田舎教師ときどき都会教師

テーマは「小学校教員の働き方」&「読書、旅行、映画」

岩田健太郎さんの『絵でわかる感染症』より。ポイントは感染経路。

 感染症の原因は、しつこいですが、微生物です。いってみれば、微生物は物体、「モノ」です。
 しかし、微生物は感染症の原因ではありますが、感染症「そのもの」ではありません。感染症は、人に起きる熱とか、咳とか、皮膚のぶつぶつとか、そういった「現象」、すなわち「コト」になります。
「モノ」と「コト」とは、きっちり区別を付けなければなりません。両者は違うものなんです。
(岩田健太郎 著、石川雅之 絵『絵でわかる感染症 with もやしもん』講談社、2015)

 

 こんにちは。昨日は父の誕生日で、実家に帰ってお祝いをしてきました。父は戦時中の1944年生まれなので、喜寿の一歩手前です。年々、確実に歳を重ねていく父と母。毎年のことですが、健康でいてくれることを願うばかりです。

 

 父曰く「武漢にも工場がある」云々。

 

 父が生まれたのは中国の上海です。その中国が、新型コロナウィルスによる肺炎の感染拡大で大変なことになっています。感染が最も深刻な武漢は、一昨日の木曜日から実質上の封鎖措置がとられたとのこと。武漢には、父が定年まで勤めていた会社の生産工場があるようで、心配していました。

 

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万里の長城などの観光地も閉鎖。写真は2001年。

 

 感染症が心配なときにはどうすればいいのか。毎年、インフルエンザの流行するシーズンになるたびに思い出す言葉があります。誰もが一度は耳にしたことがあるという、あの有名な言葉です。

 

 感染経路を制するもの、感染症を制する。

 

 感染症医のプリンスこと岩田健太郎さんの名言です。えっ、知らない(?)。聞いたこともない(?)。そうであればこの機会にぜひ『絵でわかる感染症 with もやしもん』を手にとってみてください。この大事な名言も出てくるし、武漢が封鎖されたり、万里の長城などの観光地が閉鎖されたりする理由もわかると思います。一家に一冊、絵でわかるシリーズ。いずれにせよ、中国政府が日本の誇るプリンスの言葉を意識しているのは(たぶん)間違いありません。きっと岩田健太郎さんのTwitterだってフォローしているでしょう。

 

絵でわかる感染症 with もやしもん (KS絵でわかるシリーズ)

絵でわかる感染症 with もやしもん (KS絵でわかるシリーズ)

 

 

 タイトルにある「絵でわかる」っていうところがいいですよね。学生時代に「本当にわかっているのであれば絵で表せるはずだ」と研究室(工学部)の助教授に言われたことを思い出します。絵で表わそうとしていたのは、たしか波動関数のテキストに載っていた数式で、絵に表わすどころかちょっとした理解すらままならなかったことを覚えています。あのテキストに絵がついていたら理解できていたかもしれないのに。だから「絵でわかる」って素敵。

 

 感染症の原因は微生物で、「モノ」。
 感染症そのものは現象で、「コト」。

 

 両者は違う。

 

 だから感染経路さえ遮断してしまえば(制してしまえば)、「モノ」が原因として引き起こされる感染症という「コト」はあらわれない。極端な話、感染がいやならずっとひきこもっていればいい。

 サイバーエージェントの曽山哲人さんの『クリエイティブ人事』を例に、会社の部署に置き換えて話を展開すると次のようになります。

 

 ネガティブな社員は、「モノ」。
 部署の士気の低下は、「コト」。

 

 両者は違う。

 

 ネガティブな社員がいたとしても士気の低下が見られない部署もあるし、ネガティブな社員がいることで雰囲気がどんどん悪くなっていく部署もあります。士気が下がらなければ、太陽と北風でいうところの太陽効果で、ネガティブな社員がポジティブな社員へと変わるかもしれません。しかし多くの場合、ネガティブな社員がいることで、部署の士気はじわじわと下がっていきます。

 

 そんなときはどうすればいいのか。

 

 曽山さんが、同社の入社試験(社長面接)を受けたときのこと。社長である藤田晋さんに「ネガティブな社員が出てきたらどうしますか?」と訊ねたところ、社長は次のように答えたそうです。曰く《ネガティブというのは流行るものだから、もしネガティブな人が出たら徹底的に排除する》云々。流行るものだから、っていうところが感染症を思わせます。

 

 ネガティブな社員は徹底的に排除する。

 

 要するに隔離ですね。武漢でいうところの封鎖と同じ効果があります。隔離して、感染経路を断つというわけです。

 

 でもこれって、会社ではできても、学校ではできません。

 

 学校では、特に「退学させる」という選択肢のない公立の小中学校では、感染経路を断つような「排除」ではなく、一人も見捨てない(!)という信念のもとで「包摂」を目指す必要があるからです。だから教室を安全な場にするためには、不機嫌だったり攻撃的だったり問題行動を繰り返したりする子がいたとしても、主な感染経路たる子どもたちのコミュニケーションの量と質の両方を注意深く観察しながら、いじめなどの問題行動を誘発する「ネガティブ」が流行るのをあの手この手で徹底的に「予防」しなければいけません。ポジティブなこともネガティブなことも含めて、どんどん新しい「コト」が生じてくるのが教室であり、学校ですから。

『絵でわかる感染症』の「おわりに」に、岩田健太郎さんの師匠で、アメリカ感染症界のレジェンドという医師のスタンレー・ヤンコビッツさんの言葉が紹介されています。人気が低下していた感染症という専門領域について、曰く《給料がちょっと低いくらいなんだ。こんな楽しい仕事はないぞ。どんどん新しい問題が生じ、ずっと勉強しなければならない。この仕事について本当によかった》云々。これも名言だなぁ。

 

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父の誕生日に、実家の近くにある中華料理屋にて(2020.1.24)

 

 教室は、毎日のように何かが起こるから、楽しい。
 ずっと勉強しなければならないから、楽しい。
 この仕事について本当によかった。

 

 父にポジティブが感染しますように。そう願って、昨夜、ヤンコビッツさんに倣ってそんな話をしました。しかし実際のところは、なかなかそう思えない現状(働き方)があります。教員の過労死レベルの労働という「コト」を引き起こしている「モノ」の正体は何なのか。

 

 残業は「感染」する(By 中原淳さん)。

 

 感染症って、深いなぁ。 

 

 

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