田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

小林紀晴 著『ASIAN JAPANESE 3』より。「ワレ到着セズ」と「ワレ到着セリ」のあいだで。

旅は終わり、人は必ずどこかへ帰る。 帰る場所とはいったいどこだろうか。そのことについて彼と何度か話した。彼は以前言った。「生まれ育った福岡にずっと住んでいて一歩も出ることがなかったら、福岡を自分の故郷と思えないような気がする」 そして同じこ…

小林紀晴 著『ASIAN JAPANESE 2』より。旅と異性と人生と。また会いましょう。

かなり遅くなって僕らはその店を出て、サン・ミッシェルの方向へ歩き出した。「不思議だよね」 彼女が不意にそんな言葉を呟いた。「小林君と夜中のパリをこうして歩くなんて、不思議だよね」 確かに実に不思議な気が僕もする。八年ほど前の四月に同じ新聞社…

小林紀晴 著『ASIAN JAPANESE』より。日本にだって出会いはある。気が付かないだけ。

貧しい、遅れていると言われていた世界で実は、四角い空ばかり眺め、満員電車に乗っていた僕などより、幸せを感じている人間がいた。しかし、それはけっして幸せだけではない。悲惨さも、醜さも、卑怯さも、滑稽さも、生も、死も、あからさまだった。いいか…

宮台真司 著『これが答えだ!』&「マル激(第1003回)」より。普遍主義。情けは人のためならず。

次に、異物を排除する共同体的慣習を問題にしましょう。私の父は定年退職後、地元の大和市で、難民や移民の受け入れボランティアをやってきています。父が言うのですが、白人ではない外国人が住むというだけで治安上の不安に脅える市民が異様に多いのです。 …

ポール・タフ 著『私たちは子どもに何ができるのか』より。非認知能力は子供をとりまく環境の産物である。

生徒の標準テストの得点を、毎年確実に上げることのできる教師がいる。こうした教師は、現行のすべての評価システムにおいて最も高く評価され、最も高い報酬を受けている。しかしジャクソンは、生徒の非認知能力の代替尺度を確実に上げることのできる教師が…

江澤隆輔 著『教師の働き方を変える時短 5つの原則+40のアイデア』より。空気を読むな、本を読め。授業準備の時間を先に決める。

忙しすぎると、学校の「命」であるはずの授業のための準備が疎かになってしまいます。中学校では1日に1時間から2時間程度の「空き時間」があり、その時間に教材研究などをすべきものでした。しかし、現在は授業とは関係のない雑務に追われ、十分に準備が…

保坂展人 著『学校だけが人生じゃない』より。絶望した少年は退学という道を選び、教科書を閉じて人体実験の旅に。

そんな僕に必要なのは「学校」ではない。この世の中にはどういう人が生きていて、どんな仕事があって、どんな喜怒哀楽があって、世の中の苦さも温もりも知る「場」を僕は求めていた。そこでこそ自分を見つめ直すことができる。そう思った。あえて言えば、世…

吉本ばなな 著『うたかた/サンクチュアリ』より。本棚を想像力のサンクチュアリと見立てる。

「ええとね、体のどこかをちょっと切って血を流すと、すっきりするような気が、しない? それで、ためしてみたくてね。でもこわくてね。……子供の涙っていうのは、強いものね。いろんなことを思い出したわ。あなたがまだ小さくて、育てることに夢中だった若い…

神保哲生、宮台真司 著『反グローバリゼーションとポピュリズム 「トランプ化」する世界』&「マル激(第1002回)」より。つまり感情教育の問題!

彼がその講義で語ったのは、米国人も米国の学者も「人権とは何か」についてのんきに議論をしているが、いい加減にしてほしい、米国人は1965年まで黒人と女性を人間扱いしてこなかったではないか、ということでした。「人権とは何か」を長らく議論しても…

金原ひとみ 著『パリの砂漠、東京の蜃気楼』より。頑なな才能と生きづらさと。

何故自分が二度も赤ん坊を育てることができたのか、今となっては全くもって信じられないのだ。あの時の自分には何かが乗り移っていたようにしか思えない。二人目の子が五歳を超えた頃から、赤ん坊や赤ん坊を育てる人たちに壁を感じるようになった。子どもを…

東洋館出版社 編『ポスト・コロナショックの学校で教師が考えておきたいこと』より。学校現場に革新と余白を。

多くの先行研究がこれまで示唆してきた結論は「オンライン学習は、対面授業と比べて学習効果が高いか、ないしは同等」というのが定説だと思う。わたしがオンライン授業を一か月にわたり行ってきた経験からも、おそらく「オンライン授業の学習効果は対面授業…

吉本ばなな 著『キッチン』より。わらぐつの中にも、キッチンの中にも、男女を結び付ける神様がいる。

本当のいい思い出はいつも生きて光る。時間がたつごとに切なく息づく。 いくつもの昼と夜、私たちは共に食事をした。(吉本ばなな『キッチン』新潮文庫、2002) おはようございます。入口があって出口がある。恋に始まり、恋に終わる。蜂飼耳さんの『なまえ…

神保哲生、宮台真司 著『増税は誰のためか』より。未来のために、教育にお金を。

日本では、小中学生の「塾通い現象」が広がるのが1970年あたりで、75年頃から家計における教育費が増えてきます。この時期に進んだ「日本的学校化」のメカニズムは、どう考えても社会貢献的動機を欠いているんです。「学校化」とは、成績という一元的…

中村文則 著『R帝国』より。「幸福とは閉鎖である」 VS. 「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」

「あなたが今殺した人はとてもいい人だったのあなたのように虐げられている人達の味方で世界を不平等から変えようとしていた人なの。あなたは何をしてるのあなたは何をしてるのあなたの神がこんなことを命令すると思うの? 導師か誰かが命令したのでしょうで…

重松清 編著『教育とはなんだ』より。上げ膳据え膳の無言給食から、子どもたちはなにを学ぶのか。

小学何年生のときだったか、同級生の女子があやまって牛乳をこぼしてしまったら、担任の先生は「もったいない!」と言って、机の上に広がった牛乳をカップに集めて飲み直せと命じた。 そういう時代の給食から、ぼくたちはなにを学び、なにを学べなかったのか…