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平川理恵 著『あなたの子どもが「自立」した大人になるために』より。キーワードは主体性と協働。夢をかたちに。

 リンダ・グラットン教授によれば、近未来の2025年は50億人が携帯端末で結びついている時代。主体的に選び取るのであれば、みんなの力で大きな仕事をやり遂げることができるに違いありません。OECD(経済協力開発機構)が進めている世界的な学力調査・PISA「生徒の学習到達速度調査」(Programme for International Student Assessment)でも、2015年から「コミュニケーション力」に加え、「コラボレーション力」が新学力として測られることが決定されています。21世紀型の学力は、主体性と協働が大きなキーワードになっているのです。
(平川理恵『あなたの子どもが「自立」した大人になるために』世界文化社、2014)

 

 こんばんは。今夜の引用は、リクルート、MBA留学、起業、そして民間出身初の女性校長を経て、現在は広島県の教育長として辣腕を振るっている、平川理恵さんの著書より。

 

あなたの子どもが「自立」した大人になるために

あなたの子どもが「自立」した大人になるために

  • 作者:平川 理恵
  • 発売日: 2014/09/06
  • メディア: 単行本
 

  

 自立貢献。

 

 平川教育長が「平川校長」だったときに、お会いしたことがあります。自立貢献というわかりやすい教育目標を掲げていた公立の中学校。校長室に入るなり、直前まで繰り広げられていたという、教育委員会との電話でのバトルについて「愉快に」お話ししてくださいました。その内容をオブラートに包んでいえば「委員会が主催する〇〇の取り組みはやめてもいいのでは。続けるのであればこうすれば?」というもの。民間出身校長と教育委員会の関係は、地方創生や地域活性化の文脈で語られる「よそ者、若者、ばか者」論にも似ていて、お話を伺いつつ、働き方改革や教育の刷新につながるムーブメントを、平川校長のような主体性のある「よそ者」にどんどん起こしていってほしいなぁと、他力本願的にそう思ったことを覚えています。

 

 他力本願的な、働き方改革。

 

 私を含め、共働き&子育て中の教員は、日々の仕事と家庭のことでいっぱいいっぱいで、「よそ者、若者、ばか者」による「働き方改革」を願うほかに手段がありません。子どもたちに「主体性」を説く立場にいながら、主体的ではいられないというわけです。それはちょうど主体性を説かれながら主体的ではいられない子どもたちと同じです。

 

 そもそも論として、主体性を教えることはできるのでしょうか。

 

 この「主体性を教える」というジレンマについて、感染症医の岩田健太郎さんは、著書『主体性は教えられるか』の中で《いや、日本の教育者は、教え子が主体的であるよりも、むしろそうでないことを望んでいるのではないか。そう感じられるふしすら、ある》と書いています。そう感じられるふしとは、日本全国で今も昔も当たり前のように行われている「一斉授業」のことです。一斉授業がデフォルトになっている日本の学校で、主体性や協働する力が本当に身につくのか。

 

 身につきにくい。

 

主体性は教えられるか (筑摩選書)

主体性は教えられるか (筑摩選書)

 

 

 少なくとも構造上身につきにくいという意識をもってクラスを回していかないと、主体性も協働する力も育たない。年々そういう思いを強くしています。教室の机の配置を男女4人編成のアイランド型にして「一斉授業」と距離を置いているのも、学級通信のタイトルを「コラボ」にしているのも、そういった意識あってのこと。

 

 一斉授業に対して、はっきりとダメ出しをしている国もあります。

 

 例えば、子どもの幸福度が世界一といわれるオランダ。もはや古典となり、多くの学校に何らかのかたちでその影響を与えているといわれているイエナプラン教育では、リヒテルズ直子さんの『オランダの共生教育』に《わざわざ異年齢学級をつくっているのは、先生が子どもの能力を一様なものととらえて安易に一斉授業をしてしまわないようにタガを締めているのだ》とあるように、個々の児童に即した授業をつくることができるよう、それから年上の子が年下の子に自然と勉強を教える状況が生まれるよう、あえて異年齢学級をつくり、構造的に一斉授業の様式を排除しています。また、オッリペッカ・ヘイノネン&佐藤学さんの『「学力世界一」がもたらすもの』を読むと、学力世界一といわれるフィンランドでも、複式学級(異年齢学級)が質の高い学びの基盤であると考えられていることがわかります。どちらの国も人口が少なく、日本とは社会システムが異なりますが、主体性と協働がキーワードとなっていくこれからの教育を考えていく上で、参考にすべきなのではないでしょうか。

 

 斜字体で書かれている文章と冒頭の引用は、5年前に出していた学級通信「コラボ」に載せた内容です。このときは数年後に平川さんとリアルに会ってお話を伺うことができるとは、夢にも思っていませんでした。そういえば、イエナプランの話もしていたなぁ。夢にも思っていなかったことが、かたちになって現れてくるのだから、未来はおもしろい。2022年の開校を目指して、広島県の福山市に「イエナプラン教育校」が創設されるそうです。夢をかたちに。さすが平川さん、自立した「大人」の鏡です。

 

 結局、人。やっぱり、生き方。

 

 おやすみなさい。

 

 

オランダの共生教育

オランダの共生教育