田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

2019-08-01から1ヶ月間の記事一覧

國分功一郎、古市憲寿 著『社会の抜け道』より。遊びと学びと退屈から考える「働き方改革」。

國分 うまく遊べないときに、人は退屈する。だから、うまく遊べなかったり、楽しめなかったりすると、人は外から仕事や課題を与えられることを求めるようになる。自ら自由を捨てて、何かに従いたくなる。人間が従属へと向かう契機の一つには、自分で楽しめな…

沢木耕太郎 著『深夜特急5 トルコ・ギリシャ・地中海』より。自信と鈍感さを携えて、中堅&ベテラン教師の旅。

今このイスタンブールでも、思いがけない成り行きから名前も定かではないオンボロ宿に泊まり、これからどうなることやらと考えている。 しかし、同じような状況にありながら香港の時のような湧き立つような興奮がないのはなぜだろう。(沢木耕太郎『深夜特急…

為末大 著『走る哲学』より。夢中は自由の中にしかない、だとすると……。

何かを達成したアスリートの足跡を見て、それが努力の集積に見えてしまいがちだが、ほとんどの場合それらは夢中の結果である。だから努力は本質ではない。努力は夢中の副産物。 最もやってはならないのは夢中の子どもに、夢中の仕方を押し付ける事である。夢…

鍋島祥郎 著『効果のある学校』より。田舎教師と都会教師の違い ~保護者編 その2~。

不平等な社会においては、学校はしょせん不平等を再生産する装置にすぎない。著者たちの真意はともかく、これがコールマン・レポート(Coleman etal. 1966)、およびジェンクスの『不平等』(Jencks 1972)という著書が提示した学校観であった。エドモンズの…

星野道夫 著『魔法のことば 自然と旅を語る』より。田舎教師と都会教師の違い ~保護者編 その1~。

あるいは村でいちばん話のうまい老人が冬の夜長に子供たちにせがまれて、昔話をする。おもしろいストーリーの中に子供が知っておくべき自然の法則や倫理が巧みに配置されていて、それを聞きながら子供たちは大人になるための心得を身につけた。老人の話を聞…

見田宗介 著『社会学入門』より。ただ「生きられた」時間を、毎日の生活の中に確保すること。

バザールだけでなくてたとえばバスを待つみたいな時間でも、田舎だったら「午前」に一本、「午後」に一本くるというバスを日だまりで待っているうちに、ペルーでこちらが日本人ならフジモリ大統領に似ているとか似ていないとかいう話題で、すぐにみんなで盛…

伊賀泰代 著『生産性』より。私たち教員が目指す「本来の働き方」とは?

成長意欲の高い人の中には、日中はめいっぱい仕事をし、家に帰ってから新しいことを勉強するために時間を投入する人もいます。私たちはそういう人を「向学心があり成長意欲が高い」と賞賛します。 たしかに目の前の仕事をこなすのに手いっぱいで、新たな勉強…

外山滋比古 著『少年記』より。クリエイティブとは、勇気のこと。アン王女には勇気があった。

あるとき、人にだまされるのは、だまされる側がだまされやすいからで、それをさけるには、幼いときに、だまされて口惜しい思いをするのがいちばんである。危険をさけるには、危険を経験するよりほかに手はない。こどもには適度の危険教育は必要ではないのか…

ジャレド・ダイアモンド 著『銃・病原菌・鉄』より。田舎教師と都会教師の「出張」の違い 。

著者というものは、分厚い著書をたったの一文で要約するように、ジャーナリストから求められる。本書についていえば、つぎのような要約となる――「歴史は、異なる人びとによって異なる経路をたどったが、それは、人びとのおかれた環境の差異によるものであっ…

ニーチェ 著『ツァラトゥストラはこう言った』より。栄枯盛衰は世の習い。熟議も、そして主体的・対話的で深い学びも。

偉大なる天体よ! もしあなたの光を浴びる者たちがいなかったら、あなたははたして幸福といえるだろうか! (ニーチェ 著、氷上英廣 訳『ツァラトゥストラはこう言った(上)』岩波書店、1967) おはようございます。昨日、神田の神保町にある古書店街を歩い…

簑原敬、宮台真司 著『まちづくりの哲学』より。給食から見えてくる田舎教師と都会教師の違い。

僕は自分の三人の子たちや近所の子たちにいつも二つのことを言います。「細かいヤツは人を不幸にする」と「パパの言うことはたいてい間違っている」ということ。こうしたメッセージに幼少時から晒されれば、過剰な〈安心・安全・便利・快適〉を良かれと思考…

映画『天気の子』(新海誠 監督作品)& ジョン・デューイ 著『人間性と行為』より。「天気の子」ときどき「社会の子」。

鶏は卵に先行する。だが、それにもかかわらず、この特殊な卵は鶏の将来の型を変えることのできるように扱われるかもしれないのである。 (ジョン・デューイ『人間性と行為』人間の科学社、1995) こんばんは。鶏を「社会」、卵を「子ども」と読み替えると、…

岸見一郎、古賀史健 著『幸せになる勇気』& 映画『ギフテッド』(マーク・ウェブ 監督)より。個性の爆発をかわいいと感じる、ゆとりある働き方を。

哲人 いいですか、「人と違うこと」に価値を置くのではなく、「わたしであること」に価値を置くのです。それがほんとうの個性というものです。「わたしであること」を認めず、他者と自分を引き比べ、その「違い」ばかり際立たせようとするのは、他者を欺き、…

平野啓一郎 著『「カッコいい」とは何か』より。教員になりたい(!)と思ってもらえる「カッコいい」ライフスタイルとは?

白居易は、あまり忙しくない地方官吏くらいが、自分には丁度いい、ピッタリだ、と言うために、 「格好」という言葉を用いている。重要なのは、世間的には「裕福な高い身分」の方が羨まれるだろうが、自分にとっては、「東都分司の官職」の方が良いと、個人的…

東浩紀 著『ゆるく考える』より。働き方と、取り返しのつかなさと。ゆるく考え、贅を楽しむ。

娘が中学生になった。小学生の娘はもういない。 凡庸な表現になるが、娘の誕生からここまで、ほんとうにあっというまだった。あっというまだとは聞いていたが、予想以上に短かった。娘が生まれてすでに12年が過ぎた。あと12年すれば24歳で、そのころ娘…

ピーター・M・センゲ、他『学習する学校』より。大日向小学校! 日本の教育は結果としてどういう社会を実現していますか?

私たちは皆、 自分の生きる時代の産物であり、 その時代を再生産するように行動する。「魚が何を話しているかを知ることは難しいが、水のことでないのは確かだ」という古いジョークをご存じだろうか。「先進的な」社会に生きる私たちにとって、産業化時代が…

大前研一 著『旅の極意、人生の極意』より。たった一度の人生、話しかけない手はない。

単純なことだが、私は今でも、バスや列車、そしてローカル線の飛行機などで隣の席に座っている人に必ず話しかけるようにしている。航空機などの座席で誰と隣り合うかは自分で決められない。言い換えれば、自分の人脈を越えた未知の人がそこにいるのである。…

小熊英二 著『日本社会のしくみ』より。働き方改革、メンバーシップ型からジョブ型へ。

「私はA社の社員で、鋳造工をしています」という日本の自己紹介と、「私は鋳造工で、いまはA社に勤務しています」というイギリスの自己紹介の違いは、社会の「しくみ」の違いを反映しているのだ。 (小熊英二『日本社会のしくみ』講談社現代新書、2019) …

田山花袋 著『田舎教師』より。教員になりたい人へ、田舎教師のすすめ。

暑中休暇は徒に過ぎた。自己の才能に対する新しい試みも見事に失敗した。思いは燃えても筆はこれに伴わなかった。五日の後にはかれは断念して筆を捨てた。 (田山花袋『田舎教師』新潮文庫、1952) こんばんは。田山花袋の小説『田舎教師』は、心ならずも寒…