でも親以外の世界に触れると、そのバランスが変わるの。成長する中で面白いと思うのは、私くらいの歳の子が家族以外の人間と会い始めると、世界が広がった感覚になり、より多くの人を受け入れるのよ。でもミラの親にとってそれはなかなか簡単に処理できるこ…
変化、つまり加速度を書きたいのだ。一定の速さで時間が過ぎていくのではなく、遅くなろうが速くなろうが、そこにある加速度。つまり、ヒマラヤに行くという特殊な体験、60前という年齢経験が自分自身に何らかの変化、加速あるいは減速をもたらすか、とい…
介護業界は離職率が高いし、求人難である。すでに中小零細は慢性的な人手不足であり賃金をアップさせることができる大手にこれから呑み込まれる。だが、生産性が高く、働き方改革を実現している合掌苑のやり方なら生き残れるだろうし、何よりも利用者にとっ…
今、わたしたちに必要なのは、幸福の追求ではなく、信頼の構築だと思う。外交でいえば、日本は、緊張が増す隣国と、「幸福な関係」など築く必要はない。しかし、信頼関係にあるのかどうかは、とても重要だ。幸福は、瞬間的に実感できるが、信頼を築くために…
いま僕が文芸家協会の会員にさせてもらい助かっているのは、健康保険である。文芸美術国民健康保険組合という形の国民健康保険への団体加入で、一般の国民健康保険よりかなり安い。遡れば、菊池のおかげになる。(猪瀬直樹『小論文の書き方』文春新書、2001…
デジタルライフが私たちの脳に与える影響――それに対する懸念は、鉄道酔いや電話の邪悪な魂や、催眠術をかけるテレビのようなものなのかもしれない。技術革新が起きるたびに、ハルマゲドンを予言する人が必ずいるものだ。とはいえ、今回はこうした懸念を深刻…
この映画の主人公は、戦場カメラマンを夢見て不用意にシリアに迷い込んだデンマーク人の青年である。ISは活動拡大の初期段階で、数十名の西欧人を人質に取った。罪もない、力もない、冒険や名声を夢見て、あるいは理想主義に突き動かされて、紛争下のシリ…
おかしいですよね。ローカルの話をしているのに、その外に出ろ、外を受け入れろ、と言っているわけですから。地域のことを考えようとすると、その地域のことを内に内に考えていくイメージが湧きますが、本書は結果的にそうはならなかった。むしろそこから外…
学校現場での教師による研究の場合、「仮説」と「検証」の関係は、「スパイラル」にはなっていません。「仮説」から「検証」への一方向的なものになっています。 というのも、一つには、基本的に、当初立てた「仮説」が否定されることはありません。~中略~…
あのとき、僕は「昭和16年」の逆を行かなければいけないという思いを強くもっていました。客観的データを恣意的に解釈して、都合の良いデータに変質させるのではなく、客観性を維持しながら、各団体のさまざまな思惑を一つにまとめあげることに腐心しまし…
ここまで読みすすめたあなたは気づいただろうが、本書が示す将来はけっこう暗い。希望が持てるシナリオもいくらか示したつもりだが、絶望的な気分になった人も少なくないかもしれないので、最後にひとついっておこう。そこまで悲観する必要はない。なぜなら…
私たちが、このプロジェクトを通じて、考察したかったことは、学校とは「授業を提供する」だけでなく、暗に、子どもの生活リズムをつくりあげ、健康を支え、子ども同士の関係をつくり、家庭を支えているのだということにほかなりません。 「学びがとまったそ…
教科書に記されている歴史がなぜつまらないか。時間順に発生した出来事を羅列しているだけだからです。いくら年表を暗記しても、自分の人生とは重ならない。 ひとつひとつの出来事は、ただ単に偶然に起きているのではない。ひとりひとりの人生は、ただ単に偶…
主人公はこうしてナザレに戻って来る。退屈で凡庸な隣人たちの顔を毎日眺めながら、生きていくしかない。結局、世界のどこにいっても、パレスチナに真面目に関心を持っている人などいない。その癖、誰もがパレスチナ人と同じように、監視され、見えない抑圧…
自分が生まれ育った場所を棄て、はじかれたように外の世界へ向かう。そういう衝動が日本列島のあちらこちらで疼きはじめたのは従来と異なるライフスタイルの誕生、つまり都市における生活がはじまり出したからである。都市のなかでもとりわけ、東京は中央と…