男の権力、成功、金は、男の弱さを覆い隠すものだ。その弱さは、孤独が深まることに由来すると僕は思う。友だちが努力をせずに簡単に得られなくなったときが、トラブルの始まりだ。女性はこの変化にうまく対応できるようで、それは女性の「孤独感センサー」が、男性のセンサーよりもずっと敏感であることが一因だ。男性は通常、お金や地位の獲得に心を砕き、それを達成した後は、その間ずっと友人関係をおろそかにしてきたせいで、虚しさ寂しさを感じてしまうのが常だ。この問題の始まりと特徴、結果、そして適応させやすいものとそれほどでないものの両方の改善策が、本書の重要な課題だ。
(トーマス・ジョイナー『男はなぜ孤独死するのか』晶文社、2024)
こんにちは。先日、組織開発の専門家として知られる勅使川原真衣さんに、勅使川原さんが編著者を務めている『「これくらいできないと困るのはきみだよ」?』を献本していただきました。ケンポンって、どういう漢字を書くかわかりますか(?)。貢献の「献」に「本」です。習ったよね(?)。なんて説明しながらクラスの子どもたちに自慢してしまうくらい、嬉しい。
真摯な変わり者冥利に尽きます。
すみません!!先生🙏
— 勅使川原真衣 (@maigawarateshi) December 20, 2024
真摯な変わり者🤓
ちょうどトーマス・ジョイナーの『男はなぜ孤独死するのか』を読んでいるところだったので、忙しい中、単なる一読者に「献本」してくれる勅使川原さんのような振る舞いこそが、タイトルにある「なぜ」に対する答えのひとつだろうなぁと思いました。なぜなら、多くの男は、そういうことができない。もちろん、
私もです。
トーマス・ジョイナーの『男はなぜ孤独死するのか』を読みました。訳者は宮家あゆみさん。グーグルで「孤独死 男女差 統計」と検索すると、いちばん上に《孤独死の割合は男性83.3%、女性16.7%と圧倒的に男性が多い》(日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会「第8回孤独死現状レポート」より)と出てきます。これは日本の統計ですが、
他の国でも同じ。
トーマス・ジョイナーの『男はなぜ孤独死するのか』読了。著者曰く《男たちは、小学3年生の幸せな頃のように、友人関係は常にわずかな努力で用意されると思い込んでいるようだ》云々。30代、40代と仕事ばかりしていると、その代償として、孤独と死が待っていますよ、という本。処方箋は?#読了 pic.twitter.com/koobY1WLrJ
— CountryTeacher (@HereticsStar) December 18, 2024
目次は以下。
第1部 問題点
第1章 孤独な性:孤独は、すべてを手にしていることから始まる
第2部 原因と結果
第2章 原因:甘やかされること
第3章 原因:自治の自由を踏みにじるな ―― 独立の危機
第4章 原因:お金や地位を追い求め、孤立を獲得する
第5章 頂上の孤独
第6章 結果:自己破壊行動への道(銃、ゴルフ、NASCAR、アルコール、セックス、離婚)
第3部 解決策
第7章 解決策:自然を愛し、健康を取り戻す
第8章 解決策:他者とつながる現実的な方法
第4部 結論
第9章 性差別、普遍性について、そして未来
本の帯(裏)には「孤独を引き起こす3つの要因」として、次のように書かれています。
1.男は対人スキルを学習しないまま大人になる
2.男は自立を重んじプライドが高く、人の手を借りるのが苦手
3.男は家族や友人よりも仕事、地位、お金を優先する
この3つを自覚せよ、と。高学年になると、男の子よりも女の子の方が、特に友達関係のトラブルが多くなり、面倒になる。小学校の教員にとっては常識ともいえるそのことが、裏を返せば《男は対人スキルを学習しないまま大人になる》につながります。男の子は、子ども時代に女の子よりも甘やかされているということです。
これまでのところ、男の子には、秘密主義、寡黙、人と関わらないことに興味を持つ、といった現象が見られることが分かった。これらは、男の子が女の子以上に甘えた態度をとるようになる原因になる。もしも黙って座ったままでいられるなら、つまり、社会的にあまり努力をしなくても人に対応してもらえるなら、人間関係の育成やメンテナンス作業は不要で、自分を生まれながらの支配者のように思ってしまうかもしれない。言い方を変えれば、対人関係で甘やかされてしまうかもしれないということだ。
かもしれないではなく、傾向として、間違いなく男の子の方が対人関係で甘やかされているように思います。小学校でも、家庭でも。甘やかされているというか、男の子は単純ゆえ(?)女の子が起こすような友達関係のトラブルを起こさない。トラブルが起きないから、学べない。とはいえ、トラブルがあった方がいいとも思えないので、難しいところです。ちなみに勅使川原さんの処女作には、勅使川原さんの小学校のときのエピソードが紹介されていて、やはり女の子って大変だなぁと思います。
大変ゆえに、学ぶ。
男の子は対人関係を築いたりメンテナンスしたりすることに必要な努力の仕方を学ばないまま大人になり、大人になった途端に受験競争だったり出世競争だったりに突っ走ってしまって、地位やお金を得たとしても気付いたときにはすでに孤独で、自殺への扉が開いてしまっているというのが『男はなぜ孤独死するのか』に書かれていることの大枠です。著者の父親も50代のときに自殺してしまったとのこと。お金も地位もあったのに、家族もいたのに、です。
では、どうすればいいのか?
その前にもうひとつ。小学校の教員としてシェアしておきたいと思った事実があります。それは、自尊感情(自己肯定感)について書かれた、以下のくだり。
心理学者たちは、自尊感情とその効果に関する文献を広範囲にわたって調査し、自尊感情の向上が成績の向上や行動の改善につながるという証拠を探したが、その努力は無駄に終わった。それとは反対に彼らが明らかにしたのは、自尊感情の負の側面についてだ。具体的には、自尊感情が高すぎると、攻撃性や暴力性につながることがわかったのだ。
以前、写真家の幡野広志さんと大熊信さんの話を聞きに行ったときに、自己肯定感の話題となり、幡野さんが「僕はこう見えても自己肯定感がめちゃくちゃ低いんです。それは子どもの頃にほめられなかったし、写真家になってからもほめられなかったからです。だから僕の子どもはめちゃくちゃ自己肯定感が高くなると思いますよ。ほめていますから」と話していたんですよね。それに対して、熊野さんが「でも、自己肯定感が高すぎる大人って、ちょっと苦手じゃないですか?」と答えたんです。家庭や学校における、昨今の「叱る」よりも「褒める」に重きを置く風潮が、自尊感情や自己肯定感を高めよう(!)という風潮が、孤独死だけでなく将来の攻撃性や暴力性の芽を育んでいたとしたら、
やるせない。
では、どうすればいいのか?
解決策のいくつかとして書かれていることは、毎日誰かに電話すること、同窓会をすること、睡眠を規則的にとること、そして自然とつながることです。シンプルな解決策。にもかかわらず、男はこれがなかなかできないとのこと。人々がいなければ、あなたは何者でもない、それなのに、です。そんなわけで、今日はこれから大学のときの友人とミニ同窓会を開いてきます。
何年振りだろうな。
行ってきます。