田舎教師ときどき都会教師

テーマは「小学校教員の働き方と生き方」&「本、旅、人」

ダイエット幻想&きちんとした社会人でありたい幻想を捨てたい。

 

 ここでは外見を変える身体変工に注目しましたが、見かけをふるまいにまで拡張させれば、似たような事例はもっとあります。寝坊をしたら朝ご飯を抜いて会社に駆けつける、仕事を終わらせるためへとへとなのに長時間の残業をする。こういうふるまいもよくよく考えれば健康に悪いでしょう。ゆっくりと時間をとって朝ご飯を食べ、定時で帰った方が身体にやさしいことは明白です。でもきちんとした社会人でありたい、という思いが身体に鞭打つことを優先させるのです。人は社会的にきちんとした「何か」として認められるためなら進んで健康を犠牲にします。
(磯野真穂『ダイエット幻想』ちくまプリマー新書、2019)

 

 98年の春、デリーからデリーへと、2ヶ月かけてインドを反時計回りにグルッと一周しました。

 その途中、ユーラシア大陸を横断中(中国 → ネパール → インド → パキスタン → 略 → イギリス)のMさん(♂)と出会い、仲良くなります。「遠回りになるけどせっかくだからと思って」と、パキスタンに向かう前に同じ反時計回りでインドを一周していた5歳年上のMさん。最初に会ったのはボンベイで、その後、ゴアやトリヴァンドラムなどで「あれ?  また会ったね」を繰り返します。

 

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トリヴァンドラムの女性たち(98、春)

 

 インド最南端のカニャークマリで最後に会ってからは、もう「あれ?  また会ったね」はなかったのですが、その半年後に、縁のもつ力の美しさに驚かされることになります。

 

 ひとり旅に味を占めた春と、美しさの後に痛い目に遭った夏。

 

 なんと、その夏、トルコのイスタンブールでMさんと再会したんです(❗)。ハンガリーでF1の仕事をしていた父に会うために、成田からイスタンブールに飛んで中欧を抜け、ブダペストへ行こうと目論んでいたわたし。そのときに痛い目に遭ったことは以前のブログ「自信と鈍感さを携えて、中堅&ベテラン教師の旅 - 田舎教師ときどき都会教師」に書きましたが、痛い目に遭う数日前、パキスタンとイランを経て、陸路でトルコのイスタンブールにたどり着いたばかりのMさんと、偶然、ガラタ橋の上ですれ違ったんです。

 

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イスタンブールにあるガラタ橋(98、夏)

 

 あれ?

 今度は「あれ? また会ったね」ではなく、「あれ?」のみ。その後に続いたのは、数秒間の美しい沈黙を挟んでからの「お~~~~~」。哲学者の九鬼周造にならえば「原始偶然」と呼びたくなるような記念碑的な偶然です。ホント、驚きました。「こんなことって、あるんですね」。

 Mさんとはその後も交流が続いて、このこともまた以前のブログ「変形労働時間制は「日本の先生方は、世界で一番忙しいから」への処方箋はではない、という話。 - 田舎教師ときどき都会教師」に書きましたが、総合的な学習の時間のゲストティーチャーとして、小学校の授業に来ていただいたこともありました。

 

 縁は育むもの。

 

 カナダの大学を出てから日本に戻り、学習塾の先生としてまとまったお金を稼いだ後に「ユーラシア大陸横断」&「自転車による南北アメリカ大陸縦断」の旅に出発した、曰く「フェルメールの絵を見て回ることがささやかな目的だった」というMさん。今は再び学習塾の先生として活躍しているMさんに、公立の学校ではなく、学習塾を選んだ理由を尋ねたことがあります。

 

 曰く「躾のできていない子や、やる気のない子に僕の人生を使いたいとは思えない」云々。

 

 最近、Mさんのその台詞を思い出すことが多くなりました。躾のできていない子や指導の難しい子が増えてきたと感じるからです。或いは、若いころは苦ではなかった、そういった子どもたちとの「毎日」が、ちょっとしんどくなってきているのかもしれません。

 しんどいなって思っても、(久し振りとはいえ)今日も休日なのに学校に行き、律儀に無給で働くわたし。『ダイエット幻想』の著者である磯野真穂さんに言わせれば、これもきっと「何か」幻想、すなわち「きちんとした社会人でありたい」幻想にとらわれているせいなのだろうなぁと思います。

 

 我慢は、健康に悪い。

 

 昨日の「東洋経済ON LINE」に、堀江貴文さんの「日本は我慢力があまりに高すぎる」という記事が出ていました。現代人は「心の健康」のことをもっと考えるべきだという話です。もっともだと思います。

 

 

 数日前のブログ「坂口恭平さんの話を聞いてきました。青山ブックセンターにて。 - 田舎教師ときどき都会教師」で紹介した坂口恭平さんも、同じようなことを話していました。曰く「やりたいことなんて見つけなくていい。それよりも、やりたくないことをやらないほうが大事」云々。要するにイヤなことは我慢するな、やりたくないことをやり続けていると心の健康を害しますよというメッセージです。

 

 休日出勤なんてしたくない。 

 

 Mさんや堀江貴文さんや坂口恭平さんの生き方をヒントにして、きちんとした社会人でありたい幻想を捨てたい。ついでに思春期の長女や次女にはダイエット幻想を捨てさせたい。

 

 勤労感謝の日の翌日に。

 

 我慢大敵。

 

 

ダイエット幻想 (ちくまプリマー新書)

ダイエット幻想 (ちくまプリマー新書)