私は、俳優を目指す若者たちを何千人と見てきていますが、敬語や人をいたわる言葉を親からきちんと教えられている若者は、柔軟な言語感覚を持っています。彼らは、どんな役のどんなセリフに対しても理解が早く、いい演技をするようになります。
一方、そうでない人たちは、もともと言語を大事にするように育てられていないし、言語を尊重しません。
(浅利慶太『劇団四季メソッド「美しい日本語の話し方」』文春新書、2013)
こんばんは。姉が劇団四季で働いている関係から、これまでに何度かゲネプロ(全体リハーサル)を見る機会に恵まれました。劇場で四季の生みの親である今は亡き浅利慶太さんの姿を目にすることもしばしばで、「ボス」が来たときの俳優さんたちのスマートな振る舞い(あいさつ、姿勢など)といったらそれはもう、見事なものでした。美男美女ばかりだし。浅利慶太さんを担任、俳優さんたちを児童に見立てれば、圧倒的なカリスマ&指導力によるトップダウン型の学級経営といえるでしょうか。ゆるふわな学級経営をしている身としては、ちょっと憧れます。
美しい日本語が学べる劇団四季。
学芸会の定番でもある劇団四季。
ちなみに私のお勧めは『コーラスライン』と『コンタクト』、それから『異国の丘』です。『異国の丘』については原作の『夢顔さんによろしく(上・下)』もお勧めです。

夢顔さんによろしく 上―最後の貴公子・近衛文隆の生涯 文春文庫 に 9-3
- 作者: 西木正明
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2002/10/10
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 1回
- この商品を含むブログ (5件) を見る

夢顔さんによろしく 下―最後の貴公子・近衛文隆の生涯 文春文庫 に 9-4
- 作者: 西木正明
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2002/10/10
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 1回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
私は、田舎や都会で育った小学生を何百人と見てきていますが、敬語や人をいたわる言葉を親からきちんと教えられている子は、柔軟な言語感覚を持っています。彼ら彼女らは、どんな授業のどんな課題に対しても理解が早く、いい問いをもつようになります。
一方、そうでない子は、もともと言語を大事にするように育てられていないし、言語を尊重しません。
もともと言語を大事にするように育てられていない子をどうするか。
どうしようもない、というのが正直なところです。しかしそうも言っていられないし、そういう子を放置しておくと教室が荒み、私も病んでいくので、日々、手立てを講じています。
例えば、授業を通したこんな手立て(教師は授業で勝負!)。持ち寄った新聞や広告からポジティブな言葉を見つけ、それを切り取り、グループでデザインを考えて1枚の画用紙にレイアウトしていくという、図工と国語と道徳を足して3で割ったような授業。子どもたちは「幸せだ!」「最高だ!」「大好き!」「愛💖」「お母さん、ありがとう!」などとプラスの言葉を口にしながら共同制作を楽しみます。
もとネタは、NIE(教育に新聞を)教育コンサルタントの渡辺裕子さんが考案したワークショップ(言葉の貯金箱)です。キャッチフレーズは「言葉は、人を傷つけるためではなく、人を幸せにするためにある」。アグリーです。人を幸せにすれば、自分も幸せになれる!
口にする言葉が変われば、人生も変わる。
劇団四季ではありませんが、ミュージカルにもなった『マイ・フェア・レディ』がよい例です。原作を書いているバーナード・ショウは、そういった言葉の社会的機能の大きさがよくわかっていて、だから「もともと言語を大事にするように育てられていない」女性と「言語能力に長けた」言語学者を出会わせたらどうなるのかということを小説という装置を使って示したのでしょう。
結果はご存じの通り。
人生が、激変します。
いずれにせよ「言語学者 VS 一人の女性」であっても相当なエネルギーを要する、言語感覚や言葉遣いを豊かにするための教育。一人の教員が40人もの子どもたちを相手にできるものとは到底思えません。浅利慶太さんほどのカリスマ性や指導力があれば可能なのかもしれませんが。いや~、いないだろう、そんな教員。私たちにできることは、劇団四季にFAXを送って「美しい日本語の話し方教室」を学校に呼ぶことくらいです。
美しい母語を話せるようになれば、
美しい人生を過ごせるようになる。
日本語って、大事。