田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、旅行、映画」

松田公太 著『すべては一杯のコーヒーから』より。Tully'sにて。誕生日おめでとうの前に、誕生日ありがとう。

 次第に病状が悪化していくなかでも、母は自分のことより私の体調を気遣ってくれた。久し振りに父と暮らすことになった千葉・行徳から地下鉄を乗り継ぎ、銀座まで通うのも大変だったに違いない。それでも私に弁当を届けた後、客が少ないのを見ると心配して、
「私がサクラをやってあげるわよ」
 と店先のテーブルに座り、しばらくの間、客を装ってくれたりした。
(松田公太『すべては一杯のコーヒーから』新潮文庫、2005)

 

 昨日、またひとつ馬齢を重ねてしまいました。12月5日。ディズニーの生みの親であるウォルト・ディズニーと同じ誕生日です。

 学校では、遊び団(係)の子どもたちがディズニーランドやディズニーシーに負けないくらいの「楽しい場」を企画・運営してくれて、夢のある時間を過ごすことができました。鬼になった子は先生へのありがとうの気持ちを言葉にするというルールの「何でもバスケット」や、わたしとは全く関係のない、でも「夢中になって走り回っている子どもたちっていいな」と思わせてくれるケイドロなど、やさしい心をもった子どもたちによる嬉しいプレゼントでした。

 

 先生には、先生を続けてほしいと思っています。

 

 帰りの会のときに書いている振り返りに、そんなメッセージを綴ってくれた子がいました。どうやらわたしは、やめるかもしれない先生と思われているようです(笑)。「田舎教師ときどき都会教師」なんて名乗っているからでしょうか。もしかしたらその子の家では「変形労働時間制の導入を柱とした改正給特法が成立」というニュースを見て、家族で「先生、みんなやめちゃうかも」などと話をしたのかもしれません。

 

 教員は改正給特法なんて求めていません。
 求めているのは、持続可能な働き方です。

 

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タリーズに立ち寄る

 

 帰路、Tully'sに立ち寄りました。定時退勤とセットになったルーティーン。カバンの中は持ち帰り仕事で一杯だけど、すべては一杯のコーヒーから。寒空のもと、コーヒーを持ってテラス席へ移動し、母親に電話をかけました。タリーズジャパンの創業者である松田公太さんが、誕生日は母親に感謝する日って、何かに書いていたなぁと思い出したからです。

 

 誕生日おめでとうの前に、誕生日ありがとう。

 

 これは母を亡くしたあとに思うようになりました。自分が生まれた日、それは母親がもっとも苦しい思いをした日なのでは、という考えが心に浮かんだのです。それなら誕生日とは本来、母親にもっとも感謝すべき日のはずだと思ったのです。
(松田公太『仕事は5年でやめなさい。』サンマーク出版、2008)

 

 スタバよりもドトールよりもタリーズが好き。それは、15年くらい前に『すべては一杯のコーヒーから』を読んだから。

 松田さんの処女作である『すべては一杯のコーヒーから』は、部屋の本棚に面陳しているお気に入りの一冊です。ゴッホの絵が「自分で自分の耳を切り落とした」というセンセーショナルな事件によってその価値を高めたという話と同じように、タリーズのコーヒーは松田さんの「起業物語」によって +α の苦味とコクを得ているような気がします。銀座にTULLY'Sの1号店をオープンしたときの話に出てくる、癌を患い、倒れる寸前だったという母親の「私がサクラをやってあげるわよ」という台詞なんて、苦味なしには読めません。

 

 ペンは剣よりも強く、母はペンよりも強し。

 

 塩竃生まれセネガル育ち。小学校4年生のときに大田区にある池上第二小学校に転校し、そこでいじめを受けたという松田さん。相手は5、6人。日本語の発音がおかしいという理由で「アフリカ人」と言われ、ランドセルの中身を放り出されたり、服を脱がされたり……って、ひどいなぁ。恥ずかしくて「いじめ」のことを母親に相談できなかったという松田さんですが、そこはさすが「母親」です。我が子の異変に感づいてこっそりと小学校を訪ね、担任に相談していたとのこと。まっ、担任はまともに取り合ってくれなかったそうですが。

 

 母親には、母親を続けてほしいと思っています。

 

 そう思っていても、いつかはいなくなってしまうもの。誕生日おめでとうの前に、だからこその「誕生日ありがとう」です。昨日、家に帰って長女と次女にそんな話をしたら「パパには感謝しなくていいの?」と訊ねられました。嬉しいプレゼントの第二弾、疲れが癒えます。

 

 誕生日の翌日の今日は保護者会。

 

 学習のこととか、友達のこととか、母親(&父親)の悩みは尽きぬもの。会が終わった後も、個別に長々と話してしまって、定時退勤とセットになったルーティーンは断念することに。あぁ。でも、相談されること自体がありがたいことだし、我が子はもう中高生になっているので、その経験(小学校時代の子育て経験)を還元することができるという意味では、歳を重ねるのも悪くないなぁと思った、金曜日の午後でした。

 

 さぁ、明日は土曜授業だ😭

 

 

すべては一杯のコーヒーから (新潮文庫)

すべては一杯のコーヒーから (新潮文庫)

  • 作者:松田 公太
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/03/27
  • メディア: 文庫
 
仕事は5年でやめなさい。

仕事は5年でやめなさい。

  • 作者:松田 公太
  • 出版社/メーカー: サンマーク出版
  • 発売日: 2008/05/23
  • メディア: 単行本