田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

レイ・ブラッドベリ 著『華氏451度』より。タイトルの意味、知っていますか?

「これからどうすればいいんでしょう? 本はぼくらを助けてくれるんでしょうか?」
「必要なものの三つめが手にはいりさえすれば。ひとつめは、最前いったとおり、情報の本質だ。二つめは、それを消化するための時間。そして三つめは、最初の二つの相互作用から学んだことにもとづいて行動を起こすための正当な理由だ。しかしながら、この老いぼれと、物事に幻滅した昇火士が、ゲームも終盤におよんだいま、なにほどのことができるのか、はなはだ疑問だな……」

「ぼくは本を手にいれることができます」
「そのような危険を冒すつもりとは」
(レイ・ブラッドベリ『華氏451度』ハヤカワ文庫、2014)

 

 こんばんは。前回のブログ記事にたくさんのブックマークがついて、なんと、1日のアクセス数が1万を超えました。今週のはてなブログランキング〔2024年11月第5週〕では、なんとなんと、第4位。第12位だった先週〔2024年11月第4週〕に続いてのランクインです。

 

 おそるべし、ブックマーク。

 

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 おそるべし、ブック・ウーマン。

 

 ブック・ウーマンというのは、実話ベースの物語『ぼくのブック・ウーマン』に登場する女性のことです。本年度から小学6年生の国語の教科書(光村図書)に掲載されるようになりました。ときは1930年代。場所はアメリカ。その女性が何をしていたのかというと、僻地や辺境で暮らす子どもたちに、図書館の本を届けていたんです。だからブック・ウーマン。彼女たちは馬に乗って活動していたそうで、その職業は「荷馬図書館員」と呼ばれていたとのこと。雨にも負けず、風にも負けず、雪にも夏の暑さにも負けず、ブック・ウーマンは本を届け続けます。おそるべし、ブック・ウーマン。クラスの子は、次のように問います。

 

 なぜそうまでして本を届けるのだろう?

 

 別の子がこう答えます。本には、それくらいの価値があるんじゃないかな。草葉の陰でレイ・ブラッドベリも頷いているのではないでしょうか。本には、それくらいの価値がある。決して、

 

 燃やしたりしてはならない。

 

 

 レイ・ブラッドベリの古典『華氏451度』(新訳版、伊藤典夫 訳)を読みました。今更ながら、読みました。名前は知っていたものの、寡聞にしてタイトルの意味を知らず、ジョージ・オーウェルの『1984年』と並び称されるレベルのディストピア小説であるということも知らず、ヘザー・ヘンソンの『ぼくのブック・ウーマン』と同様に、本の価値について書かれた本であるということすら知らず、つまり何も知らずに読みました。ちなみにタイトルの『華氏451度』は、本の素材である紙が自然発火する温度(華氏451度 ≒ 摂氏233度)を意味します。

 

 読んで、よかった。

 

 

 ディストピア小説『華氏451度』には、消防士ではなく、昇火士なる職業が登場します。主人公のガイ・モンターグも昇火士、ファイアマンです。どんな職業なのかといえば、以下、アメリカ昇火士の略史(もちろんフィクションです)より。

 

 創立1790年。植民地各地において英国の影響下に著わされた書籍の焼却を目的とす。昇火士の嚆矢ベンジャミン・フランクリン。

 規定1 通報を受けたるときは速やかに行動せよ。
   2 昇火は迅速なるを要す。
   3 一点も残さず焼却せよ。
   4 終了後はただちに帰還することを要す。
   5 つぎの通報にそなえて待機せよ。

 

  つまり、本を燃やすんですよね。火事になった家に急行して消火するのではなく、本を隠している家に急行して本を燃やすんです。雨にも負けず、風にも負けず、雪にも夏の暑さにも負けず、ファイアマンは本を燃やし続けます。それが昇火士の仕事。

 

 なぜそうまでして本を燃やすのだろう?

 

 クラスの子が『華氏451度』を読んだら、そんな問いをもつかもしれません。そして別の子がこう答えるかもしれません。いわゆる愚民政策だよ。ジョージ・オーウェルの『1984年』にも同じようなことが書いてあっただろ、って。だからこそウィンストン・スミス(『1984年』の主人公)やガイ・モンターグのように、自ら考え、自ら行動しないとだめだよね、って。そのためにも本を読むことが必要だよね、って。カル少年(『ぼくのブック・ウーマン』の主人公)も本を読むようになってから変わったよね、って。テレビやユーチューブばかり見ていると、

 

 それこそディストピアになるよね、って。

 

 さて、昇火士が活躍する、焚書が当たり前の「あり得るかもしれない近未来」は、どんなディストピアなのでしょうか。ぜひ手にとって読んでみてください。

 

 

 昨日、酔り道して、ディストピア感漂う新宿ゴールデン街に潜入しました。わざわざ東京まで行ってそんな危険(?)なところに足を運んだのは、知り合いがパブで働いているという情報をキャッチしたからです。別言すると、冒頭に引用した《行動を起こすための正当な理由》を得たというわけです。パブとスナックとキャバクラの違いすらわからず、真面目なのでどれも行ったことがなく、ドキドキでしたが、行動を起こして、よかった。何事も経験です。本を読むだけではわからないことがたくさんあります。大切なのは、

 

 本質、時間、行動。

 

 おやすみなさい。