田舎教師ときどき都会教師

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近藤一博 著『疲労とはなにか』より。疲労と疲労感は違う。全然違う。

 仕事の締め切り直前で徹夜をしなければならなくなったときは、HPA軸が強く働きます。このため疲労感は本来の量よりも減少します。一晩徹夜しても意外に元気、といった経験をされた方も多いのではないかと思います。
 しかしこの状態は、副腎皮質ホルモンとアドレナリンやノルアドレナリンによって「疲労感」が抑制されているだけなので、「疲労」、すなわち eIF2α のリン酸化による細胞の障害は、どんどん蓄積されていきます。過労死、とくに心不全などの臓器障害で突然亡くなるタイプの過労死は、このような現象が原因と考えられます。
 この本を読んでいただいている皆さんは、このようなストレス応答による疲労感抑制のしくみをよく理解して、自分の身を守っていただきたいと思います。
(近藤一博『疲労とはなにか』講談社、2023)

 

 こんばんは。今日は仕事始めでした。受験生の調査書をつくって、キャリアパスポートにコメントを入れて、卒業文集の添削をして、

 

 あっという間に疲労感。

 

 仕事が終わらないので定時後も残業、否、自発的行為を続けましたが、副腎皮質ホルモンとアドレナリンやノルアドレナリンによって「疲労感」が抑制されたらイヤだなぁと思い、自発的行為は30分に留めて退勤しました。休憩時間もなく、残業代も支払われない、「労務管理の無法地帯」と揶揄される学校です。残業麻痺による疲労感抑制のしくみをよく理解して、自分の身は自分で守らなければいけません。

 

 残業麻痺?

 

www.countryteacher.tokyo

 

 残業麻痺というのは、中原淳さん+パーソル総合研究所 著『残業学』に登場する言葉です。簡単にいうと、残業していると幸福感が増す(!)という現象のことです。この現象を疲労医科学によって科学すると、冒頭の引用のようになります。つまり、残業麻痺による幸福感というのは、疲労感が抑制された結果としての、

 

 偽りの幸福感。

 

 

 偽りの幸福感に騙され、残業麻痺、否、自発的行為麻痺によるただ働きを繰り返していた十数年前の自分に『残業学』と『疲労とはなにか』を読ませたい。疲労観と過労観と労働観が変わりますから。

 

 

 近藤一博さんの『疲労とはなにか』を読みました。ジェームス・D・ワトソンの『二重らせん』に負けず劣らずの、これぞブルーバックス(!)といえる一冊です。

 

 目次は以下。

 

 序 章 疲労を科学するには
 第1章 生理的疲労とはなにか
 第2章 慢性疲労症候群 病的疲労の代表格
 第3章 うつ病 究極の病的疲労
 第4章 新型コロナ後遺症 見えてきた病的疲労の正体
 第5章 ついにすべてがつながった
 第6章 人類にとって疲労とはなにか

 

 読んで学んだことを、簡単に、ザッと書きます。この本はブルーバックスなので、簡単ではないのですが、疲労のメカニズムを詳しく書き始めたら永久に終わらないので、クラスの子どもたち(小学6年生)でもわかるように、

 

 ザッと書きます。

 

 疲労には生理的疲労と病的疲労の2種類に大別される。前者の生理的疲労を科学するには、すなわち測定するためには、睡液中のヘルペスウイルスの量を測ればいいということを近藤さんは発見した。曰く《この発見により、世界に先駆けて「疲労」を数値化することができるようになったのです》云々。つまりウイルスに注目した。この本の副題が「すべてはウイルスが知っていた」となっているのはそういう理由。ここで注意しなければいけないことは、疲労と疲労感は違うということ。残業麻痺が疲労感を抑制しても、ドリンク剤が疲労感を抑制しても、測定可能な本家本元の「疲労」は減っていない。つまり、疲労感は当てにならないということ。疲労感を抑制するための方法と、疲労そのものを回復する方法は違っていて、疲労そのものを回復するためには、軽い運動をしたりビタミンB1をとったりすることが効果的。他にも紹介されているのでぜひ読んでほしい。次は、

 

 後者の病的疲労について。

 

 病的疲労の代表は慢性疲労症候群(第2章)。究極の病的疲労はうつ病(第3章)。そして近藤さんが研究を進めていく中で、新型コロナ後遺症も病的疲労というカテゴリーに入るのではないかというのが第4章。生理的疲労と病的疲労の違いは《脳内炎症を起こしているかどうか》。脳内炎症を起こしているのが病的疲労。炎症を炎に例えると、消火器がなくなってしまっているのが病的疲労とのこと。だから消火器の役割を果たす薬剤が開発されれば、もしかしたら慢性疲労症候群もうつ病も新型コロナ後遺症も治るかもしれない。とはいえ、まだそういった薬剤は開発されていないので、以下のことを覚えておいてほしい。

 

生理的疲労と病的疲労はまったく異なると言いつづけてきましたが、じつは、生理的な疲労を継続的に負荷すると、病的疲労に切り替わってしまうことがあるのです。

 

 残業、否、自発的行為はやめよう(!)ということでしょう。長時間労働による生理的な疲労を積み重ねていくと、病的疲労に切り替わり、やがてはうつ病になって自殺してしまうかもしれない。心不全で亡くなってしまうかもしれない。電通の高橋まつりさんが典型ですが、過労死している多くの教員もそうですが、そういった例は枚挙にいとまがありません。

 

 働き過ぎは、よくない。

 

お寿司で疲労回復(2025.1.4)

 

日本酒で疲労回復(2025.1.4)

 

 お酒を飲むとビタミンB1が大量に消費されて、疲労が回復しにくくなるそうです。知りませんでした。次にお酒を飲むときにはサプリメントもセットで飲もうと思います。あっ、紹介できませんでしたが、他の章とは毛色の異なる第6章の「人類にとって疲労とはなにか」は、炙りえんがわと同じくらいお勧めです。

 

 炙りえんがわ、また食べたい。

 

 おやすみなさい。