今井 なんでももっと書いたほうがいいですよ。書いたり話したりして、アウトプットすることは、選択肢から回答を選ぶことよりずっと大事なことだと思います。
それに英語学習などでも、インプットだけだとなかなか定着しないんです。やはりアウトプットしないと。ですから、読書ももちろん大事ですが、読んだことを、自分の問題意識と関係づけて文章に書くなどして発信していかないと、読んだだけで終わってしまう。為末さんはSNSやブログで書かれているので、それはとても大きいと思います。
(為末大、今井むつみ『ことば、身体、学び』扶桑社新書、2023)
こんばんは。そんなわけで、ブログを書き続けています。本も読み続けています。先週、通知表の所見に追われてブログはほとんど書けませんでしたが、通勤電車の中などで本は読み続けていて、一昨日の金曜日は、
宇沢弘文を読む。
一昨日の夜に、代官山のクラブヒルサイドサロンに足を運んで、シリーズ「宇沢弘文を読む ― 社会的共通資本から現代の課題を考える」(第30回)に参加してきました。宇沢弘文(1928-2014)に興味があったわけではなく、ゲストの平川理恵さん(広島県のもと教育長)に興味があっての参加です。
お久しぶりです。
- これからは女子教育の再定義をやりたい。
- 人口減少は教育の在り方を変える。
- 欧米ですら人間力のようなことを言っているが、いちばん大事なのはエージェンシー(主体性、当事者意識)である。言い換えると「気」のこと。さらに言い換えると「いろいろなコミュニティーに属しながら楽しくやっていく力」のこと。今の子どもたちはおそらく100歳まで生きることになるのだから。
- 根源、長期、多様。これら3つを繰り返し唱えながら教育長としての仕事をしていた。
- 教育そのものは「先生」だと思います。
- 今の授業のアンチテーゼをショールームのように提示する必要があった。そのひとつがイエナプラン教育。
- 小学校が変わらなければいけない。幼児教育の考え方を小学校に入れないといけない。小学校に入学した途端に「グー・ピタ・ピン」(机とお腹の間を「グー」1つ分開けます。足が床に「ピタン」と着きます。背筋が「ピン」と伸びています。)みたいな世界になるのはおかしい。
- イエナプランは昔でいうところの寺子屋。黒板はとってしまった。黒板があるとそっちが前になってしまって子どもたちが受け身になるから。
- しょうもない研修をやめて意味のある研修に特化した。
- 先生は事務が苦手なんだから事務なんてやらせなくていい。事務は事務屋がやれ。指導主事の事務も2割カットし、カットしてできたリソースを不登校対応などに充てた。
- 教員不足を解消するためには、例えば夏休みはまるまる1ヶ月休める(!)というシステムにしてそれをアピールする、など。先生たちはその1ヶ月で本を読んだり旅をしたりして、その経験を授業に役立てればいい。
メモをとりつつ、相変わらず知的かつエネルギッシュだなぁ、日本の教育の舵取りは平川さんにやってほしいなぁ、聞いているだけで元気になるなぁ、講演のタイトル「公教育と社会的共通資本~未来につなぐ教育を考える」に相応しい内容だなぁ、勤務校の管理職や同僚にも聞いてほしいなぁ、なんか泣けてくるなぁ、なんて思っていました。泣けてきたのは「この人はわかってる」って感動したから。約9年ぶりくらいにお会いした平川さん。
またお会いできますように。
為末大さんと今井むつみさんの『ことば、身体、学び』を読みました。元トップアスリートであると同時に類い希なることばの使い手である為末さんと、言語心理学者の今井さんによる問答の書です。
為末大さんと今井むつみさんの『ことば、身体、学び』読了。今井さん曰く《算数教育を、算数教育の分野だけで語ることができるかというと、まったくそうではありません》云々。算数教育を学校教育と置き換えても然り。学校にもっと、外からの知見を(!)と思える一冊。教員のみなさん、ぜひ。#読了 pic.twitter.com/MW016OBR8U
— CountryTeacher (@HereticsStar) December 10, 2024
目次は以下。
1章 ことばは世界をカテゴライズする
2章 ことばと身体
3章 言語能力が高いとは何か
4章 熟達とは
5章 学びの過程は直線ではない
為末さんが考え、問い、今井さんが答える。基本的にはこの「問答」を軸に対談が進んでいきます。各章の「問い」だけ紹介しておくと、1章では《ことばが世界をつくるのか、世界がことばをつくるのか?》、2章では《ことばと身体とは?》、3章では《言語能力が高いとはどういうことか》、4章では《熟達するというのは、調整力が高いということではないか》、そして5章では《伸び悩んだり、つまづいたりした時、どのようにして抜け出すか?》が、為末さんが今井さんに投げかけた「問い」です。今井さんの「答え」は書きません。ネタバレになるというか、ぜひ手にとって読んでほしいからです。
教員として、共有したいことをひとつ。
早くわからせる方法と、将来伸びるやり方は矛盾するのかもしれないと、今、先生のお話をうかがっていて思いました。
今井 おっしゃるとおり。為末さん、本当に鋭いですね。
平川さん、本当に鋭いですね。
黒板も、グー・ピタ・ピンも、子どもたちに効率よく《早くわからせる》ための方法です。将来伸びるために必要なエージェンシー(主体性、当事者意識)を育む方法ではありません。平川さんが言っていることは、そして広島でやってきたことは、早くわからせる方法ではなく、将来伸びるやり方に変えましょうよ、ということです。そのために国際バカロレア認定校「広島県立広島叡智学園」を開校したり、商業高校をアップデートするために「ビジネス探究プログラム」を始めたり、イエナプラン教育を実践する小学校、市立「常石ともに学園」をつくったり、それから自由進度学習だったり不登校支援だったり現場の先生たちとの対話だったりに力を入れたりして、わかりやすいショールームをつくりましたよ、と。
父は教育が大事と常々言っていた。
平川さんの話を聞きに行ったときに、コーディネーターの占部まりさんがそう話していました。占部さんは宇沢弘文の長女さんです。公教育は社会的共通資本。そして平川さんが話していたように《教育そのものは「先生」》だと私も思います。つまり、先生は社会的共通資本ということです。昨日の土曜日は学校行事、その前の土曜日は土曜公開授業でした。2週連続の6連勤です。もっと教育を、つまり先生を、大事にしてほしい。疲れ果てたので、今日、紅葉に癒されてきました。
きれいだったな。
おやすみなさい。