「他の人にとられるくらいなら、殺してしまいたい、不幸になればいい」と思うのは恋です。そして、それは愛ではありません。
(二村ヒトシ『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』文庫ぎんが堂、2014)
おはようございます。上記の引用と、それから《ところが自己受容していない女性は恋すると、つらくなるようになっています。女性が「選ばれる側の性」だというのは古い価値観かもしれませんが、女性のナルシシズムは「男に選ばれること」で満足することが多いからです》に力強く赤線を引きました。ドッグイヤーもつけました。
なるほど。
思春期を迎えた高学年女子が接し方の違いに敏感になっていくのは、そういった女性性が影響しているのでしょう。以前、6年生の女の子に「〇〇さんに言うときと、ずいぶん言い方が違いますね」って、ちょっと切れ気味に言われたことがあります。〇〇さんは、いわゆる優等生。そりゃ、少しは違うだろうと思ってはみたものの、その違いが反感を生むことになるんだなって、反省しました。子どもでさえもそうなのだから、いわんや大人をや。
二村ヒトシさんの『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』を読みました。二村ヒトシさんの本を読むのは2回目です。1回目は、ずいぶんと昔のことですが、宮台真司さんとの共著『どうすれば愛しあえるの』を読みました。当時小学生だった次女がその表紙を見て、「パパが変な本を読んでいる」みたいな顔をしていたことを覚えています。エロ本みたいに見えたのでしょう。断じて、どちらもそういった類いの本ではありません。この『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』なんて、あの國分功一郎さんが絶賛しているくらいですから。エロ本どころか、
真に倫理学的な本です。
國分さん曰く《「なぜ君たちは立ち止まるのか? ああ、彼らは望んでいないのだ。彼らは幸せになることができるというのに……」。ホラチウスはかくのごとき神の嘆きを描き、カントはこれを引用しながら倫理を論じた。二村ヒトシはその精神を受け継ぎつつ、「心の穴」を考察する。マニュアル本の体をした、真に倫理学的な書物》云々。絶賛どころの騒ぎではありません。愛してくれる人を好きになれない。逆に、愛してくれない人を好きになってしまう。だから幸せになれない。それが恋愛や性に悩む、平成や令和の女性の姿。カントが予言し、
二村さんが固めた。
二村ヒトシさんの『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』読了。先日、近内悠太さんの講座に参加した。客席にオーラのある人がいた。二村ヒトシさんだった。以前に宮台真司さんとの共著を読んだことがある。あの人なのかぁと思った。オーラの源泉は自己受容。読むとわかります。#読了 pic.twitter.com/lOm14SCoJ5
— CountryTeacher (@HereticsStar) July 13, 2024
二村ヒトシさんと國分功一郎さんという組み合わせも、二村ヒトシさんと近内悠太さんという組み合わせも、私にとっては「意外」で、おもしろいなぁと思います。アダルトビデオの監督ですからね、二村さんは。小学校の教員からすると、ちょっと近寄りがたい存在というか、「教え子を戦場に送るな」みたいな存在です。でも、実際にリアルで目にすると、オーラをまとっているとはいえ、フレンドリーに見えるから不思議です。さすがにゲスト・ティーチャーに来てくださいとは言えませんが。とりあえず単著を読もう、という動機付けは得られたので、購入。
目次は以下。
まえがき
1章 なぜ、あなたの恋は「うまくいかない」のか?
2章 「恋する女は美しい」は、嘘。
3章 恋しても「心の穴」は埋まらない。
4章 ヤリチンとオタクだらけの男たち。
5章 「女は、しんどい」社会のしくみ。
6章 すべての「親」は子どもの心に穴をあける。
7章 「いいセックス」をするために。
8章 自分を受容できるようになるための7つの方法。
9章 運命の相手は、どこにいるのか?
10章 女性読者の恋のお悩みに答える
特別対談 信田さよ子 ✕ 二村ヒトシ
解説 湯山玲子
基本、女性に向けて書かれた本ですが、まえがきには《マジメで不器用でモテない男性(A)》にも役立つと書かれています。《不マジメなのにモテる男性(B)》にも役立つと書かれています。もっと早く読んでいればBになれたかもしれないとか、Bになんてなりたくないとか、私(A)を馬鹿にするなとか、マジメで不器用でモテる男はいないのかとか、そういった感想はさておき、この本を大学生の長女や高校生の次女に勧めたいかと問われれば、う~ん、微妙です。リアルだからです。リアルだから読ませたくないという私の親としての感覚も、う~ん、微妙です。
例えば次のような一節。
なんだかんだいって、男性が「自己肯定しているような気分」になりやすくできているのが、今の社会です。
言い方を変えるなら「肯定できる自分の姿・あり方に、男性のほうが多様性がある」ということです。
リアルだ。
「こんな私のままじゃダメだ!」という無意識の思いが、他人への欲望というかたちに変換された衝動が「誰かへの恋」なのです。
これもリアルだ。
「いつのまにか、恋が憎しみに変わる」のでは、ありません。恋の相手に「心の穴を埋めてもらおう」としている人にとって「恋すること」と「苦しめられること、そして憎むこと」と「傷つけて苦しめること」は、最初から同じものなのです。
怖いくらいにリアルだ。心の穴というのは、なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか(?)という問いを考える上でのキーワードです。その穴を開けるのは、親、とのこと。もうひとつのキーワードは自己受容です。興味が湧いてきたみなさん、男女の別なく、ぜひ手にとって読んでみてください。
心の穴と、自己受容。
恋を、愛へ。