田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

岩元美智彦 著『「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる』より。技術としくみとブランド。教職にもブランディングが必要。

 ごみで走るクルマ「デロリアン」を映画に登場させた『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズの制作陣は、「循環型社会の到来」を思い描いていたに違いない。
 そう思って、「2015年10月21日」までに、現実を映画に追いつかせたいと、かねがね考えていたのでした。
(岩元美智彦『「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる』ダイヤモンド社、2015)

 

 こんにちは。2015年10月21日というのは、1989年に公開された映画『バック・トゥー・ザ・フューチャー  パート2』(ロバート・ゼメキス監督)で、車型のタイムマシン、通称「デロリアン」が向かった未来の日付です。私の車のキーが折れた過去の日付でもあります。さっき日記で確認したので間違いありません。鍵穴に差し込んで回したら、キーヘッドのプラスチック部分が壊れてしまったんですよね。15年近く乗っていたので、車だけでなく、鍵も劣化していたのでしょう。定額働かせ放題で心が折れ、壊れてしまう教員と同じです。いや、ちょっと違うかな。今の車はスマートキーなので折れる心配はありません。日進月歩。飛ぶ車はまだ未来ですが、電波を飛ばしてドアを開閉したり、エンジンをかけたりすることはできるようになったというわけです。

 壊れてしまったプラスチック製のキーヘッドは、当然、捨てました。当時は「PLA-PLUS」プロジェクトなんて知りませんでしたから。いわんや「FUKU-FUKU」プロジェクトをや。

 

 

 岩元美智彦さんの『「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる ―― 赤字知らずの小さなベンチャー「日本環境設計」のすごいしくみ』を再読しました。著者である岩元美智彦さんは、日本環境設計株式会社の代表取締役社長です。岩元さんが立ち上げたビジネスがどんなものなのかといえば、

 

 すごいリサイクルです。

 

 特に、衣類に代表される繊維製品のリサイクル。日本でも世界でもほとんど進んでいない「繊維リサイクル」にチャレンジすることで、石油を一滴も使わない社会をつくる。地下資源ではなく地上資源(岩元さんたちの造語)に頼ることで、循環型の Sustainable な社会をつくる。そういった夢のあるビジネスです。学校でいえば、ほとんど進んでいない「働き方改革」にチャレンジすることで、残業を一秒も必要としない学校をつくる。教員のシャドウワークではなく人材資源に頼ることで、循環型の Sustainable な学校をつくる。いや、ちょっと違うかな。

 

 人材資源に頼る。

 

 世の中にはステキな大人がたくさんいます。アンテナを立てて、よ~く目を凝らせば、人材資源が豊富であることに気づきます。以前、縁あって、環境教育+キャリア教育の授業に日本環境設計株式会社の社員さんをゲストとして招いたときも、あっ、ここにもステキな大人が(!)って、そう思いました。

 

www.countryteacher.tokyo

 

 リサイクルの話をする前に、夢を語ってくれたんですよね。スクリーンに、ある有名なシーンを映しながら。具体的には、これ。映画『バック・トゥー・ザ・フューチャー』のラスト、エメット・ブラウン博士がデロリアンの燃料タンクにゴミを入れるシーンです。

 

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引用元 https://ennori.jp/3657/fuku-fuku-bttf-go-de-lorean-project

 

 2015年10月21日。

 

 社員さん曰く「私たちは、ごみを使ってこのデロリアンを走らせました」云々。

 

 実際に動画を観て、子どもたち、大興奮です。負けず劣らず、私も大興奮。すげ~。岩元さんにとっては夢ではなく目標だったようですが、いずれにせよ、つかみはOK。おかげで、看板プロジェクトの「FUKU-FUKU」や「PLA-PLUS」の話もストンと落ちました。なるほど。

 ちなみに「FUKU-FUKU」というのは、服をリサイクルしてもういちど服に戻したり、原子レベルで分解してバイオエタノールにしたりするプロジェクトのことです。無印良品やイオン、パタゴニアなどの店舗で、ハチのマークを見たことがある人も多いのではないでしょうか。あのハチが「FUKU-FUKU」プロジェクトのロゴであり、そこには「あなたの服(FUKU)を、地球の福(FUKU)に」という願いが込められているそうです。もうひとつの「PLA-PLUS」は、「FUKU-FUKU」のプラスチック・バージョン。どちらも未来の社会では「インフラ」になっているかもしれません。

 

「ホンマですね、岩元さん、それめちゃくちゃオモロイですね」

 

 2006年、トウモロコシがバイオエタノールになるというニュースが巷を賑わせていた頃、42歳だった岩元さんは「トウモロコシがOKなのであれば、同じ植物の『綿』でできた服からもバイオエタノールがとれるのではないか」と閃いたそうです。繊維業界に身を置いていた岩元さん。衣類の約8割がそのまま埋められるか焼却ゴミになっていることを知っていて、気になっていたのでしょう。その閃きを当時26歳の高尾正樹さんに伝えたところ、めちゃくちゃオモロイですね、と返ってきたとのこと。高尾さんは東京大学の大学院に在籍していた技術者のタマゴです。親子ほどの年の差があるのに夢を語り合うなんて、すごい。高尾さんは岩元さんの閃きを技術に変え、後に一緒に会社を立ち上げることになります。

 

 消費者の心を動かすために、重要なのが〈ブランド〉の力です。
 どうすればリサイクルが〈ブランド〉になりうるのか――。
 それをとことん考え抜いてたどり着いたのが、消費者が共感できる、わかりやすい〈しくみ〉をつくり上げることです。

 

 使わなくなった服を集めて、クルマを走らせよう。ジェット機を飛ばそう。
 使わなくなった服を集めて、オリンピックのユニフォームをつくろう。

 

 授業に来ていただいた社員さんも話していましたが、リサイクルを含む環境問題って、面倒くさいんです。例えば分別なんて、本当は誰もやりたくない。こまめに電気を消すなんてことも、本当はやりたくない。でも、環境問題はみんなに参加してもらわないと解決しないから、わかりやすい「ワクワク」や「ドキドキ」が必要になる。使わなくなった服を燃料にしてデロリアンを走らせたり、オリンピックのユニフォームをつくったり。岩元さんは《〈技術〉と〈しくみ〉と〈ブランド〉で、世の中は確実に変わります》と書いています。

 

 技術としくみとブランド。

 

 繰り返します。参加してもらうためには、技術としくみとブランドが必要になります。技術については高尾さんに任せっきりだったようなので、岩元さんは、回収を含めた「FUKU-FUKU」や「PLA-PLUS」などのしくみづくりと、会社のブランディングに力を発揮したのでしょう。ブランディングについては、循環型の Sustainable な社会をつくるという事業としての圧倒的な正しさが功を奏したそうです。小さなベンチャー企業だったときから多くの応援団に恵まれていたとのこと。ブランドをつくる上で、応援してくれるファンの存在は欠かせません。

 

 

 教育も、その必要性や重要性という意味において、圧倒的に正しい。にもかかわらず、教員不足が叫ばれる昨今です。辞めたり病んだりする教員が後を絶たない昨今です。岩元さんに学べば、教員を使い「捨てない未来」はしくみとブランドづくりから生まれる、といえるでしょうか。スマートキーではないですが、運動会を Smart にしたり、授業の持ちコマ数を Smart にしたりして、働きやすいしくみをつくること。それから、やり甲斐アピールではなく、教職に就くのって格好いいなというブランディングをしていくこと。そのためには、教員が、楽しく、そして優雅に生きる必要があります。ブランディングがうまくいけば、優秀な志望者の共感を得ることもできるでしょう。優雅に生きることが最良の復讐である、ではなく、優雅に生きることが最良のブランディングである。

 

 どうでしょうか。

 

 そんなワクワクする未来を見たいなぁ。 

 

 

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