとつは、子どもたちが実際に手にとって触ったり動かしたりできるオリジナルの教材がたくさんあること。もうひとつは異年齢学習です。異年齢学習が特徴になっているオールタナティブスクールは多く、それは社会が異年齢で構成されているからであり、学校を社会に似た構成にするのはその目的からいって「当然」だからです。

 

 木材、金属、ビーズなどを素材に、安全さと丈夫さ、そして、美しさを配慮してつくられた何種類もの教材です。

 

 つい最近、同僚の先生が市販できそうなレベルのオリジナル教材を作っていて感心しましたが、作るのに5時間くらいかかったとのこと。しかも制作費は自腹とのこと。無理だなぁ。異年齢学習であれば、時間やお金をかけなくてもアイデア次第でどうにかなるかもしれませんが。


ダルトン教育

 ダルトン教育の学校では、どうしてこんなに静かに学習することができるのだろう、と驚くくらい、それぞれの子どもたちが別々に異なる課題をとても静かにこなしているそうです。日本でいうと、算数でよく実践される「単元内自由進度学習」のような雰囲気でしょうか。

 

 各生徒は、一週間分の学習計画の一覧表を持っています。これは先生と各子供の間の一対一の約束で、子供には決められた時までに決められた自分の課題をこなす、という約束遂行が期待されています。

 

 子どもと先生の契約(時間割を子どもが作る!)、及びその契約に基づく個別の学習指導がダルトン教育の特徴です。一クラスの人数が10人前後になれば、日本の学校でも可能かもしれません。40人では、聖徳太子でも、無理。


イエナプラン教育

 イエナプラン教育の特徴といえば、輪を作って話し合う場をとても大切にしていること、学校での活動を〈話す〉〈遊ぶ〉〈働く〉〈祝う〉という4つの基礎的な活動に分けていること、そしてモンテッソーリ教育のように年齢の異なる子どもたちが同じ教室で学ぶというクラス編成を取っていることがよく知られています。日本でいうところの総合的な学習の時間にあたる「ワールドオリエンテーション」も有名でしょうか。ちなみに輪を作って話し合う場というのは、私も授業にしばしば取り入れているのでそのよさがよくわかります。

 

 他のオールタナティブスクールに比べると遅い出発でしたが、その後の普及は著しく、学校数ではオランダにある五種類のオールタナティブスクールのなかでもっとも多いものになっています。

 

 リヒテルズ直子さんも設立にかかわっている「学校法人 茂来学園 大日向小学校 しなのイエナプランスクール」や、広島県に開校予定の「イエナプラン教育校」など、日本にもその影響が、じわり。

 

www.countryteacher.tokyo

 
シュタイナー教育

 シュターナー教育の特徴は、音楽や絵画などの「心」で感じる教育や、「手」を動かしてものを生み出す教育を、読み書き計算などの「頭」と同様に重視しているところにあります。演劇やオイリュトミー(身体表現運動)によって、頭と心と手による総合的な学習も大事にしているとのこと。比重は異なれど、日本の小学校と似ているなぁとも思います。違うのは、以下。

 

 そのほか、毎日複数の教科を小刻みに学ぶのではなく、一定期間(たとえば四週間)は一つの科目の学習に集中する「期間学習」という時間割の取り方、六歳から十三歳くらいまでの子供たちを一人の教師が一貫して担任として指導するやり方、など、従来の学校教育が行ってきた形式を根底から覆すいくつもの特徴を持っています。

 

 お金がかかる、という特徴もあるそうです。オイリュトミーや芸術教育、工作などを教える先生を別に雇わなければいけないから、ということが主な理由だそうです。日本でいうと、お金のある自治体には専科の先生(音楽、図工、家庭、外国語など)がいて、そうでない自治体には「いない」という話とリンクするなぁと思いました。お金の面で、日本の公教育は平等ではない。


フレネ教育

 フレネ教育の特徴は、新聞作りに代表される自由作文です。 日本でいうと、若狭蔵之助さんの実践が有名でしょうか。自由作文を重視した教育を行っているんですよね。学習の出発点は子どもの自由作文にあり!

 

www.countryteacher.tokyo

 

 これら5つのオールタナティブスクールには共通した考え方があります。個性の重視と社会性の尊重です。ここが「肝」です。

 

 それは、一つには、科目ごとの知識達成目標を設定して、子供をその目標に近づけるために育てるのではなく、子供自身を出発点として、子供の自発的な好奇心や探究心を刺激し、それぞれの子供が持って生まれた独特の性質や能力に応じてその成長を助けるのが教育である、と考えていることです。
 また、もう一つの共通点は、いずれも、子供が置かれている生活環境、また、その延長線上にあるより大きな社会や世界を重視しているという点です。

 

 建前ではなく、本音で、真剣に「みんな違ってみんないい」を目指した教育。社会は教育よりもでっかいという、社会学者の宮台真司さんがよく口にしていることを本音で、真剣に目指した教育。オールタナティブスクールがそういった教育を目指した結果、一般校でも輪になって話し合う場が増えたりするなど、多くの変化が見られるようになったそうです。子どもたちはもちろんのこと、

 

 教育方法も、みんな違ってみんないい。

 

 とりあえず、寝ます。

 

 

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