田舎教師ときどき都会教師

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時松哲也・山田眞由美 著、西川純 編集『仕事はここまで削減できる! 学校改革スタートブック』より。仕事はもっと削減できる!

 早晩、担任がいなくて成り立たなくなる地域は生まれます。そうなったら、大分大学教育学部付属小学校のような改革をせざるを得ません。
 例えば、部活は規模を縮小し、社会体育に移行するでしょう。部活命の教師は自宅近くの社会体育の指導者になるのです。登下校の見守りは地域が担当することになるでしょう。勤務時間外の外部からの電話には出ません。もちろん、担任教師の電話番号を保護者に伝えません。運動会、体育祭、修学旅行、遠足は原則廃止になるかもしれません。
(時松哲也、山田眞由美『学校改革スタートブック』西川純 編集、学陽書房、2020)

 

 こんにちは。自宅療養期間は終わりましたが、薄らと症状が続いているような気がするので、今日も仕事を休んでいます。コロナの後遺症なのか、体力が落ちているためなのか、それともムルソーいうところの太陽のせいなのか。いずれにせよ、終業式以来学校に行っていないので、すっかり浦島太郎です。

 

 

 時松哲也さんと山田眞由美さんの『仕事はここまで削減できる!  学校改革スタートブック』を読みました。2020年に「働き方改革」で文部科学大臣優秀教職員表彰(組織部門)を受賞した、大分大学教育学部附属小学校の取組をまとめた一冊です。

 

 時松さんは校長、山田さんは指導教諭。

 

 編集を担当している『学び合い』で有名な西川純さん曰く《私は本当の意味での働き方改革がいかなるものかを一人でも多くの人に知って欲しいと願います》云々。読むと《本当の意味での働き方改革》を知ることができます。目次は以下。

 

 序 章 学校の仕事はここまで減らせる!
 第1章 「できるわけない」をやりとげた大分大学教育学部付属小学校の学校改革!
 第2章 なぜ改革できたのか?
 第3章 あなたにもできる! ここから始める学校改革
 第4章 学校を変えるにはいましかない!

 

 序章に書かれている「ここまで減らせる!」の具体的な内容はといえば、例えば「通知表を年3回から2回(前後期制へ校則変更)」「修学旅行3泊から2泊へ」「家庭訪問を三者面談に変更」等々、公立の小学校でも応用可能なものだったり、例えば「各学年の年度末文集を6年の卒業アルバムのみにする」「自作テストを単元テストの購入に移行」「新聞委員会作成の毎日発行新聞を月に1回程度発行へ」等々、その学校独自の慣習のようなものだったり、まぁ、いろいろです。全国の小学校で、このいろいろをとっととやればいいんですよね。で、これら(50項目以上の業務!)を減らすことによって《7時15分以前には登庁不可、18時45分完全退庁完了、土日は完全閉庁としました》とのこと。

 

 18時45分?

 

 土日の完全閉庁には関心したものの、18時45分には違和感です。16時45分の間違いだと思いたいところですが、本のカバーのそでの部分に《不夜城と言われていた学校が劇的に変わった!》とあって、その下にも「全員6時45分までに帰る。」と書いてあるんですよね。間違いではない。

 

 18時45分。

 

 どうだ、すごいだろ!

 

 そういったニュアンスです。しかし7時15分~18時45分という枠組みが「すごい!」とは思えません。現場の感覚からすると、朝1時間、夕2時間、休憩時間はとっていないだろうから+45分で、おそらくは毎日3時間半程度の残業があって、持ち帰り仕事を入れると結局は過労死ライン(月に80時間以上の残業)を超えてしまっているのだろうなって、そんなふうに想像できてしまうからです。

 

 不夜城が半不夜城になったのは「すごい!」こと。

 

 とはいえ、そのすごさが若者を惹きつけることはないように思います。来年春に採用される大分県の小学校の教員採用試験の受験倍率が1.0倍という驚きの数値を叩き出していることがその証左です。冒頭の引用に書かれている《担任がいなくて成り立たなくなる地域は生まれます》(By 西川純さん)を避けるためには、仕事はここまで削減できる(!)の「ここまで」の範囲をもっと広げなければいけない。完全退庁完了は16時45分にしなければいけない。

 

 そのためにはどうするか。

 

 不夜城を半不夜城にすることができた要因が参考になります。要因は3つ。1つ目は校長の「全校で働き方改革に取り組んでいます」というリーダーシップ、2つ目は大分大学の附属小なので国立大学法人化に合わせて労働基準法に即した働き方に改めなければいけなかったという外圧、そして3つ目は、これも外圧ですが、附属小への異動を希望する人がほとんどいなくなっていたという危機感です。外圧はコントロールできないので、要するに校長次第ということでしょう。1に校長、2に校長、3、4がなくて、5に校長です。全国の校長、この本、読みましたか?

 

 

 通知表の所見を年1回にしましょう。

 

 昨年度、その前の年度にもこの提案をしました。でも通りませんでした。もしもこの提案が通っていたら、あるいは大分大学教育学部附属小学校のように「通知表を年3回から2回(前後期制へ校則変更)」にできていたら、コロナにかかるなんてこともなかったかもしれません。学期末の睡眠不足&免疫力低下は明らかでしたから。本当の意味での働き方改革は、まだまだこれからということです。

 

 学校改革スタートブックを手に。

 

 仕事はもっと削減できる!