田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

恩田陸 著『spring』より。読むと、バレエやコンテンポラリーを観に行きたくなる。

唐突に、歌舞伎の語源が「かぶく(傾く)」だというのを思い出す。 何百年もの伝統と確固たる「型」というものがある。それは文字通り、その世界に「疑いの余地なく正しいもの」として屹立している。 そのまっすぐでゆるぎないものを「傾ける」のだ。 それは…

横道誠 編・著『信仰から解放されない子どもたち』より。子どもは身近にいる大人の影響から逃れられない。

マスメディアで何度か取りあげられたのだが、私が小学四年生のときに、「母の日」というものがあることを知って、妹と一緒にお小遣いを使って、カーネーションを買いに行き、母に贈った。小さな花束を買って帰ってきて「お母さん、おめでとう、母の日おめで…

三宅香帆 著『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』より。全身ではなく、半身で働く社会を目指そう。

しかしこの社会の働き方を、全身ではなく、「半身」に変えることができたら、どうだろうか。半身で「仕事の文脈」を持ち、もう半身は、「別の文脈」を取り入れる余裕ができるはずだ。そう、私が提案している「半身で働く社会」とは、働いていても本が読める…

沢木耕太郎 著『心の窓』より。カメラを持つことの最大の効用とは?

私は東京に住んでいるが、自分の家から仕事場まで、三、四十分ほど歩いて通っている。その仕事場に着き、窓のカーテンを引き開けるときはいつもスリルを味わう。 ―― 今日は見えるだろうか?(沢木耕太郎『心の窓』幻冬舎、2024) こんばんは。数時間前に2泊…

小川公代 著『ゴシックと身体』より。言葉の依存先を増やすこと。

ゴシック小説といえば、ウォルポールの『オトラント城奇譚』(1764)、ラドクリフの『ユドルフォの謎』(1794)や『イタリアの惨劇』(1797)、メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』(1818)、ロバート・マチューリンの『放浪者メル…

横道誠 著『あなたも狂信する』より。ラブシャワーって、知っていますか?

だからマインドコントロールを発生させる本体とは、その団体の特異性だ。共同体を活用して団体の特異性に新しい信者を慣らそうとすることによって、マインドコントロールが機能する。そして、その際に暴力が用いられれば、それは洗脳ということになる。 私は…

岩尾俊兵 著『世界は経営でできている』より。これまで読んだ中で最高のエッセイ!

経営するのは企業だけだと思い込むのは無知と傲慢のなせる業だ。学校経営、病院経営、家庭経営・・・・・・はどこに消えたのか。むしろ世の中に経営が不足していることこそが問題なのである。現代の学校や病院や家庭が不合理の塊なのは誰もが知っていることではな…

横道誠 著『発達界隈通信』より。教員のみなさん、読みましょう。

「発達障害は大きな免罪符にならない。発達障害だから仕方ないと考えると、未来はありません。障害があったら、人の10倍は考えて、工夫しないといけないと思ってます。発達障害や精神障害があっても、それに引っ張られすぎてはいけない。楽しいことはたく…

宮地尚子 著『傷を愛せるか 増補新版』より。傷を抱えるすべての人に、この本を勧める。

わたしは臨床ではもっぱらアドバイスをする側であるが、「なんでこれくらいのことができないの?」と思うことは正直多い。例えば、自分を守ること、人との距離を保つこと、自分の気持ちを抑えること、独りでいること。そんな「普通の人」にとっては簡単なこ…

横道誠 著『解離と嗜癖』より。現実と幻想が交錯する、癖になる旅行記です。

初めて仙台駅から出た瞬間、その仙台という街にすぐさま好印象を抱いた。駅前に高架橋が張りめぐらされていて、それがむかしの人が想像したら近未来という感じで、カッコよいと思ったのだ。ふだん暮らしている人にはどうでもよいものか、場合によっては厄介…

ジョージ・オーウェル 著『動物農場』より。すべての動物は平等である。だが一部の動物は他よりももっと平等である。

さて、レーニンには主要な部下が二人いた。片方はレオン・トロツキー。インテリで理論面でも演説もうまい。本書ではスノーボールのモデルだ。されに自ら赤軍の先頭にたって、政府軍や帝国残党との戦いを率いるというまったく予想外の軍事手腕も発揮し、外交…

藪下遊、髙坂康雅 著『「叱らない」が子どもを苦しめる』より。この本を課題図書にして、保護者と教員で読書会をしたい。

「外の世界に合わせて自分を調整する」という体験は、子どもにとって非常に不快なものです。それまでは泣くなどの行為を通して、親に「環境を変えてもらった」という経験が中心でしたが、環境を変えるということが難しい状況や、子どもが環境に合わせなくて…

宮島未奈 著『成瀬は信じた道をいく』より。成瀬はニューロ・ダイバーシティを体現する。

みゆきに礼を言ってスマホを確認すると、普段どおりナチュラルな無表情のあかりと、緊張で無表情になった慶彦が写っていた。あかりは母親似だと思っていたけれど、こうしてみると自分ともなんとなく似ている。見た目は無表情でも、心のなかではちゃんと喜ん…

横道誠 著『みんな水の中』より。誠をめぐる冒険。

私が発達障害の診断を受けたのは、2019年4月のことだった。仕事を休職してしまい、長年の自分の「謎」を解くために、以前から疑っていた自分の鍵穴に、「発達障害の診断」という秘密の鍵を挿しこんだのだった。 そこから私は発達障害支援センター「かが…

宮島未奈 著『成瀬は天下を取りにいく』より。成瀬はジェンダー・バイアスを覆す。

「この短時間でわたしのどこに惹かれたのか教えてくれないか」 成瀬さんが俺の目を見て尋ねる。「だれにも似てないところかな」 考える前に口から出ていた。少なくとも、これまで俺が出会ってきた女子の中に成瀬さんのような人はいなかった。成瀬さんは「な…