田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

松岡亮二 著『教育格差』より。学校は午前だけにして、午後はフォローすべき子の「違う扱い」を求む。

日本の義務教育制度には(特に他国と比較すると)高度に標準化された「平等化」機能があるし、学校現場でも個人間の差異が表面化しないよう「平等」を重視する傾向がある(苅谷2009)。ただ、ここでの「平等」は「同じ扱い」(equal treatment)を意味し、処…

中村文則 著『惑いの森』より。アリとキリギリス → アリとセミ → 片隅で。教材に、惑う。

やがてセミは力尽き、コンクリートの地面に落ちる。セミは狭い視界の中に、ぼんやりとアリの姿を捉える。セミの身体に電流のようなものが走る。恐怖だ。なぜこんな小さな相手に恐怖を感じるのか、セミにはわからない。これが恐怖なのかもわからない。理由は…

浅生鴨、幡野広志、田中泰延、他『雨は五分後にやんで』より。コロナがやんだら、蒼を取り戻そう。

苦しいときにおもい浮かべる息子の笑顔は創造ではなく、いつも再生だ。日常の生活のなかで笑っていた息子の記憶が、いまの出来事と関係なく再生される。いま一緒にいる時間で息子のかなしい顔を減らすことができれば、穏やかな死の間際にかなしい顔をした息…

本田由紀 著『教育は何を評価してきたのか』より。コロナ禍を奇貨として、教育の「中身」や「形」を変えよう。

なお、日本の教育の問題点として繰り返し指摘されてきた事柄として、「教育格差」がある。確かに、生まれ落ちた家庭の経済的・文化的・時間的・社会関係的な資源が多いか少ないかによって、子ども世代の教育達成に明確な差がついていることは、日本でも主に…

神保哲生、宮台真司 著『地震と原発 今からの危機』&「マル激(第999回)」より。これからも種を蒔き続けます。

コンビニエント(便利)な街やアメニティ(快適)溢れる街はどこにでもある。そこでは場所と人の関係が入替可能になる。結果としてそこは住む人にとって便利ではあっても幸福を欠いた実りのない場所になる。そうした事態を避けるための議論が少なすぎる。 人…

宮台真司、鈴木弘輝、堀内進之介 著『幸福論 〈共生〉の不可能と不可避について』より。願わくば、我に支点を与えたまえ。

中央の集権的権力による「多様なものの強制」は複数の場面で可能ですが、最も即効的なのは「一流」大学の入試問題を「田吾作詰め込み主義」から解き放つことです。入試内容につられる形で、高校の授業が、正答がない課題に傾斜するように、誘導するわけです…

ヤマザキマリ 著『仕事にしばられない生き方』より。思い込みの相対化 & おもしろがること。

私達にとっても、これまでのやり方が疑わしく思える今こそ「とりあえず、風呂!」という一手が、きっと有効に違いないと思うのです。 そうすると、決まって「何が風呂だ。こんな時に休んでいる場合か!」「もっと頑張らなきゃいけない時に、休んだりするから…

日垣隆 著『学校がアホらしいキミへ』より。好奇心よりも探究心を。

『大辞林』を引くと、《珍しい事・未知の事に対して抱く興味や関心》とある。いかにも小難しい定義だ。わかりやすく、本質を突いたこういう定義はどうか。《あちこちに顔を突っ込んでは、つまみ食いする性癖。転職を繰り返して年収を下げていってしまう人や…

池井戸潤 著『下町ロケット』より。フェイスシールドだって? トンデモない。要・理系思考。

幼い頃、佃の夢は宇宙飛行士になることだった。図書館で読んだアポロ計画の物語に、佃少年は、それまで読んだどんな本よりも興奮し、没頭した。それはそうだ、なにしろここに書かれている冒険は、空想ではなく、紛れもない真実なのだから。 一九六九年七月二…

神保哲生、宮台真司 著『格差社会という不幸』より。仕事でも消費でも自己実現しないけど、人生は楽しいぞ。

そうじゃないでしょう。仕事は食いぶち。楽しみは趣味活動。これでいいはずです。どうしてそこまでして「仕事での自己実現」を求めるのか。昔の地域社会があれば――沖縄はいまもそうですが――所得が低くても夕方六時以降は泡盛パーティで盛り上がるような生活…

妹尾昌俊 著『教師崩壊』より。生存者に告ぐ、ティーチャーズ・クライシスを回避せよ。

横浜市立小中学校への調査(N=521)によると、教師の1ヶ月当たりの読書冊数は、0冊が32.4%、1冊が33.6%、2冊が16.1%です。3冊以上は2割もいません。 この結果が多忙のせいかどうかの検証はできていませんが、とても熱心に学び続けて…

宮台真司、藤井誠二、内藤朝雄 著『学校が自由になる日』より。佐藤学さんの「学びの共同体」と、学校の新しい生活様式と。

藤井 先ほどの話にも出てきたんですが、「学びの共同体」ということを提唱しているのは教育学者の佐藤学さんです。これまで話し合われてきた共同体主義者の旗頭のような人だと思いますが、リベラリズムを論じていく上では、彼の主張は無視できないと思います…

宮田珠己 著『旅の理不尽』より。理不尽をエンジョ~イする力を学ぶ。

旅とは何か。 それは、とても深い問題である。あまりにも深く難しいため、旅は人生であるとか、試練であるとか、出会いとか、めぐり会いとか、メグ・ライアンとか、いろいろ言われているが、その真相は謎のままである。 さて、私は、名もない一介の素敵なサ…

岡崎玲子 著『レイコ@チョート校』より。人生いろいろ、教育もいろいろ、授業スタイルだっていろいろ。

しかし、なんといっても、数学の授業のスタイルが、今まで慣れてきたものと全く ので、戸惑った。宿題は、新しい章を読んで、問題を二十問ほど解くこと。数学の授業の前日、ずらりと並ぶ問題を目の前にして、私は、焦っていた。宿題は、授業で学んだページで…

宮台真司、永田夏来、かがりはるき 著『音楽が聴けなくなる日』より。音楽は自由にする。友達や仲間も、きっと自由にする。

もしかすると社会はそうなりかけているのかもしれない。この文章を書いている僕や、「なるほど」と思ってくれた貴方は、極く少数なのかもしれない。であればこそ、そうした少数者が連帯して、既に人間モドキだらけになった「社会という荒野」を生きねばなり…