田舎教師ときどき都会教師

読書のこと、教育のこと

灰谷健次郎 著『わたしの出会った子どもたち』より。林竹二とのやりとりが載っていて嬉しい。

本質的に子どもはそういうものなのだ。子ども本来の姿が、そのまま通らないところに、社会の罪があるというふうに考えられはしまいか。(灰谷健次郎『わたしの出会った子どもたち』新潮文庫、1984) こんにちは。昨日、横浜にある情報文化センターまで足を運…

辻仁成 著『アンチノイズ』より。無音を含め、あらゆる音を肯定する。

フミがぼくの地図の中心だった。どこが好きなのかしら、と言ったフミの言葉がふいに蘇ってきた。ぼくこそフミのどこが好きだったのだろう。自分の気持ちを知りたかった。ぼくは自身に問いたいがために地図を作ってきたのかもしれない。(辻仁成『アンチノイ…

近藤絢子 著『就職氷河期世代』より。1993年~2004年に高校、大学などを卒業したみなさん、読みましょう。

解決できない問題の存在を受け入れ、それを前提とした議論を進めていくことも必要だ。例えば就職氷河期世代が高齢期に差し掛かった時には、現行の公的年金制度の給付だけでは生活が成り立たない単身高齢者世帯の増加はおそらく避けられない。そこを直視せず…

横道誠、菊池真理子、二村ヒトシ 著『「ほどよく」なんて生きられない』より。過去は、エンジンになる。

橋本治に関して思ったのは、橋本さんもものすごい量の本を刊行したじゃないですか。ああいう度を超えたクリエイティビティって、私はなんとなくわかる気がするんですよね。つまり、トラウマがエンジンになっているんじゃないかなと思うんです。(横道誠、菊…

辻仁成 著『ワイルドフラワー』より。野生を取り戻せ。

俺の定位置は半円形のカウンターの一番左端と決まっていて、そこは酒を客に注ぐ香奈江の横顔を眺めるのに適した場所だ。坊城や作家の久遠といった常連客たちの杯に香奈江が酒を注ぐのを、静かに眺めて夜を過ごす。その時俺は一人ここで優越感に浸りながら香…

横道誠 著『レトロな世界に分け入る』より。3人のユニークなレトロ商に出会えます。

こうやって「第四次レトロブーム」に耽るうちに、僕はじぶんの書物に対する興味も見直すようになって、本だけでなく好きなレトログッズを並べた「理想の本棚」を模索するようになった。その一例が写真41の本棚だ。ここに並べた書籍とその著者名を書きだし…

堀潤 著『災害とデマ』より。教員のみなさん、読みましょう。

2022年9月に静岡県で発生した、台風の影響による豪雨災害では、市街地全体が大規模に水没するという、生成AIで作られたフェイク画像が広く出回り、人々を混乱させる事案が問題になりました。画像はフェイクだと、ほどなくして明らかになりますが、画…

鈴木大裕 著『崩壊する日本の公教育』より。教育のマニュアル化とは? 公教育の市場化とは?

「私たちがどうやって教員を評価しているかですか? 話もしませんよ。そんなことは私たちの国では関係ないのです。その代わりに、私たちは『どのように彼らをサポートできるか』を議論しますよ」。現場を信じて任せる……。教育現場に結果責任を求めるのではな…

辻仁成 著『ガラスの天井』より。小説家辻仁成のゼロ地点を物語るエッセイ集。

僕達は、何人もの人達と出会っては別れていく。生きている限り、何処かで誰かと会ってしまう。そして何処かに、大切な人達を置き去りにしてしまう。僕達は小さな頃からそれを繰り返してきた。小学校の頃、とても仲のいい友達がいた。席替えがあるまで、僕は…

辻仁成 著『音楽が終わった夜に』より。歌はもう終わった。しかしメロディーは鳴り響いている。

最後にそこを使ったのは、ちょうどエコーズの解散コンサートの直前だったので、初めて顔を出した時から本当に十年という歳月が流れていた。 もうみんな、何を見ても驚いたりはしなかった。あまりプライベートなことも話さなくなっていた。相変わらず練習は好…

エマニュエル・トッド、片山杜秀、佐藤優 著『トッド人類史入門』より。トッドの名著『西洋の敗北』の手引き書!

ロシアとドイツを結ぶバルト海の天然ガスパイプラインの破壊も、西側メディアでは「ロシアによる工作だ」という論調ですが、私は米国と英国とポーランドが破壊したと確信しています。天然ガスを止めたいのなら、ロシアは単にパイプラインの栓を閉めればいい…

辻仁成 著『そこに君がいた』より。危険こそが、健全?

理由なんてなんでもよかった。危険とか、ダメとか言われれば、それをしたくなるのが子供であった。今思えば、危険こそが一番の教育者であった。危険が僕等に教えてくれたことは大人になって本当に役に立った。ダメと言われて、それをしない子には、優等生に…

辻仁成 著『そこに僕はいた』より。いやな奴も大勢いたけど、僕は学校が大好きだった。

小学校のときというのはどうしてあんなに変な奴が多いのだろう。振り返ると小学校時代ほど変な奴が溢れていた時代はない。奇人変人のオンパレードなのである。大人になると皆だんだんまともになっていき普通になってしまうのが残念だ。人々が子供の頃のまま…

鶴見太郎 著『ユダヤ人の歴史』より。組み合わせという構造に照らしながらユダヤ史を紐解く。

重要なのは、状況に自分を合わせるということでは必ずしもないことだ。むしろ自分の特性とうまく組み合わさるところに入っていき、多少は周囲との関係で自分を「カスタマイズ」しつつも、自らの特性を維持することが周りのメリットにもなり、そのことで自ら…

星野道夫 著『ゴンベの森へ』より。誰かと出会い、その人間を好きになった時、風景は初めて広がりと深さを持つ。

人が旅をして、新しい土地の風景を自分のものにするためには、誰かが介在する必要があるのではないだろうか。どれだけ多くの国に出かけても、地球を何周しようと、それだけでは私たちは世界の広さを感じとることはできない。いやそれどころか、さまざまな土…