外科医のメスは、身体中をくまなく巡り身体から嗅覚という機能を切り出すためには、結局、身体全体を取り出してくるしかないことに気づかされることになる。つまり、この思考実験で明らかにされることは、部分とは、部分という名の幻想であることに他ならな…
もっとも好奇心を磨くのなら、旅行に行く場所も厳選しなければならない。 私は家族旅行では、変化率の高い街にしか行かなかった。(中略) 娘が大きくなってから、「ウチの親は先進国に連れていってくれたことはないんです。話のネタづくりのために、小さい…
レバレッジ(leverage)とは、聞き慣れない言葉かもしれませんが、英語で「てこ」の働きのことを指しています。かつて理科の時間に習った「てこの原理」のてこです。「てこ」を使うと、少しの力を加えただけなのに、重いものを軽々と持ち上げることができま…
彼らは帰国の時には少し都会風に粋になって、草紙や細工物、流行の刷り絵や簪をお土産にして帰って行きました。また翌年には次の若者たちが出てきます。これが二百四十年続いたのです。世間を知り見聞をひろめて視野を広くするその効果たるや、修学旅行の比…
ところが、眠り込んじゃった。工事用のローラーで敷きつぶされたみたいに、べったりと眠ってしまったんだ。おまけに、夢の見つづけで、夢の中では一睡も出来なかったから、さっきまで寝つづけてしまったのに、まだ睡眠不足なのさ。(安部公房『箱男』新潮文…
私がアップルに入社していちばん驚いたこと、それはいろいろな意味で突出した人材の多さでした。まず頭のいい人の数。「人生の中でこんなに頭のいいヤツには会ったことがない」と思わせてくれる人々にしばしば遭遇します。特にどうってことのないポジション…
総じてギリシャ人の間においてはホメロス時代以来飲み食いは単に肉体の栄養であるだけでなく、同時に精神の糧でもあるという考えが行なわれていた。したがって食卓で討論が行われるようなことがあっても、それは決して不思議ではなかったのである。(プラト…
だから僕は。 何の保証もないことを、言おうと思った。「きっとここは」 真っ白い世界に、最初の一行目を書き込む。 何を書いてもいい世界で、僕は。 何を書くかを、自分で決めた。「まだ誰も知らない、新しい世界なんです」(野﨑まど『HELLO WORLD』集英社…
社会保障は、労働市場の質を保つために必要なんです。考えてみれば当たり前のことです。別に福祉国家は資本主義に対抗するために生まれてきたものではない。社会福祉政策はもともとドイツのビスマルクが導入したもので、資本主義を上手く生き延びていくため…
ただ、ここはカンボジアである。乞食には乞食の、地雷障害者には地雷障害者の生き方というものがある。おのおのが地雷を踏んだ運命をうけいれて自分なりの方法で生きている。 日本でいわれている乞食だとか地雷障害者のイメージとは程遠いけれど、彼らを非難…
足を開いた女優に、男優が真珠のネックレスを手に近づいていく。その設定の意味がもうわからないが、やがて男優は女性の首にそれをかけるのではなく、女性の大切な部分にその真珠のネックレスを入れていくのである。何でそんなものを入れるのか当時はわから…
「真に理性的な社会では、我々の中で最も優秀な者が教師になり、それ以外の者は他の仕事で我慢せざるを得ないであろう」。そう言ったのはアメリカの伝説的経営者、リー・アイアコッカ(Lee Iacocca)だ。教育関係者に限らず、この言葉に頷く人は少なくないだ…
クラブブームだった90年代前半、学生らを連れていくと、すぐ踊れる学生と踊れない学生が分かれた。連れていく前から、誰が踊れ、誰が踊れないか、見当がついた。 ゼミで優秀な発言をする学生こそ「踊れる身体」を持っていてほしいと私は望んだ。期待を抱か…
龍平 そうなのです。知らない、知識がないということが差別を生むことは少なくありません。理解しようとすることが大事なのです。ぼくは実際に大学で教えるようになって、ますます教育の必要性を感じました。今の大学生は薬害エイズのことも知りません。19…
そのころ農家を回って聞いた話はショッキングだった。アメリカでは既に禁止されていた農薬を使い続けて意識障害を発病した農家の人の話、自家消費の野菜には絶対に農薬は使わない、という彼らの告白。気づいたのは、「知らないから何でもできてしまう」とい…