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宮口幸治 著『ケーキの切れない非行少年たち』より。ケーキの切れない非行少年たちに、クリスマスケーキを!

 私が本書を書こうと思ったきっかけは、本文中でも引用した元衆議院議員の山本譲司氏の著書『獄窓記』(新潮文庫)を読んだことでした。さまざまな障害を抱え、本来なら福祉によって救われるべき人たちが、行き場がないがゆえに罪を犯して刑務所に集まってしまっている――。山本氏が描いた受刑者たちの姿は、当時私が勤務していた医療少年院の非行少年たちの実態ととてもよく似ていたのです。
(宮口幸治『ケーキの切れない非行少年たち』新潮社、2019)

 

 宮口幸治さんの話題の本を読みました。書店でよく目にしてはいたものの、タイトルからして読むと暗くなりそうだったので敬遠していました。

 

 読んでみよう。

 

 そう思ったのは、以前、仕事でお世話になったことのある平川理恵さん(広島県教育長)が、SNSで《【お願い!】『ケーキの切れない非行少年たち』のご著者・宮口幸治先生におつなぎいただけませんか?》と発信していたからです。平川教育長、さすがの主体性&協働する力です。

 

 きっと、もうつながっているでしょう。

 

 広島県の高校入試改革のニュースや広島県福山市が創設するというイエナ・プラン教育校のニュースに続いて、宮口さんが提唱している「コグトレ」が広島県の特別支援教育に採用されました(!)というニュースも、近いうちに流れてくるかもしれません。民間から転身して『あなたの子どもが「自立」した大人になるために』教育現場を改革し続けている平川教育長、ホント頭が下がります。

 

www.countryteacher.tokyo

 

 コグトレって?

 

 宮口さんが提唱している「コグトレ」については、以下の本に詳しく書いてあるようです。さっきアマゾンで注文しました。コグトレとは、Cognitive 〇〇 training = 認知 〇〇 トレーニングの略称で、サブタイトルにあるように「困っている子どもを支援する認知トレーニング」のことです。特別支援教育に活用できる手法のひとつ。例えば、『ケーキの切れない非行少年たち』には、不器用な子どもたちの認知作業トレーニングとして、指先の細かい運動をトレーニングする「綿棒積み」などが紹介されています。

 

 

 

 コグトレが救おうとしているのは、「このクリスマスケーキを3人で均等に分けてください」と頼まれたときにうまくできずに困ってしまう「ケーキの切れない非行少年たち」です。少女も含め、割合としては、現在の標準的な1クラス35名のうち、5人ほどが該当するだろう、と宮口さんは書きます。漢字を覚えたり計算をしたりすることに苦手意識をもつ「クラスの下から5人」の子どもたち。宮口さんは、病名のつかない子どもたち、と形容しています。

 

 早期発見&早期支援。

 

 そんな困り感をもった少年少女たちを早期に発見し早期に支援するために、医療少年院で5年の歳月をかけて開発されたという手法が「コグトレ」(認知機能強化トレーニング)です。漢字を覚えるためには、その前提として「形を認識する力」が必要であり、正しく計算するためには、その前提として「数字を記号としてではなく量として見る力」が必要となります。コグトレをやれば、漢字や計算の土台となっている、それらの認知機能をトレーニングすることができる(!)というのが本書の大枠です。

 

 困っている子どもがいる。
 コグトレで何とかしよう。

 

 課題があって、手立てがある。こうだから、こうしよう。読み進めながら、ちょっとした既視感を覚えました。

 コグトレの話は、隂山英男さんの100マス計算(考案者は岸本裕史さん)と「伝え方」が同じだなって。100マス計算を続けた結果、荒れていた子どもたちが見違えるように落ち着くようになった。コグトレをやった結果、非行少年が大きく変わり始めた。100マス計算の話もコグトレの話も、構図としては、同じです。ちょっとやってみようかなと思わせるところも、同じ。

 

 1日5分で日本を変える。
 朝の会の1日5分でできる。

 

 こんな言葉も、隂山さんの100マス計算と似ています。ちまたにあふれる「1日たった5分でダイエット」や「1日5分で視力が回復する方法」みたいな話とも似ています。本当に視力が回復するのであれば、眼鏡屋よりも視力回復センターの数の方が多くなるはず。本当に100マス計算が有用であれば、もっともっと広がるはず。でもそうなっていない。そんなふうに考えると、コグトレに対しても、ちょっと「眉唾」になってしまいます。

 

 でも、食わず嫌いはダメ。

 

 コグトレのことは『ケーキを切れない非行少年たち』を読んで初めて知ったので、この冬休みに『教室で使えるコグトレ』を読んで、ピンときたら3学期にチャレンジしてみようと思います。百マス計算だって、使い方次第だし。

 

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ケーキの切れない非行少年たち


 少年院にいる子どもたちや、刑務所にいる大人たちが、本来は福祉によって救われるべき人たちであるケースが「かなり」多いということ、彼ら彼女らは、罪を犯し、司法の手に委ねられた後になってはじめて「発達障害や知的障害などの障害があるかもしれない」と医療的な見立てがなされるということ、そしてそれらは早期発見&早期支援のできなかった「教育の敗北」であるということ。『ケーキの切れない非行少年たち』を読んで、もっとも考えさせられたことは、そのことです。

 

 ケーキを切る。

 

 昨日、サンタクロースからのプレゼントを喜び、クリスマスケーキを食べているような家庭の子であれば、発達障害や知的障害などを疑われたときに、早い段階で医療につなげてもらえるかもしれません。でも、そういった家庭環境にはない、それこそ「ケーキを切る」ような場面に一度も出会わないまま少年少女、或いは大人になってしまうような境遇の子が障害を背負っていたとしたら、しんどいだろうなぁ。

 

 早期発見、早期支援ができるのは、やはり学校です。

 

 学校教育に、支援を!