君の自主性を尊重するとか、自分で考え給えとか、格好がよいけれど決断という負担を単に押しつけているだけで、とても無責任なのである。確固とした価値観がなく臆病でなにかから逃げているだけにすぎないのに、ものわかりがよいふりをしている。 ときには、…
このことと、なぜ、小さな子どもたちが夢中になりやすいのか、ということはつながっているような気がします。それはただ楽しいから没頭していくわけで、大人になればなるほど、善い・悪い、素晴らしい・素晴らしくない、未来がある・未来がないということが…
人を年齢で割らない。何歳の人が来てもいい。子どもも、親も、地域の高齢者も。人を所得で割らない。年収いくら以下の人は無料とか、いくら以上の人は500円とか、割らない。そういう「タテにもヨコにも割らない」場所だから、上下がない。上下はないが、…
わかった。わたしがこの町でいちばん会いたかったのは、昔のわたしだったんだ、と思った。だいじょうぶ。ちゃんといた。マチコさんがこの町で暮らしたことの証は、ここに残っていた。(重松清『まゆみのマーチ 自選短編集・女子編』新潮文庫、2011) こんば…
子どもの幸せを一番に考えるのではなく、まず親自身がどうしたら幸せになれるか、どうしたら親が子どもの手本やロールモデルになれるか、そちらのほうをもっと一生懸命考えるといいのです。なぜなら、親も子どもも幸せを追求する共同体だからです。親が幸せ…
自分で考え、主張できる文化へと変わらない限り、サッカーの練習に来た子どもに「自分で考えろ」と命じてもハードルが高いでしょう。学校の教室が変わらなければ、根本的なことは変わらない。スポーツも社会も、その基盤は教育なのです。(佐伯夕利子『教え…
ガンジーは、読み書きができればいいという西欧の教育観は間違っていると言い続けていました(『ガンジーの教育論』、片山佳代子訳・編、星雲社)。彼自身は高等教育まで受けた人ですが、インドの人々を学校に行かせることで、彼らがより多く生計を得るよう…
それにしても、現在を生きながら、同時に過去を生きることは、どうしてこれほど甘美なのだろうか。僕が、〈母〉を必要としなくなったのも、それが却って、母の記憶を生きることを邪魔していたからかもしれない。今の僕は、母が死んだ世界でも、やはり正しく…
少なくとも生きることがつらいと思うことは減り、死んでしまいたいと思うことは無くなった。「世の中は未完成で、生き方に正解はない。だから私にもできることがあるかもしれない」。なんの根拠もないただの勘違いだ。でもそんな勘違いが、17歳の私を研究…
休校中は、小中高のほとんどの先生にとって、新型コロナのことで精神的にはキツかったでしょうが、授業も部活動も生徒指導もないなか、残業時間は格段に減りました。「こんなに家族と夕食を食べたことはない」と言う先生もいました。しかし、学校再開後はま…
豊かさをもたらすのは資本主義なのか、コミュニズムなのか。多くの人は、資本主義だと即答するだろう。資本主義は人類史上、前例を見ないような技術発展をもたらし、物質的に豊かな社会をもたらした。そう多くの人が思い込んでいるし、たしかに、そういう一…
目に見える相手が必要とする分だけを供給すればよかった作り手は、市場の拡大とともに、次第に直接関係を持たない第三者に対してアピールする必要性に迫られる。資本主義の成立とともに、活用されるようになったのがデザインの力だ。成長の一途を辿る産業の…
その人にとって最も大事な人と出会わなかったら、その人の人生はどうなっていたのだろうと考えてみたんだ。その疑問の答えを探していると、結果的にこの映画の企画になった。男だろうと、女だろうと、独身でも恋人がいても、この人と出会わなかったら自分は…
遠い昔の話だと思われがちです。でも、視線が邂逅する街、見る・見られるが輻輳する街、「森」のような「微熱の街」は、『トロピカル~』のイサーンや90年代半ばまでのバンコクや渋谷のように最近まで実在しました。「森」だった街を実際に経験した僕ら世…
しかし私は極夜にひきつけられたのだった。気になってしょうがなかった。太陽のない長い夜? いったいそこはどんな世界なのだろう。そんな長い暗闇で長期間旅をしたら気でも狂うのではないか。そして何よりも最大の謎、極夜の果てに昇る最初の太陽を見たとき…