田舎教師ときどき都会教師

テーマは「小学校教員の働き方と生き方」&「本、旅、人」

「よそ者、若者、ばか者」に期待したい、教育現場の働き方改革

 リンダ・グラットン教授によれば、近未来の2025年は50億人が携帯端末で結びついている時代。主体的に選び取るのであれば、みんなの力で大きな仕事をやり遂げることができるに違いありません。OECD経済協力開発機構)が進めている世界的な学力調査・PISA「生徒の学習到達速度調査」(Programme for International Student Assessment)でも、2015年から「コミュニケーション力」に加え、「コラボレーション力」が新学力として測られることが決定されています。21世紀型の学力は、主体性と協働が大きなキーワードになっているのです。
(平川理恵『あなたの子どもが「自立」した大人になるために』世界文化社、2014)

 

(株)リクルート、MBA留学、起業、そして民間出身初の女性校長を経て、現在は広島県の教育長として辣腕を振るっている、平川理恵さんの著書より。

 

 平川さんが横浜の中学校で校長をしていたときに、一度お会いしたことがあります。校長室に入るなり、直前まで繰り広げられていたという電話でのバトルについて「怒り心頭」といった感じで、でも「愉快に」話し始める平川校長。

 

 電話の相手は教育委員会です。

 

 内容は「(現場は求めていないのに、惰性で続いている)〇〇の取り組みはやめてもいいのでは?  続けるのであればこうすれば?」っていう話。民間出身校長 VS 教育委員会っていう構図は、地方創生や地域活性化の文脈で語られる「よそ者、若者、ばか者」論にもつながる話で、お話を伺いつつ、働き方改革や教育のアップデートにつながるムーブメントを、平川校長のような「主体性」と「協働する力」のある「よそ者」にどんどん起こしていってほしいなぁと、他力本願的にそう思いました。

 

 他力本願的な、働き方改革

 

 私を含め、共働き&子育て中の教員は、日々の仕事と家庭のことでいっぱいいっぱいで、「よそ者、若者、ばか者」による「働き方改革」を願うほかに手段がありません。子どもたちに「主体性」を説く立場にいながら、主体的ではいられない私たちの現状。主体性を説かれながら主体的ではいられない子どもたちの現状とかぶります。

 

 そもそも論として、主体性を教えることはできるのでしょうか。この「主体性を教える」というジレンマについて、医師の岩田健太郎さんは次のように述べています。《いや、日本の教育者は、教え子が主体的であるよりも、むしろそうでないことを望んでいるのではないか。そう感じられるふしすら、ある》(『主体性は教えられるのか』筑摩書房、2012)。そう感じられるふしとは、日本全国で今も昔も当たり前のように行われている「一斉授業」のことです。一斉授業がデフォルトになっている(制度上ならざるを得ない)日本の学校で、主体性や協働する力が本当に身につくのか。

 

 身につきにくい。

 

主体性は教えられるか (筑摩選書)

主体性は教えられるか (筑摩選書)

 

 

 少なくとも構造上身につきにくいという意識をもってクラスを回していかないと、主体性も協働する力も育たない。年々そういう思いを強くしています。教室の机の配置を男女4人編成のアイランド型にして「一斉授業」と距離を置いているのも、学級通信のタイトルを「コラボ」にしているのも、そういった意識あってのことです。

 

 一斉授業に対しては、はっきりとダメ出しをしている国もあります。

 

 例えば、子どもの幸福度が世界一といわれるオランダ。もはや古典となり、多くの学校に何らかのかたちでその影響を与えているといわれているイエナプラン教育では、《わざわざ異年齢学級をつくっているのは、先生が子どもの能力を一様なものととらえて安易に一斉授業をしてしまわないようにタガを締めているのだ》(リヒテルズ直子『オランダの共生教育』平凡社、2010)とあるように、個々の児童に即した授業をつくることができるよう、それから年上の子が年下の子に自然と勉強を教える状況が生まれるよう、あえて異年齢学級をつくり、構造的に一斉授業の様式を排除しています。

 また、学力世界一といわれるフィンランドでも、複式学級(異年齢学級)が質の高い学びの基盤であると考えられています(オッリペッカ・ヘイノネン、佐藤学『「学力世界一」がもたらすもの』NHK出版、2007)。

 どちらの国も人口が少なく、日本とは社会システムが異なりますが、主体性と協働がキーワードとなっていくこれからの教育を考えていく上で、学ぶところが多いなぁと感じます。

 

 斜字体で書かれている文章と冒頭の引用は、5年前に出していた学級通信「コラボ」に載せた内容です。このときは数年後に平川さんとリアルに会ってお話を伺うことができるとは、夢にも思っていませんでした。夢にも思っていなかったことが、かたちになって現れてくるのだから、未来はおもしろい🎵

 

 その良し悪しは別として、一般人が副業として学校現場に(!)なんてニュースを耳にするようになった昨今。普通の教員が、健康で文化的な最低限度の生活を送ることができる「近未来」のかたちづくりを、主体的な「よそ者、若者、ばか者」に期待したいところです。

 

 ほんとに。

 

 

あなたの子どもが「自立」した大人になるために

あなたの子どもが「自立」した大人になるために

 
オランダの共生教育

オランダの共生教育

 
オッリペッカ・ヘイノネン―「学力世界一」がもたらすもの (NHK未来への提言)

オッリペッカ・ヘイノネン―「学力世界一」がもたらすもの (NHK未来への提言)