田舎教師ときどき都会教師

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ブレイディみかこ、國分功一郎、猪熊弘子 著『保育園を呼ぶ声が聞こえる』より。座り方に見えるお国柄。

 そういえば、以前ヨガをやっている先生が、子どもの座り方のちがいが教育法にリンクしていると言っていました。イギリスの座り方はあぐらが基本です。保育園ではたとえば本読みの時間でも、子どもたちにあぐらをかかせます。日本では、手で膝を抱きかかえる体育座りが基本ですよね。保育園でも、小学校でも、きちんと座っていない子を叱るときに、日本では「膝を閉じなさい」だけど、イギリスは「膝を開きなさい」。
(ブレイディみかこ、國分功一郎、猪熊弘子『保育園を呼ぶ声が聞こえる』太田出版、2017)

 

 こんばんは。今日は1時間だけですが、昨日に引き続き午後に年休を取って帰りました。出張先にいたので「そのまま直帰していいですか」と管理職に尋ねたところ「年休1だね」とのこと。時刻は15時50分。出張先が勤務校の近くだったので、戻れるといえば戻れるのですが、15時45分から16時30分までは休憩時間(退勤時刻は16時45分)だし、毎朝7時過ぎには出勤しているし、持ち帰り仕事も毎日あるので、何というか、腑に落ちません。文部科学省がいうところの「自発的な労働」に属するであろう「毎朝の1時間」を考えたら、「年休1だね」っていう返答には、どこか悪魔的なものを感じます。勤務校の管理職はいわゆる「いい人」なだけに、なおさらそう感じます。

 

 何も言えねえ。

 

 こういうときに「何も言えない」のは、もしかしたら体育座り(三角座り)を続けてきた結果なのかもしれません。ブレイディみかこさん&國分功一郎さん&猪熊弘子さんの『保育園を呼ぶ声が聞こえる』を帰路に読み、そう思いました。

 

 

 先日、音楽朝会での合唱の発表に先立って、子どもたちと一緒に体育館で体育座りをしながら歌を歌う機会がありました。練習していたのは童謡の『にじ』です。音楽専科の先生が指導していたので、はじめは後ろで立って見ていたのですが、ちょっと一緒に歌いたくなったので、体育座りで子どもたちの列に加わり、歌ってみました。考えてみると、体育座りのまま歌を歌う場面って、あまりありません。音楽専科の先生も、話をしっかりと聞かせるために、たまたま座らせて指導していただけです。

 

 ららら 虹が虹が 空に架かって
 君の君の 気分も晴れて
 きっと明日は いい天気
 きっと明日は いい天気

 

 天気はともかく、気分が晴れなかったのは事実です。声が出しにくい、ということに気がついたからです。体育座りって、お腹に力が入りにくくて、歌い辛いんです。あぐらの方が歌いやすい。

 

 つまり、なにかと思ったら、すぐに意見が言える座り方なんですね。体育座りは背筋が丸くなってしまうから、声を出せない。日本とイギリスの教育のちがいはそこからきているな、と思いましたね。

 

 冒頭の引用の数行後に出てくる文章です。ブレイディみかこさんが、ヨガの先生に教わったこととして紹介している、座り方に関するエピソード。日本の子どもたちは体育座り、イギリスの子どもたちはあぐらが基本で、その座り方の違いが教育の違いにつながっているという話です。

 

 日本の体育座りは、意見を言わせない座り方。
 イギリスのあぐらは、意見を言わせる座り方。

 

 おもしろい。

 

 この座り方に関する話の少し前に、鼎談相手の國分功一郎さんが次のように述べています。小学生の娘さんを連れて、イギリスの大学に客員教授として滞在していたときの「振り返り」です。

 

 僕はフランスでの生活は長かったし、海外もそれなりに行っているほうだと思いますが、今回のイギリス滞在で権利の考えが浸透していることにここまで敏感になったのは、やはり子どもという弱い立場の人間と一緒だったからだと思います。子どもの立場から考えてみないと見えてこないことはとても大きい。

 

 弱い立場にいる人間が権利の考えにうとく、意見を言わなかったら、世の中は、強い立場にいる人間のやりたい「放題」になります。

 弱い立場の人間というのは、國分功一郎さんいうところの子どもであり、無認可の保育園に子どもを預けざるを得ないパパやママであり、定額働かせ「放題」という人権概念ゼロの労働環境の中でじわじわと病んでいく教員でもあります。そして彼ら彼女らの多くは、その弱さゆえに、幸か不幸か、社会が抱えている構造的な問題を「自分が被害を被る」というかたちで発見しやすい立場にいます。だから権利を教育し、自分の考えを言う力を伸ばすことが大切になる。

 

 Right to Play !(遊ぶ権利)

 

 國分功一郎さんの娘さんが通った小学校の教室の壁には「私たちの権利!」と書かれたポスターがたくさん貼られており、その中で一番多かったのが「Right to Play !」だったそうです。イギリスの小学校では、子どもたちにきちんと権利を教えている。最初の話に戻すと、そのことが座り方にも表れている、というわけです。

 

 どうすれば日本の状況はよくなるのか。

 

 猪熊弘子さんの話に出てくるスウェーデン人の研究者曰く《そもそも月60時間も残業しているっていう日本の社会が理解できないので、ちょっとどうすればいいのかわからない》云々。月60時間どころではない残業を強いられている中での「年休1だね」っていう話も、その研究者には理解できないだろうなと思います。

 

 ちょっとどうすればいいのかわからない。

 

www.countryteacher.tokyo

 


 年休をとっての帰路、妻から「〇〇ちゃんを励ますパパの役割は、〇〇の好きな食べ物を買ってきてあげることです。よろしくお願いします」というメールが届きました。中3の長女が落ち込んでいるようなので、ハーゲンダッツの新商品「苺とブラウニーのパフェ」(期間限定)を買って帰りました。思春期の我が子も、ちょっとどうすればいいのかわかりません。

 

パパを呼ぶ声が聞こえたら。

 

年休!