田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

2020-07-01から1ヶ月間の記事一覧

村上春樹 著『一人称単数』より。一人称単数として生き続けるためには、二人称や三人称が大事。

私のこれまでの人生に――たいていの人の人生がおそらくそうであるように――いくつかの大事な分岐点があった。右と左、どちらにでも行くことができた。そして私はそのたびに右を選んだり、左を選んだりした(一方を選ぶ明白な理由が存在したときもあるが、そん…

映画『インディペンデントリビング』(田中悠輝 監督作品)より。どん底にいる人たちの人生変えられたらおもろいで。

哲学者の内山節は「関係が価値を生みだす」と語り、「人間の価値はある関係の中で成立し、人間的な価値は関係の変容とともに非合理に変化し続ける」と述べている。その不安定な関係が “生きづらさ” を生み、関係の消失が人間の価値を見失わせているのではな…

西智弘 著『だから、もう眠らせてほしい』より。患者や児童と向き合い、揺らぐことの意味。

幡野が常々主張しているところの核心はここにある。 医療者と、家族、そして患者の目指しているゴールが異なる。そして医療者が自分のポリシーや家族の意向を尊重してしまう今の日本では、吉田ユカの言う通り「安心して死ねる場所がない」ということなのだ。…

内田樹、内田るん 著『街場の親子論』より。かわいい子には旅をさせよ → 待てば海路の日和あり。

家族の絆はつねにこの「変化するな」という威圧的な命令を含意しています。だから、若い人たちは成熟を願うと、どこかで家族の絆を諦めるしかない。子どもの成熟と家族の絆はトレードオフなんです。「かわいい子には旅をさせろ」と言うじゃないですか。(内…

坂口恭平 著『自分の薬をつくる』より。自分の日課をつくってみよう。自分の時間割をつくってみよう。

そう私が感じるのは、いのっちの電話をこれまでずっとやってきて、それこそ二万人近くの声を聞いてきて、感じてきたことがそれだからです。すべての人が同じ悩みなら、もうそれは悩みではなく、人間たるものみんなそんな状態にあるということですので、自然…

神保哲生、宮台真司 著『アメリカン・ディストピア』&「マル激(第1006回)」より。周りに合わせるのをやめよう、っていう倫理教育を!

宮台 とはいえ、普段から物事を考えている人間は、「ロジカルに考えろ」と言われればそれなりに考えることができて、OKなんですが、いままでロジカルに考えたことがない人間が急に「考えろ」なんて言われたって、考える手がかりがないので、「下手な考え、…

ブレイディみかこ 著『ワイルドサイドをほっつき歩け』より。シェリー  俺はうまく生きているか?

ふっと、日本の人と尾崎豊の話をしたときのことを思い出した。尾崎豊は盗んだバイクに乗って学校のガラス窓を打ち割って回っても、その気になれば大学に行って就職して家庭を築けた経済成長の時代の若者だったのであり、就職氷河期を見て育ち「もはや経済成…

ポール・ウィリス 著『ハマータウンの野郎ども』より。絶望の国の幸福な若者たちと似ているかもしれない。

けどね、たかが学校の成績のことを取りあげて世間はとやかく言うでしょ。たとえばジミーって子は出来は悪いですよ、しかし、あの子は立派な牛乳配達人になるかもしれないし、パン屋としてちゃんとやってくかもしれない。ところがね、世間ではこう言うんです…

映画『今宵、212号室で』(クリストフ・オレノ監督作品)より。何かなぁ、この手は。愛は思い出の上に築かれる。

人々が行き交うモンパルナスの通りを、マリアが少しだけ顔を上げて歩く。流れるのは、シャルル・アズナヴール。これを映画と呼ばずなんて呼ぶのだろう、と胸がいっぱいになる。そうだ、素敵な人がいれば堂々と振り返ればいい。いまを踏みしめながら生きると…

ブレイディみかこ 著『THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本』より。補償なき自粛要請も、代休なき土曜授業も、おかしい。

① 労働者が闘う労働者を侮蔑して妨害した時代から、② 労働者同士が団結して闘う時代に移行し、③ 別の問題で闘っている団体とも協力する時代が訪れ、④ 労働者たちが社会には様々な問題があることを知覚できるようになり、ユナイトしてすべての人々の権利のた…

小林紀晴 著『ASIAN JAPANESE 3』より。「ワレ到着セズ」と「ワレ到着セリ」のあいだで。

旅は終わり、人は必ずどこかへ帰る。 帰る場所とはいったいどこだろうか。そのことについて彼と何度か話した。彼は以前言った。「生まれ育った福岡にずっと住んでいて一歩も出ることがなかったら、福岡を自分の故郷と思えないような気がする」 そして同じこ…

小林紀晴 著『ASIAN JAPANESE 2』より。旅と異性と人生と。また会いましょう。

かなり遅くなって僕らはその店を出て、サン・ミッシェルの方向へ歩き出した。「不思議だよね」 彼女が不意にそんな言葉を呟いた。「小林君と夜中のパリをこうして歩くなんて、不思議だよね」 確かに実に不思議な気が僕もする。八年ほど前の四月に同じ新聞社…

小林紀晴 著『ASIAN JAPANESE』より。日本にだって出会いはある。気が付かないだけ。

貧しい、遅れていると言われていた世界で実は、四角い空ばかり眺め、満員電車に乗っていた僕などより、幸せを感じている人間がいた。しかし、それはけっして幸せだけではない。悲惨さも、醜さも、卑怯さも、滑稽さも、生も、死も、あからさまだった。いいか…

宮台真司 著『これが答えだ!』&「マル激(第1003回)」より。普遍主義。情けは人のためならず。

次に、異物を排除する共同体的慣習を問題にしましょう。私の父は定年退職後、地元の大和市で、難民や移民の受け入れボランティアをやってきています。父が言うのですが、白人ではない外国人が住むというだけで治安上の不安に脅える市民が異様に多いのです。 …