田舎教師ときどき都会教師

テーマは「初等教育、読書、映画、旅行」

宮台真司 著『「消えた老人」はなぜ生まれるのか』より。家族がいれば、仲間がいれば、老人は消えなくなる。

しかも、こうした事件が起こる度に、日本では行政の不手際が指弾されるということになっているのですが、これもちょっと国際標準的にはあり得ないことですよね。 それよりも、近隣の超高齢者が不在であることに気がつかない、そういう隣人たちから成る社会、…

宮台真司 編『教育「真」論』より。問題は学力ではなく、「社会的なもの」にコミットメントする動機づけ。

学力低下は本当に小さな問題です。「学校的なもの」から脱却すれば、そりゃあ学力は低下するでしょう。それでも「社会的なもの」にコミットメントする動機づけが強ければ、あとからいくらでも学んで、必要な領域については簡単に追いつくことができるでしょ…

村田沙耶香 著『消滅世界』より。Beforeコロナの世界と Withコロナの世界の狭間で。逆アダムとイブ。

夫の今の恋人とは、私も何度か会ったことがある。ショートカットの小柄な女性で、さばさばと明るく夫に軽口を言うのが可笑しくて、三人でたくさん笑いながら食事をした。 少し辛辣なところもあるが賢くて、素敵な女性だった。私は彼女が好きだったし、二人は…

鳥山敏子 著『賢治の学校』より。慾ハナク 決シテ瞋ラズ イツモシヅカニワラッテヰル サウイフ親ニ ワタシハナリタイ。

本当の楽しさには、いつ死ぬかもしれない危険が伴うこともある。そういう楽しさを保証しないと、子どものからだの野生やエロスは育たない。それを賢治は十分に知っていたのだと思う。けがをしたり、最悪の場合は死んでしまうかもしれないことを賭けて生徒の…

映画『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』(細川徹 監督)& 鈴木光司 著『パパイズム』より。学校を削って家庭に還す。ええ加減に。

「家族サービス」という言葉がきらいである。 この言葉のウラには、せっかくの休日を家族とともに過ごすのはもったいない気がするという発想がある。しかし、いまだかつてボクは一度もそんなふうに考えたことがない。ボクにとっては、いつも妻と子と一緒にい…

東浩紀 著『哲学の誤配』より。学校に誤配を。そして人生にも。

これから、観光は哲学的にも重要な概念になっていくでしょう。そもそもひとが観光するというのは、とても興味深い現象です。さきほどもいいましたが、観光地に行くとき、みなすでにその場所について知っている。にもかかわらず訪れる。「富士山っていったい…

東浩紀 著『新対話篇』より。それはレールモントフです。サウイフモノニワタシハナリタイ。

沼野 同じイベントかはわからないのですが、渋谷の小劇場ジャン・ジャンに五木さんが登壇されたとき、満員になった会場入り口で、強引に入ろうとするお客さんを追い払っていたのが、当時まだ学生だったわたしでした。消防法の規制で、定員以上入れてはいけな…

國分功一郎 著『哲学の先生と人生の話をしよう』より。コロナ時代の哲学対話、その作法は如何に。

シルバーハンマーさんが知識と考える力を身につけたいと思ったなら、ただそれをやればいい。しかし、それらを身につけたら自分の人生は大丈夫だと思っては大変な誤りを犯すことになります。「リア充な写真」をFacebookにアップしまくっている人間が、社会に…

西加奈子 著『i』より。みんな同じ → みんな違う → 考える → アイデンティティの確立。

日本では「みんな同じ」だった。 肩につく髪は結ぶこと、髪は染めないこと、スカートの長さはひざ下3センチであること、靴下は学校のエンブレムがついた白であること、靴は黒のローファーであること、バッグは学校指定の黒い革のものであること。 すべてを…

星野道夫 著『旅をする木』より。幸福とはどういうものか。よく生きるとは。

町から離れた場末の港には人影もまばらで、夕暮れが迫ってきた。知り合いも、今夜泊まる場所もなく、何ひとつ予定を立てなかったぼくは、これから北へ行こうと南へ行こうと、サイコロを振るように今決めればよかった。今夜どこにも帰る必要がない、そして誰…

諸富祥彦 編著『〈宮台真司〉をぶっとばせ! ”終わらない日常” 批判』より。コロナと共に、終わりなき日常を生きろ。

本書は宮台真司を批判する(ぶっ飛ばす!)本である。そして、私に与えられた課題は、彼の教育論を批判することである。しかし、何を隠そう、私は彼の教育論に結構共感してしまっている。(諸富祥彦 編著『〈宮台真司〉をぶっとばせ! ”終わらない日常” 批判…

三浦しをん 著『風が強く吹いている』より。親を喜ばせたいやつばかり、ってわけでもないんだよ。

「私自身、報われなかったのはがんばらなかったからだという考え方に納得がいかないからです。才能や実力のない人に到底たどりつけない目標を与えてがんばらせるのは、人間を不幸にすると思う。できる、できないという基準ではない価値を築けるかどうかを、…

宮台真司 著『社会という荒野を生きる。』より。コロナ禍という荒野を生きる。憲法の話と家族の話。

実際、奥平先生の憲法学がとりわけ強調するのが「憲法とは何か」なのです。共著の『憲法対論』でも「憲法とは何か」を分厚く語っていただきました。日本では「非常識な人」が多いので、「法律の一番偉いのが憲法だ」などと思っていますが、ありえません。 法…

伊坂幸太郎 著『逆ソクラテス』より。教え子との再会は教師冥利に尽きるという話。

僕が思い出したのは、父が前に、「お父さんたちも試行錯誤なんだよな」と言った時のことだ。「子育ては初めてだし、何が正解なのかいつも分からないから、ほんと難しいよ。ただ少なくともお父さんは、自分が親に言われたり、やられたりして嫌だったことはや…

東浩紀、宮台真司 著『父として考える』より。with コロナの時代に「親として考える」こと。

こうした「遊びからの学び」と、「お話を聞くときは手をおひざ」とか「犬と猫はどちらが大きいですか」みたいな教育と、どちらが子どもの将来の幸せにとって有効なのかは、言うまでもありません。何度も言うけど、自分の頭が悪くても、頭が良い子と友だちに…