田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

猪瀬直樹 著『ジミーの誕生日』より。これを読まずして小学6年生に日本国憲法や日本近代史を教えることなかれ。

謎があればこころ穏やかならず、である。手紙の主は美人かもしれないという期待よりも、なによりも謎とあればすぐにそのとりこになる僕の貪婪な探究慾がまたもや首をもたげた。(猪瀬直樹『ジミーの誕生日 アメリカが天皇明仁に刻んだ「死の暗号」』文藝春秋…

出口治明、上野千鶴子 著『あなたの会社、その働き方は幸せですか?』より。これは余生だと思うこと。働き方改革はそれからだ。

上野 介護業界で非常に尊敬している研修のプロがいます。彼女と話した時、兵法には「戦略、戦術、戦闘」の3つがあって、戦略の間違いを戦術で補うことはできず、戦術の間違いを戦闘で補うことはできない。ところが、介護現場は戦略の間違いと、戦術の限界を…

猪瀬直樹 著『作家の誕生』より。全体像を掴んでから細部に進む。作家評伝三部作(三島、川端&大宅、太宰)を読む前に、是非。

作家という職業はなぜ生まれたのか。最初の自分探しは学歴エリートよりはじまるが、時間つぶしの余裕をもつ若者は時代とともに増えていき、今日のフリーターの原型のようなかたちで「文学青年」と呼ばれた一群が簇生する。しかし、彼らは生き抜かなければな…

柳美里 著『JR上野駅公園口』より。ひとりも見捨てない。想像力の一助に。

死に場所を探して上野公園で何日か過ごすうちにくたびれ果てて、五年間もここに居着いてしまった。 冬場は辛い。 夜は寒くてよく眠れず、昼の間にコヤから出て猫のように日溜まりを追いかけてうたた寝する日々は、かつては家族の一員であったことを忘れそう…

猪瀬直樹 著『欲望のメディア』より。想像力のスイッチを入れるために、ミカド三部作を読む。

いまや高柳健次郎の抱いたSF的な夢は技術的な努力の延長のうえに克服されたし、正力松太郎がとり憑かれた大衆を虜にする見世物は企業的に成功した。すでに僕たちはその結果を享受している。(猪瀬直樹『欲望のメディア』小学館、2013) こんばんは。すでに…

映画『NETFLIX 世界征服の野望』(ショーン・コーセン監督作品)より。涙とミステイク積み重ね野に咲くNETFLIX。ただひとつだけ。

描かれるそんな恐ろしさとは別に、作品に登場する人々はとてもチャーミングで愛せる人たちだった。現CEOのリード・ヘイスティングスがどんどん洗練されて「業界の大物化」していくのに対して、インタビューに答える元NETFLIXのメンバーたちは一様…

猪瀬直樹 著『土地の神話』より。コロナ禍なのに、なぜ満員電車に乗って通勤しているのか。私たちの自画像に迫る。

ロンドンと東京、二つの大都市にそれぞれ田園都市が生まれ、歴史を刻みながら成長をつづけた。レッチワースの第一田園都市株式会社の実務家たちはハワードに冷淡だったが、そのプランを葬り去ることはできなかった。あらためて思想とは強靱なものだと思う。…

内田樹、岡田斗司夫FREEex 著『評価と贈与の経済学』より。愛情の欠如が子どもの未来を逞しくするケースもある。

内田 セックスアピールって歴史の関数だから、時代とともに揺れ動くんですよ。イケメンのほうが社会的上昇の確率が高いという時代もあったのかもしれない。でも、いまは違う。贈与経済の話のときに岡田さんが言ったとおり、これからの時代、一番頼りになる人…

猪瀬直樹 著『東京の副知事になってみたら』より。まず書籍を読む習慣を身につけてもらうこと。人生はそれからだ。

僕は作家として、作家だからできることを考えた。直感の力、記録し伝える力、という武器を駆使した。ビジネスマンなら、エンジニアなら、公務員なら、中小企業の経営者なら、スポーツマンなら、男でなく女だから、それぞれができることを提案し、提案するだ…

猪瀬直樹 著『ミカドの肖像』より。西武って、何だ。子どもの頃の「問い」を大切に。

天皇をミカドという言葉に置き換えてみると、さながら外国人のように日本及び日本人の特殊な生態をつかみとることができはしまいか。 ついでに、彼らの鏡に映じた天皇制の痕跡を丹念に蒐集したらどうか。 そう考えて、僕はヨーロッパを「巡遊」したのだった…

國分功一郎 著『はじめてのスピノザ』より。実験を重ねて、喜びをもたらす組み合わせを見つけること。それが自由へのエチカ。

私にとって善いものとは、私とうまく組み合わさって私の「活動能力を増大」させるものです。そのことを指してスピノザは、「より小なる完全性から、より大なる完全性へと移る」とも述べます。完全性という言葉もこのような意味で使い続けようというわけです。…

中原淳、鈴木大裕、他『FUTURE EDUCATION 学校をイノベーションする14の教育論』(教育新聞 編)より。未来の教育に酔う。

そもそもいまでも、学校から会社や組織に入ったときに、すごく「段差」がある。学校とリアルな社会では賢さの定義が違います。高校までは、教科書の範囲内で問題が与えられ、一人で解ければいい。これが学校での賢さです。でも、リアルな社会は違う。高度に…

苅谷剛彦 著『コロナ後の教育へ』より。不透明な時代だからこそ、現場からの帰納を。

このような演繹型思考で組み立てられた教育政策は、「現場に下ろす」ことが不可避となる。それゆえ、現場の理解が求められ、理解を進める「周知・徹底」が教育改革の重要な役割を担う。政策がうまくいかないのは、「周知・徹底」がうまくいかなかったからか…

妹尾昌俊 著『学校をおもしろくする思考法 卓越した企業の失敗と成功に学ぶ』より。マグロにはなりたくない。

しかし、これからの学校の働き方改革では、教育効果があるもの、子どものためになることのなかからも、一定の優先順位を付けて、選択していくことが必要となってくると思います。具体的には、採点・添削の効率化、行事準備や清掃指導の見直し・短縮、部活動…

是枝裕和、ケン・ローチ 著『家族と社会が壊れるとき』より。教育が壊れるとき。児童を見つめるカメラを。

何が言いたいかというと、映画祭も、放送局も、またいま問題になっている日本学術会議にしても、いわゆる「公共」的な場における表現の自由とか、放送の自由、学問の自由というのは、やはり権力からの自由だと思うのです。 権力の介入をさせずに、純粋に、忖…