田舎教師ときどき都会教師

テーマは「小学校教員の働き方と生き方」&「本、旅、人」

香港とマカオの話。小学生のときに読書が習慣づくと、未来が笑う。

川村 ちゃんと戻ります(笑)。というのも、常に戻るために書いているところもあって、そこは旅のスタイルにも通じているんです。僕は10代の頃に沢木さんの『深夜特急』を読んでわかりやすく香港から旅を始めた人間で、いまだに1年に一度はバックパッカーとして一人旅に出るんですが、それは今の日本、映画界にいる自分は何者なのかを外から発見するために行っている感じです。
(川村元気『仕事。』集英社、2014)

 

 川村さんと沢木耕太郎さんの対談より。戻るために書くっていうのは、どこか村上春樹さんの処女作にある《文章を書くことは自己療養の手段ではなく、自己療養へのささやかな試みにしか過ぎない》という一文を想起させて、言い得て妙だなぁと思います。今の日本に戻るために書く。映画界に戻るために書く。戻る場所こそ違えど、ブログや勤務先の小学校で書いている学級便りも、自分にとってはそういった類いの試みなのかもしれません。

 

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香港。懐かしの重慶大厦/チョンキンマンション(01)

 

 香港から悲喜交々のホットなニュースが次々と流れてきます。昨日は「香港の区議会選で民主派が過半数を獲得」&「投票を行った有権者は過去最多」とのこと。ちゃんと投票に行けば、社会は変わるんですよね、きっと。なんだか羨ましいなぁと思いつつ、香港と聞くと、政情が不安定なこんなときにも、重慶大厦(安宿がいっぱい)にはバックパッカーが泊まっているのかな(?)なんて考えてしまいます。かつて私も、川村さんと同じように沢木さんの『深夜特急』に後押しされて香港を訪ね、そして沢木さんと同じように重慶大厦に泊まったことがあるからです。いま泊まっていたら、ちょっと怖いだろうな。チョンキンマンションって、ただでさえ怖い感じがするのに。

 

 宿は想像したとおりやはり連れ込み旅館だった。

 

 沢木耕太郎さんの『深夜特急1 香港・マカオ』より。わたしが泊まったところは連れ込み旅館ではありませんでしたが、便座のほぼ真上にシャワーがついていて、用を足しながら汗も流せるという、デュアルタスクが売りか(?)というゲストハウスで、浴槽なんてもちろんない、閉所恐怖症の人には耐えられないだろうなぁと思う、そんなところでした。でも、宿のオーナーのおじさんはとっても親切で、98年と01年の2回香港に行きましたが、2回とも勝手知ったる狭小ルームを旅の拠点にしました。結局、人。やっぱり、生き方。おじさん、元気でいてくれるといいな。

 

 ところ変わって、マカオ。

 

 こちらは完全な連れ込み旅館というか、いわゆる売春宿(?)でした。泊まった部屋から見下ろすと、こんな感じで女性が客引きをしています。

 

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宿の窓から見える、知らない世界(01)

 

 ロビーに入った途端、お姉さんたちに囲まれて、あっ、なんか面白そうだな、と。もちろん変な意味ではなく。

「安いし、もう疲れているし、ただ泊まりたいだけです」と正直に言いながら、礼儀正しく手続きをしてエレベーターに乗ったところ、勝手についてくるお姉さん。暇つぶしなのか何なのかはわかりませんが、「ただ泊まるだけだなんて、お前はいったい何なんだ。ちょっと話そう」みたいな感じです。沢木さんが重慶大厦で出会った、麗儀さんと同じ。

 

麗儀は下着や新聞の散乱している部屋の中を物珍らしそうに見廻している。彼女がこの部屋に入るのは初めてのことなのだ。彼女の様子から、特に用事があるわけではなく、遊びにきてくれたらしいということがわかってきた。

 

 なんか、麗儀さんみたいだな。そのときそんなふうに思っていたかどうかは覚えていませんが、こんな世界もあるんだなって思ったことは覚えています。ビギナーズ・ラックでぼろ儲けしたカジノもそうですが、『深夜特急』を読まなければ、おそらくは知ることのなかった世界。楽しかったな。

 

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マカオのカジノ。沢木さんと同じように「大小」に挑戦!

 

 10代の頃に『深夜特急』に出会えてよかった。

 

 改めてそう思ったのは、今日、ちょっと嬉しいことがあったからです。クラスの子どもたちが、国語の教科書に載っている物語文をスラスラと読むことができたんです。つっかえつっかえにしか読めなかった(子の多かった)学年当初を思うと、随分と成長したなぁって。ただそれだけのことですが、何だか嬉しく思いました。スラスラと読めないことには、読みを深めることも、読書から行動につなげることも、或いは読むから書くにステップアップすることも、なかなかできませんから。

 

 読み方名人。

 

 小学校1、2年生のときの担任の先生からもらった「肩書き」です。九九名人や縄跳び名人には、何人もの子が選ばれていましたが、読み方名人だけは、学年が終わるまでずっとわたし一人でした。「じゃあ、ここは名人に読んでもらおうかな」なんて指名されるたびに、読むことに対してより一層積極的になれたような気がします。やっぱり、初等教育って大事だなぁ。

 

 読書の秋。

 

 冬将軍の足音が聞こえてきました。もうすぐ師走、もうすぐクリスマスです。おそらくは全国の小学校で「読書週間」や「読書月間」の取り組みがあったであろう11月。子どもたちには、季節が変わっても、引き続き本に親しんでほしいなぁと思います。きっと、未来が笑うから。

 

 香港の平和を祈りつつ。

 

 

仕事。 (文春文庫)

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深夜特急1?香港・マカオ? (新潮文庫)

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風の歌を聴け (講談社文庫)

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